日本名Sareee、アメリカ名「太陽の戦士」サレイ(26歳)が、WWEを円満退団し日本マットに復帰することが明らかになった。
5月16日の新宿FACE大会で日本復帰戦を行うという。
(⇒ 日刊スポーツ 2023年3月9日記事:【WWE】Sareeeが円満退団し日本マット復帰、13日に会見 21年から参戦) さて、これまで鳴り物入り(と言ってもいいだろう)で日本からWWEへ行った選手を我々は何人も見てきたわけだが――
多くの人は、「やはりWWEは厳しい」とつくづく思っているのではないだろうか。
あのKENTAやKUSHIDAクラスでさえ、WWEで大活躍・長期活躍したとは言い難いまま契約を終えた。
(そういえば、鈴木秀樹すら短期間でコーチを“クビ”になった。) そう考えると、やはり中邑真輔やASUKAは別格的にスゴい選手だということになろうか。
今回のSareeeもまた、大活躍・長期活躍したとは言い難い形で契約終了となった。
もっともこれは「WWE出戻り」の選手がダメだというのではなく、いわゆる「水が合わなかった」ということなのだろうと思う。
昔は前田日明がメキシコ遠征を提示されて(心の中で)猛反発したことがあったようだが――
そりゃ前田日明がメキシコにいて「新・格闘王」の称号を得られたかとなれば、そんなわけないと誰もが思うだろう。
ただ、今回のSareeeの場合は、「水が合わなかった」理由が私には思い当たる気がする。
もちろん的外れかもしれないと薄々は思ってもいるが、一応は言ってみる。
それはSareeeが、あまりにも少女少女し過ぎた容姿で、肉感的でないからではないか、というものだ。
別にWWEに限った話ではないが、アメリカの女子プロレスラーはおしなべて肉感的である。
もう、体のラインがスゴいのである。
そこへ行くと(ASUKAとは異なり)Sareeeは、まるきり「少女」そのものだとあなたは思われないだろうか。 たぶんSareeeが(サレイが)、日本人にとってはあまりに唐突でヒドいキャラ設定ではないかと思われる「女子高生キャラ」を課せられたのは、
アメリカ人にとっても「これを大人の女性に伍して競わせるのは無理がある」と思われたからではないか。
だから女子高生、というのも安直と言えば安直だが、そう考える気持ちはわかる気がする。 だったら初めからスカウトするなよ、とも思われるのだが……
なんとなくWWEもこれを教訓に、これからは日本の女子プロレスラーをスカウトする際も「高身長」「体のボリューム」を条件にしてくるのではないかと思われる。
要するにアメリカ人プロレスファンには(というか、世界のだいたいのプロレスファンには)、あんまり少女少女した女子プロレスラーはウケないのではなかろうか。
そういう女子レスラーを好むのは(活躍させるのは)、日本のプロレス独自の――いや、日本人自体の特性なのではないか。
これはなかなか比較文化論的に深い話になりそうなのだが、このへんで止めておく。
しかしともあれ、Sareeeには「水の合う」日本で再び活躍してほしいものだ。
しかし彼女もまた、スターダムへ行ってしまうのであろうか……
3月2日、NOAHの原田大輔(36歳)が、3月9日後楽園ホール大会で引退することを発表した。
昨年8月のNOAH定期検査で首の負傷が見つかり、その後は色んな治療を試してみたが快方に向かわず、医療チームの判断もあり引退を決意したとのこと。
そして引退試合は「1分間」、相手は長年の盟友・小峠篤司と行うこととなった。
(⇒ スポーツ報知 2023年3月2日:プロレスリング・ノア原田大輔、首のケガで現役引退…3・9後楽園で小峠篤司と1分間の「引退試合」) これは、極めて残念な知らせである。
原田大輔は、“桃の青春タッグ”小峠篤司と共に大阪プロレスからNOAHに移籍して以来、NOAHジュニアの柱石とも言える位置にあったと思う。
ドン底時代のNOAHを支えた一人であったことは、誰も異論がないと思う。
それがまだ36歳で引退を余儀なくされるのだから、本人の無念はいかばかりだろうか。
ただしかし、これはプロレス界にとって一種の朗報かもしれないとも思う。
なにせ「定期検査」である。「医療チーム」である。
我々は今までプロレスラーの引退理由において、こんな言葉を聞くことはほとんどなかったのではないか。
いや、今だってフリーやインディーのプロレスラーの全員に定期検査をして医療チームが付いたなら、引退せざるを得ないプロレスラーはたくさんいるのではないか。 言うまでもなくNOAHは、その創設者である三沢光晴が、2009年に試合中の事故で頚髄離断で死去するという悲劇を体験している。
そして今回、図らずも原田大輔の引退決意により、その対応・防止策は機能していることがファンにもはっきり明らかになった。
もしNOAHに定期検査も医療チームもなければ、我々はまた、一人のレスラーが試合中に事故死するという悲報を聞かなければならなかったのかもしれないのだ。
そう思うと、今回の引退は残念ではあるが朗報でもあると言わざるを得ない。
少なくともNOAHでは、悲劇の防止に取り組んでいることがハッキリとした。
たぶん同一グループ団体のDDTでもそうだろうし、業界最大手の新日本でもそうだろう。
ただ、それ以外の団体やフリー選手はどうなのだろうか。
一般人の普通の年1回の健康診断でさえ、すっぽかす人は大勢いる。
ましてや骨や首などの検診なんて、やってないプロレスラーはゴマンといそうである。 他人のこと、ましてや生活のかかっている人に口を出すつもりはないが……
せめて何らかの団体に属しているレスラーについては、団体の方針として必ず定期的に検診を受けさせるようにはしてほしいものだ。
2月21日の武藤敬司引退大会では、一つ注目されていた対戦があった。
それが新日本の現・IWGP世界ヘビー級王者オカダ・カズチカ(35歳)と、NOAHの現・GHCヘビー級王者清宮海斗(26歳)のシングルマッチである。
清宮のオカダへの「顔面蹴撃」から始まり、
両者のシングルマッチ決定、
しかしオカダからの長期にわたる対戦拒否宣言、
それからのオカダの乱入による清宮のKO、
大会直前になっての「時間無制限一本勝負」への変更――
と、その煽り方は実に念入りと言っていいものだった。
しかし蓋を開けて対戦してみれば、試合時間は15分32秒でオカダの勝利。
それも各報道では「オカダ完勝」「清宮惨敗」などと報じられることとなった。 いや、それはもう、多くのファンには勝敗はわかっていたのである。
熱烈な清宮ファンでさえ、清宮がオカダに勝てるとは9割がた思ってはいなかったろう。
だが、仮にも清宮はNOAH最強の王者なのだ。
確かにオカダを「追い込んだ」シーンはあったようだが、どれほど「格」が隔絶した選手同士の対戦であってもプロレスではそんなシーンは必ずあるもので、それが全然ないのは稀である。
だからこれは、清宮の弁護にはなりそうもない。
清宮がオカダに勝てないのは仕方ないにしても――それはいろんな意味で当然だとしても――、もうちょっと何とかならないのか、とは多くの人が感じるだろう。
しかし、それにつけても思うのであるが……
清宮海斗という選手、26歳にしてつくづくアップダウンの激しすぎる選手である。 そもそも彼がGHCヘビー級王者になったのは、26歳にしてこれが2度目だ。
オカダもかすんでしまうかのような超新星として1度目に王座戴冠、
それが陥落した後はかなり長い間「鳴かず飛ばず」、
そして2度目に戴冠したかと思えば今回の惨敗。
長い日本のプロレス史の中でも、これは稀に見る激しい落差の連続ではあるまいか。
なんだか彼のことを
「乱気流王者」という、褒めているのか揶揄しているのかわからない呼び方でイメージしてしまうのは、私だけだろうか。
私はかつて、NOAHの重要課題の一つは「谷口周平(マイバッハ谷口)のいろんな意味での育成・扱い」だと思っていたことがある。
しかし今は断然、清宮海斗のそれである。 いったい清宮海斗は、これからもこういう乱気流レスラー人生を歩んでいくのだろうか。
2月21日、東京ドームにおいて武藤敬司引退大会が開催された。
メインイベントは、武藤敬司vs内藤哲也。
その結末は、内藤哲也のデスティーノによる勝利であった。
もちろんこの結果は、大方のプロレスファンにとっては想定内のことである。
いくら何でも、あれほど両脚のハムストリングを肉離れしたと言い続けて完治もしていない武藤に、内藤が負けることはほとんど考えられなかった。
しかし試合内容はと言えば、特に武藤は「故・橋本真也の袈裟切りチョップ」「故・三沢光晴のエメラルドフロウジョン」「蝶野正洋のSTF」を次々と繰り出し、
まるで闘魂三銃士や全日本四天王の活躍した90年代プロレスの満漢全席を見せるか、というようなサービス精神横溢のものであった。
(さすがに、ムーンサルトプレスだけはやれなかった。)
そして内藤哲也にとって武藤は、直接の師弟関係ではないが精神的師匠のようなものと言われる。
その彼が武藤へ「掟破り」のシャイニングウィザードや四の字固めを仕掛けるのは――確かに引退試合でのお約束のようなものではあるが――、やはり感慨深いものがある。
しかし、誰もがビックリしたのは試合後、武藤が(いつものように解説席に座っていた)蝶野正洋をリング上へ呼び出し、
突然に蝶野との「第2引退試合」が始まったことである。
現代では「ダブルメインイベント」というのはよくあるが、「ダブル引退試合」というのは初めてのことかもしれない。
いや、しかし、蝶野正洋は武藤敬司を上回るほど脚が悪くて、試合など当然できない――
正式引退こそしていないが「自然引退」状態にある、復帰の可能性はない、と誰もが感じていたはずだ。
それがリングの上に上がると(普段は杖で歩いているのがウソのように)シャイニングケンカキックまで繰り出せてしまうのだから、リングの魔力というのは本当にあるのかもしれないと思ってしまう。
むろん、この蝶野戦が俗にいう「エキシビションマッチ」だというのは、みんなわかっていることだが……
それでもこれは、ビッグサプライズでありビッグサービスである。
いかに武藤が(そして大会関係者らが)ファンを失望させたくない、喜ばせたいと思っていたかが、この演出からは十分に伝わってくる。
やはり武藤敬司、体はズタボロでも「プロ中のプロレスラー」である。
武藤は生前ただの一度もアントニオ猪木に褒められたことがなく、つい数年前のプロレスリング・マスターズに呼んだときさえもまだ怒られた、と言っている。
しかし武藤のこういうサービス精神、あるいは客を驚かせようとするサプライズ精神は、確かにアントニオ猪木に通じるところがあると思わずにいられない。 武藤敬司がアントニオ猪木の正当後継者だ、と言われたことはたぶんないと思うのだが――
しかし藤田和之や橋本真也よりは、はるかに直系的な後継者だと思えていたのは私だけだろうか。 その武藤も、引退した。
これを古舘伊知郎は「昭和プロレスの終焉」と呼んだが、私としてはそれは言い過ぎで――むしろ武藤は平成プロレスの人間で――、もっと狭く「90年代プロレスの終焉」ではないかと思う。
もっともそう言ってしまっては、大仁田厚が怒るかもしれない。
しかし武藤がアントニオ猪木の後継者だという見立てが正しいとすれば、引退後の武藤は引退後の猪木のごとく、プロレス界にさんざん介入してくることになるのだろうか(笑) 確かになんだか武藤敬司、まだ60歳でもあることだし、プロレスへの関心も「山っ気」も全然薄まってはいないようだ。
武藤の引退後の動向こそ気になるのは、私だけだろうか……
2月19日、米カリフォルニア州の新日本サンノゼ大会において――
元WWEのメルセデス・モネ(旧名サーシャ・バンクス)が王者KAIRIを破りIWGP女子王座を獲得、2代目王者となった。
(⇒ 2023年2月19日記事:【新日本】IWGP女子王者KAIRI、米国でメルセデス・モネに敗れ2度目の防衛に失敗) この結果自体は、大方のプロレスファンが予想していたことである。
なんたってメルセデス・モネ、天下の元サーシャ・バンクス。
彼女を参戦させた(獲得した)以上、王者にならないなんてことはないはずなのだ。
しかしそれはそれとして、ビックリなのが入場であった。
なんと
メルセデス・モネ、あの故・木村花ソックリの完コピとも言えるコスチューム(そしてガスマスク)で入場し、試合したのだ。
彼女が日本の女子プロレスを熱心に研究・視聴していることは報じられていたが、
そして日本のファン向けを意識したこともあろうが、
これはやはり感動というかエモーショナルなことである。
とはいえ不謹慎かもしれないが、私にはあの
旧姓・広田さくらのよくやる木村花コスの姿が、オーバーラップせずにいられなかったのであるが……(笑)
しかし真面目な話、WWE女子のトップであった彼女が(彼女だけではない)日本の女子プロレスを熱心に研究しリスペクトしているというのは、日本のプロレスファンにとって何とも心強い話である。
昔に比べれば規模がずっと縮小低落したと言わざるを得ない日本の女子プロレスではあっても、まだ世界トップクラスにリスペクトされるクオリティがある――
もしかするとプロレスに限った話ではなく、日本の女子プロレスはもはや数少なくなった「世界に誇れる」日本製品の一つなのかもしれない。
と、そこで気になるのであるが……
では日本の女子プロレスラーで海外の女子プロレスを熱心に研究・視聴している人って、そんなに多くいるのだろうか。
そんな人は滅多にいないような気がするのは、単なるイメージであろうか。 おせっかいな話ではあるが、そして「自分の仕事以外のプロレスは見る気がしない」というスタンスを否定するものでもないが……
やっぱりプロレスラーである以上、視野を広げて海外のプロレスも参考にし、勉強してみるのがいいのではないかと思うのだ。
特に女子プロレスラーの中には、すっかり観客3桁どまり(ことによると2桁どまり)の「小規模会場」慣れしている人が多いのではなかろうか。
日本の女子プロレスのレベルは世界一かもしれないが、しかし数十年前は日本の経済や産業自体がそう言われていたのである。
これを思うと、海外女子レスラーから学ぶものは何もない、そんなヒマも意欲もない、ということでは、そういつまでも世界一のレベルは維持できないと思うのだが……