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『巌流島』検証大会 雑感④ 「異種格闘技戦」の復活

 よって当然ながら、巌流島の運営サイドはそういう「面白さ」を重視している。その決意はかなり固いように見える。
 日本での総合格闘技(PRIDE)復活を願う格闘技ファンの期待を裏切る/失望させるのは承知の上で、あえて「立ち技限定・押し出し有」の根幹ルールを提示した。
 さらにその上、「異種格闘技戦」を前面に打ち出してもいる。

 異種格闘技戦――それは総合格闘技ファンにとって過去の遺物である。総合の確立によって存在意義を失ったはずのものである。
 しかしアントニオ猪木の行ったそれがあまりにもインパクトを残したおかげで、またネーミングの良さによって、この言葉は結構日常に浸透している。格闘技と全然関係ないテレビ番組でもよく使われる。
 それもあって「異種格闘技戦」という言葉には、いまだ大衆の目を引く効果がある。見てみようかとの好奇心を誘発させる。

 純粋な総合格闘技ファンがいかにそんなのは邪道で意味がないと力説しても、普通の人は違うもの同士の対決にこそ興味を覚える。

 なるほどライオン対ライオンは動物界の頂上決戦かもしれない。
 同じ装備で同じ体の同じ種が闘うからこそ勝敗を競うのに意味があり、違う種が闘い合っても(特に、技術的には)得られるものは何もない、というのは正論ではあろう。

 しかし有り体に言えば、ライオン対ライオンは似た者同士の闘いであり、観客にとってはどちらが勝とうとたいした違いは感じられない。どちらかのライオンに思い入れがある、というのは極めて稀なことであり、そもそも普通はどっちがどっちだかの区別さえ付かない。
 「ライオン闘技」が初めから好きだという人を除き、極論すればノンケの客にはどちらが勝とうとどうでもいい。つまり初めから見ようとしない。

 ライオン対トラはそれよりはマシで、少なくともどっちがどっちだかはわかる。しかしやはり似た者同士である。

 だがこれが「ライオン対ワニ」だとどうだろう。これは上記2カードよりはるかに興味をそそるはずだ。そのことはyoutubeなどで動画をアップし、閲覧数を競わせてみればすぐに実証されると思う。
 「真の格闘技」の観点からすれば、その闘いに本質的に見るべきものはないかもしれない。見世物以上の価値はないかもしれない。
 しかしそれでも、やはり見てみたいと思う。どんな闘いになるか好奇心を刺激される。
 こういう対決ものに興味がない人は、ライオン対ライオンを見ようとは思わないだろう。しかしライオン対ワニならば、見ようと思う可能性がずっと高まる。

 考えてみればPRIDEでも、選手入場時には必ず氏名とともに彼の出身格闘技名がテロップで出ていた。
 実況アナも「さあ、次も似たり寄ったりの選手の激突です!」とは言わない。むしろ可能な限り両者の「違い」を強調しようとする。(ストライカーだとかグラップラーだとか)
 それはファンの方だって同じだろうし、そういう見方をしようと努めていると言っていいほどではないだろうか?

 『巌流島』がこういう意味での面白さを追求しようとしているのは、選手の選定を見てもわかる。
 「ケンカもしたことがない心優しい」元アメフト選手を出場させる(してもらう)など、真面目な格闘技ファンなら「ふざけんな」と怒るところだろう。もうそれだけで「真面目な格闘技でない、客寄せイベント」と思ってしまうところだろう。

 おそらく運営サイドには、第1回UFCで出てきたあの伝説的な「片手は素手で片手はグローブをはめた」選手の故事が脳裏にあったものと思う。
 アメリカン忍者なんかが出ていた、あの初期UFCの雰囲気の再現を明らかに狙っていたと思う。

 正直に言うが、それは私の好みに合う。総合格闘家同士、K-1戦士同士の似た者対決よりも、私はずっとその方が見たい。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

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ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙 表紙:『もうすぐ無人島になる瀬戸内の島へ』 ブログ販売欄掲載用

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