Entries

現代の行政は、室町末期の足利幕府なのか

 つい最近には、こんな報道もあった。

 全体を見なければ理解できない記事であろうから、やむを得ず全文を引用する。


(引用開始)****************************
 
共益費未納、団地で送電停止寸前 京都・久御山、自治会対立 (京都新聞 2015年6月29日)


 京都府久御山町の府営東佐山団地(209戸)で、自治会の運営をめぐり対立が続いている。

 6月初旬、一部住民の共益費の未払いを理由に、自治会が送電停止の寸前まで共用部分の電気料金を滞納していた。

 21日に開かれた自治会の臨時集会では、府が未払いの住民と自治会の話し合いを求めたが、折り合いが付かなかった。

■京都府が警告も折り合いつかず

 共益費は各戸月千円で、自治会が徴収している。未払いの住民は4戸で、1戸当たり月500円のみを支払っている。

 未払いのきっかけは、13年の自治会長が月10万円の報酬を得たことから。

 500円だった自治会費が同時期に1500円になり、翌年は自治会費500円、共益費千円になった。

 いずれも自治会の総会で決まったが、一部住民が運営に疑問を感じたという。

 自治会は今年4月、4戸が暮らす3棟(160戸)で共用部分の電気料金の滞納を決めた。

 5月末「まじめに納めている人が他人の共益費を払っている。不公平をなくすため、4月分から電気料金を滞納している」とした通知を全戸に配布し、停電に理解を求めた。

 共用部分には各戸への給水ポンプも含まれ、府は「入居者の生活に大きな支障が生じる」と双方に支払いを要請。

 6月2日、自治会に対し、山田啓二知事名の異例の警告文を出した。

 関西電力は契約者の自治会に送電停止を通知したが、自治会が5日午前中に4月分の電気料金を支払い、停電は回避された。

 その後、府の仲介で4戸は滞納分のうち4~6月分の共益費を払い、自治会も5月分の電気料金を払った。

 21日の住民集会で府住宅課の篁雄巳府営住宅管理担当課長は「4戸に圧力をかけるため、160戸のライフラインを止めるという間違った方法はやめてください」と双方に解決に向けた話し合いを要請。

 未払いの住民は「自治会の通帳を見て納得すれば払う」と話したが、自治会側は「話し合いの間も肩代わりは続く。総会で決まったことを議論しても解決しない」と主張した。

 自治会側は府に対し、共益費の徴収方法の変更を要望。集会は住民がもみあい紛糾した。

 公営住宅法には共益費について規定がなく、府は徴収していない。

 自治体が徴収する例は京都市などで一部あるが、府は「低廉な家賃の公営住宅には自治会による徴収が合理的」とする。

 徴収方法の変更は条例整備が必要という。府は引き続き、4戸に共益費の支払いを求めていくという。

 今回の事態について自治会長は「ここまでしないと、共益費問題について皆さんに分かってもらえなかった。入居させたのは府なので、共益費の徴収も府が責任を持ってほしい」と訴える。

 コミュニティーづくりに詳しい帝塚山大名誉教授の中川幾郎さんは「権利や義務の意識が強くなり、全国で自治会トラブルは頻発している」と指摘。「自治会は昔でいう里山と里川。みんなで一緒に維持していくという姿勢が必要だ」と話している。


(引用終わり)****************************


 「入居させたのは府なので、共益費の徴収も府が責任を持ってほしい」――

 何でもかんでも行政が責任を持つべきだ、という現代日本人の「正当」思考テンプレートを、如実に表す訴えである。

 何でも最後は行政の責任なのであり、悪いのは/問題があるのはいつも行政なのだ。



 公営住宅の共益費の徴収とは、最も身近な住民自治の一種だと思うが、それでも住民自身が公権力の介入を求める。

 しかしそれは行政が「上」だから下々に裁きを下してください、と言っているわけではなく、端的に言えばお墨付きが欲しいのだ。

 行政を自分の味方に付け、わが方が有利になりたいのである。

 今の日本では、行政機関と公務員は人民から間違いなく反感を買っている。能力が低いとも思われている。

(これも、そういう思考テンプレートなのだと言ってよい。)


 その一方、行政を味方に付けたい/行政のお墨付きを得たいという人民の意識もまた根強い。

(高尾山古墳を壊して道路を付けろ、という住民らもそうだろう。)


 これは何だか、室町末期の足利幕府にも似たところがある。

 つまり幕府を心から尊重しているわけでもないが、その御内書(ごないしょ。征夷大将軍の命令書)や守護職はいただきたいのである。

 それを利用して正当性を得、敵より優位に立ちたいのである。


 逆に言えばこれだけ行政・公務員というものが侮蔑され反感を持たれていても、その程度の「権威」は残っているということになろう。


※*****************

 なお、蛇足ではあるが、私は公営住宅って全部民間に売却・委託すべきだと思う。

 いったい何で公務員が、賃貸住宅の運営管理をしなくてはならないのか?

 次に民営化を目指す領域とは、まさにこれである。

※*******************


 新聞記者やテレビのコメンテーターらが、いつも国や自治体に問題があると「指摘」したり、それを前提で話したり、結論をそれに持っていくのも無理はない。

 それが全国民共通の思考テンプレートだからであり、国民の需要に応えるものだから――ウケがよく、無難だからである。

 「住民・国民に問題がある」などと言おうものなら、それは現代の大逆罪に該当する。ボコボコに叩かれるのはわかりきっている。


 たぶん現代の行政の役割を一言で言えば、「人民同士のクッションあるいはサンドバッグ」が適当なのだろう。

 行政機関(特に市区町村役場)がそういうものであることを人民は望んでいるし、あるべき姿だとも思っている。

 その根底にあるのは、人民同士の直接対決を恐れ忌避する心である、と私は思う。

 だから「住民同士の討論会」は開かれず、ほとんど全部が「行政から住民への説明会」なのだろう。

 私はそういう会に出席してみたことはないが、行かずともそれが実質的に「行政を吊し上げる会」になっているとは想像する。

このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://tairanaritoshi.blog.fc2.com/tb.php/87-0997bc72

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

FC2ランキング

FC2オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

FC2アクセスカウンター

日本ブログ村・人気ブログランキング アクセスランキング

ツイッターウィジェット

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR