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日本的民主主義、すなわち封建民主制?

(引用開始)****************************

古墳取り壊し道路建設へ 調査費計上、静岡・沼津 (共同通信 2015年6月30日)

 静岡県沼津市議会で30日、古墳時代初期としては東日本最大級の前方後方墳「高尾山古墳」の発掘調査費を盛り込んだ2015年度補正予算が賛成多数で可決、成立した。

 市は古墳取り壊しを伴う調査を16年度までに終え、近くを走る国道の渋滞を解消するため、跡地に市道を建設する方針。

 古墳撤去には考古学界などから反対する声が上がっている。市によると、栗原裕康市長は予算成立後「文化庁など関係機関や有識者と協議した上で、古墳の扱いを判断する」と話した。

 発掘を始める時期も未定とした。

 採決に当たり、共産党や無所属の議員が「道路との両立を考えるべきだ」と反対の立場で討論した。

(引用終わり)****************************


 この記事は、かなり無色透明である。

 しかし、たいていの社会問題について記事が書かれるとき――

 「有識者」のコメントが掲載されるとき、ほとんど必ず最後は「国か自治体が悪い/問題がある」との意見で締めくくられる。

 高尾山古墳の問題など、古墳を壊して道路を作れと言っているのは周辺住民であることが明らかなのに、

 それでも悪く問題があるのは行政体としての沼津市とされ、周辺住民が非難の対象とされることはない。


 それはなぜかと問うならば、現代日本の民主主義においては、住民・国民は常に悪くないからである。

 それらを悪いとするのはタブーであり悪であり、反道徳的なことと見なされているからである。


 昔の人はこういうとき――本当に「悪い」のは誰かわかっていてもそれを攻撃できないとき、

 「君側の奸」 (くんそくのかん。君主・主君の周りにいる悪い奴)

 という言葉を使った。

 忠誠の対象である君主・主君は常に悪くないのであり、彼を非難するわけにはいかない。

 それは体制への叛逆であり悪である。

 よって、その取り巻きたちを「悪い奴」認定して攻撃する。



 現代の日本人は、その全員が民主主義者を自認する。民主主義を正しいものだと思っている。

 そして現代日本の君主・主君は人民(国民、庶民)であり、その取り巻きとは首長・市町村役場・議員などの「行政」を指す。

 だからどんな場合でも前者は攻撃されず、いつも後者が攻撃される。


 もう一つ付け加えて言うならば、もちろん前者は後者よりも「上」である。

 「上」は常に悪くないし、それを悪いとするのは犯罪にも等しい反逆行為と見なされている。

 やればボロクソ叩かれるし、叩くのが然るべき道徳的なことなのである。



 だから、何であろうと最後は行政批判のコメントでシメるのが、新聞記事のテンプレートとなっているのも不思議はない。

 いや、確かに国民の心の中には、「悪いのは行政。問題があるのは行政」「行政は『下』であり、そうあるべき」との思考テンプレートがある。



 私はこういう現象を、「日本的民主主義」と呼んで差し支えないだろうと思う。

 つまりそこには、人間は平等だとか言いながら、やはり「上下」があるのである。

 その心性は(メンタリティ)は、かつての主君が今の人民に変わっただけで、ほとんど変わりがないように見える。

 これは「封建民主制」とも名付けられよう。


 
 人間と社会には上下関係が存在し、しかも存在すべきであるとの考えは、今でも日本社会を貫く串である。

 それは日本社会を包み込み、人民一人一人の心の中に深く深く染み込んでいる。

 最も代表的なのが、「客は店員・従業員より上である」という観念だろう。


 ネットでこそ(むろん匿名で)この観念に反発する声は高いのだが、そう書き込んでいる人たちも、やはり現実の場では「客が上」との観念に従って動いていると思う。

 なぜならそれが、現代日本の公式道徳だからである。

 また、いざ自分が客の立場になれば、やはりその公式道徳を正しいものとしたいしナチュラルにそう思うからである。


 そして当然のことながら、「上下関係があるのは正しい」という道徳からは、

 「下の者は上に逆らってはならない」「上を批判するのはとんでもないこと」とのサブ道徳が簡単に導き出される。


 これが悪質クレーマーや職場イジメの根底にあるものだというのは、バカにでもわかることだろう。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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