
船木誠勝 船木誠勝が、WRESTLE-1を退団する。(6月30日付け)
船木は言うまでもなく、UWF出身の選手である。(正確には、最初は新日本に所属した。)
そしてもう27年も前のことになるが、一冊の本が発刊された。
『格闘漂流・猛き風に告げよ -私説UWF伝-』である。

『格闘漂流・猛き風に告げよ 私説UWF伝』(夢枕獏・1988年刊) 著者は、夢枕獏(ゆめまくら ばく)。
『陰陽師』『餓狼伝』などで有名な、伝奇バイオレンス・格闘小説作家。
そしてまた、UWF存在時にはUWF観戦と小説執筆を平行し、過労でぶっ倒れたことのある人でもある。
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思うに船木ほど、「格闘漂流」というタイトルがぴったり当てはまる選手もいない。 15歳で新日本でデビューし(当時の最年少デビュー記録)、UWFに移り、その分裂後は藤原組に属す。
しかしこれは短期間で離脱し、
1993年9月21日、盟友・鈴木みのるとともにパンクラスを設立。 (運命的とも思えることに、
同じ年の11月12日には第1回UFCがアメリカで開催される。)
パンクラスは「秒殺」という今では世間一般化した言葉を生み、現在は完全な総合格闘技団体に移行した――UWFの直系としては唯一生き残った団体である。
2000年5月26日、「コロシアム2000」においてあのヒクソン・グレイシーと対戦し敗北、その場で引退を表明。
その後は映画『五条霊戦記』に出演するなど俳優としても活動したが、土木作業員として働くこともあった。
2007年12月31日、「K-1 Dynamite」において総合格闘家として復帰、
そして2009年8月30日には、全日本・両国大会においてプロレスラーとして復帰した。
全日本に所属した船木だが、2013年の全日本分裂により、離脱した武藤敬司とともにWRESTLE-1に所属。
ここを終の棲家にするかに見えたものの、今回の退団となった。
……こう書いていくだけで、転変流転の格闘人生に大きな感慨を覚えずにいられない。
まさに「格闘漂流」を地で行く人生である。 UWF時代、パンクラス時代、鈴木みのるとの余人には測りがたく立ち入りがたい関係――
彼を題材にすれば何冊もの本が書けるだろうし、実際書かれてもいる。
船木のこういう人生を、変節漢の人生と見る人もいるだろう。
プロレスから格闘技へ、格闘技からプロレスへ。
団体を次々と変え、自分の興した団体からさえも離れる。
きっぱりと引退したはずなのにまた復帰する。
W-1設立時には「この団体が現役最後のリングとなるよう、自分も柱の一つになって支えていきたい」と言っていたのに、
「契約の条件が折り合わなかった」として退団する。 しかしこの転変流転によってこそ、
船木が世界格闘技史上の重要人物の一人となったことは認めねばならない。
もしかしたら、「燕雀(えんじゃく)いずくんぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」とは、彼についてこそ言えることなのかもしれない。
さしもの船木にも、いずれ近いうち転変流転に終止符が打たれるときは来る。(少なくとも現役選手としては)
その引退試合の相手は、やはり鈴木みのるなのだろうか。
まさかパンクラスの誰かだろうか。
それは新日本のリングでだろうか。
格闘技界のヒストリーメーカーの一人の引退を、我々はどんな形で/気持ちで見ることになるのだろうか?
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彼が新日本プロレスでデビューしたときには、「自分と同い年で、プロレスラーになる人が出てきたんだ」と、感慨深いものがありました。
今回の退団劇には驚きを禁じ得ませんでした。
船木の残り少ない現役レスラー生活から、目が離せません。