Entries

『巌流島』検証大会 雑感③ 「押し出し」ルールと相撲について

 では、「押し出し」で勝ちになるという点はどうだろう。
 『巌流島』の現ルール及び闘技場自体が大相撲をモデルにしていることは誰にでもわかる。
 また、これまで総合格闘技の場で不遇だった(勝つことのなかった)相撲を活躍させたい、という意図があるのもあからさまである。
 実際に優勝こそしなかったものの、相撲代表の星風が準優勝したことから、その意図はある程度現実化したと言ってよい。(しかし、それでも優勝したのはキックボクサーだった)

 総合格闘技ファンにとっては、こういう依怙贔屓的なルール設定は許しがたいことだろう。
 しかし何度も言うように、巌流島は総合格闘技ではない。だから総合の視点で語ったり批判するのは意味が薄い。
 
 ただし、立ち技格闘技ファンにとってもなお、「押し出しルール」は目新しく奇矯なものには見えるだろう。
 ふざけたものとさえ思うかもしれないし、「こんなのは試合じゃなくてゲームだろ」と思わせる最大の原因でもあるだろう。

 しかしこれは要するに、慣れの問題だと思う。
 
 たとえばこの世に大相撲なるものが存在せず、今この時になって初めて新格闘技として提案されたとする。
 格闘技ファンはきっと嘲笑するだろう。
 なんで下に手を突いただけで負けになるのか、なんであんな狭い輪っかから足が出ただけで負けになるのか。
 こんなのは格闘技じゃなくゲームだろと絶対に言う。
 またそれ以前に、あんな奇怪体型のデブばっか集めてどうすんのか、あんなのがロクに動けるわけないだろとも言う。
 私に幻視能力などないが、「こりゃ新種のサーカス団だな、見世物小屋だな」とかいう書き込みがネットにされるのが目に見えるようでもある。

 だが、少なくとも、今の日本人はそうは言わない。
 大相撲は格闘技ではなく、見世物でありゲームだと公の場で言い切る人はいない。(正確に言うと、思っていても言う度胸がない)
 相撲の試合はたった数秒で片が付く。もうこれからして「いったいこれは試合なのか。ただ押し出すかスリップさせればいいゲームではないか」と疑問に思っておかしくないが、そういうルールに文句を付ける人もいない。
 何十年も何百年もそれでやってきて、すでに定着しているからである。
 逆に言うと大相撲は、「土俵から足が出ただけで負け」などというまぎれもないゲーム性を保持しながら地上波放送格闘技として成立している。
 また逆に言うと、そうしたゲーム性があるからこそ大衆に面白く興味を持てるものとして見られている。

 巌流島も回を重ねさえすれば観客は慣れる。
 そして土俵際の攻防というのは、寝技の攻防よりは一般人の目を引き付ける効果がある。
 「おっとっとっとっ!」「出ちゃう出ちゃう出ちゃう!」などと観客が思うのは確かに真剣勝負の場にそぐわない思い方かもしれないが、しかしそういう面白さがなければ「新格闘技イベント」が新規の客を引き付けること――地上波放送を実現することは難しいのが現実だろう。 

このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://tairanaritoshi.blog.fc2.com/tb.php/8-65eaa2b9

トラックバック

コメント

[C1] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

FC2ランキング

FC2オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

FC2アクセスカウンター

日本ブログ村・人気ブログランキング アクセスランキング

ツイッターウィジェット

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR