木村花が2020年5月に自殺して亡くなってから、もう3年経つ。
ところがこの事件、今でも余燼が収まらない。
まず、
なんと「木村花は実は(友人だった)アジャコングに殺されたのだ」という誹謗中傷デマツイートをした人がいて、アジャはこの5月23日に弁護士を通じた法的措置を取ったことをツイートした。
(⇒ スポニチアネックス 2023年5月23日記事:アジャコング、デマ投稿に法的措置 木村花さん命日直前に許せない投稿「冗談じゃ済まないから」) いやはや、奇想天外というかアホらし屋の鐘が鳴るというか、よくもまぁこんなこと考えつく人がいるものである。
よく「想像力の勝利」と言うが、こんなこと考えついてツイートするだなんて、色んな意味で「想像力の敗北」だろう。
この件についてはこれ以上論評にも言及にも値しないと思うので、これで終わる。 もう一つの方は、これよりは論ずる価値があるだろう。
大人気アニメの『推しの子』第6話「エゴサーチ」において、
●主人公が恋愛リアリティ番組に出演する
●その番組の中で登場人物の一人である女子高生が視聴者からの誹謗中傷を受け、自殺未遂する
●その女子高生に視聴者が浴びせた言葉というのが、現実に木村花が浴びせられた言葉そのまんま
だったというのである。
これに対して木村花の母親は、
「これらの言葉は、自分たちが木村花事件についての取材などで公にしてきたもの。
まるで花の死がフリー素材のように扱われていているのは、看過できない」
として、近くアニメ制作サイドにコンタクトを取るつもりだという。
(⇒ 週刊女性PRIME 2023年5月23日記事:《独占告白》人気アニメ『【推しの子】』がテラスハウス事件酷似で波紋 3年目命日・木村花さん母・響子さんが吐露した怒りの抗議「娘の死をフリー素材みたいに扱わないで」) 私は『推しの子』の漫画もアニメも見ていないし、見る予定もないので、この報道だけを読んで書くが……
なんでもこの「恋愛リアリティ番組に出演した登場人物が自殺未遂する」というエピソードは、アニメオリジナルでなく原作漫画にもあったそうで、その雑誌掲載日は木村花事件の半年後だったそうである。
そうだとすると、この原作者というのもなかなかのもんだと思うのは私だけではないだろう。
その掲載当時はSNSでやや話題になったらしいが、それで騒ぎにならなかったのが不思議なくらいだ。 もっとも、これには難しいところがある。
現実に起きた事件をモチーフにして(いや、ほとんどそのまんまにトレースして)小説・映画・漫画などを創作する――
というのは、珍しいどころか創作の常道と言っていいくらいありふれたことだからである。
それがけしからんと言われれば、これから作られる創作物・今まで作られてきた創作物(その中には「永遠の名作」さえあるだろう)は、実に困ってしまうのだ。 ただ、この現代という時代において、アニメ制作スタッフたちが
「これはまずいのではないか、倫理にもとる(と受け取られる)のではないか」
と思わなかったのだとしたら、それはそれで確かに問題だと思う。
私だったら、たとえば「推しの子 木村花」というワードでネット検索し、どのような結果が出てくるかサーチするくらいはするだろう。
あるいは、
「原作でも同じエピソードがあったけど、世間で全然問題にならなかったから今回も問題じゃないだろう」ということだったのだろうか。 いくらなんでも木村花事件というのがあったこと自体をスタッフ誰も知らなかったというのは、非現実的なまでに情報音痴というものだ。
いや、善意に解するとするならば……
アニメ制作スタッフは、まさに木村花事件そのまんまをアニメに再現することにより、世に問題提起するつもりだったのかもしれない。
(これは、あり得ることだと思う。) しかしやっぱり私だったら、それは極めて危険な蛮勇であると判断すると思う。
それにしても、3年経ってもまたこれらの「事件」が起こるのだから――
やはり木村花事件というのは、プロレス界はもとより世間一般でものすごく重要な事件だったのだと改めて感じる。
ある意味あの事件は、21世紀の日本社会のターニングポイントだったのかもしれない。
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