11月26日、神奈川県とどろきアリーナでスターダム「in showcase vol.3」が開催された。
そのメインイベントは、高橋奈七永&優宇&死神マスク vs ジュリア&桜井まい&テクラによる“棺桶入棺即爆破マッチ”であった。
これを報じる「バトルニュース」の記事を、抜粋してみると……
●ジュリア、テクラ、桜井まい、ロッシー小川(スターダムEP)が爆破されて消滅した。
●頭蓋骨型のマスクをかぶった死神マスクの不気味な動きにDDM(ドンナ・デル・モンド)の面々は恐れおののいて普段のキレが発揮できず
●最後に死神がロッシーを棺桶に叩き込み、フタが閉められるとけたたましい警告音が鳴り響き、轟音とともに花火が上がって棺桶が爆破。煙が晴れると棺桶は完全に消滅しており、4人は粉微塵になってしまった可能性がある。(⇒ バトルニュース 2022年11月26日記事:死神に棺桶に入れられたロッシー小川が爆破され消滅!「これからはもうロッシー小川はいないと思う」) これはプロレスファンには袋叩きにされる、またはバカにされる発言だと思うが……
こういう記事を見たプロレスファンならざる一般人の率直な感想と言えば、
「大の大人がよくこんなこと真面目にやってるなぁ(書いてるなぁ)」
「これがプロレスなんでしょ? いかにもプロレスだよね(笑)」 というものに違いないのではなかろうか。
また、かなりディープなプロレスファンであっても、そういう感想は絶対に心のどこかで抱いているはずだと思う。
そして私が、ふと思うのは――
今の日本のプロレスの本流というのは猪木イズムでも馬場イズムでもなく、大仁田厚のFMWイズムになったのではないか、ということである。
スターダムは、零細インディー団体ではない。
それどころか日本最大(ということは世界最大)の女子団体であり、天下の新日本プロレスの姉妹団体でもある。
それがいかに特殊形式の試合のみの「showcase」というコンセプトであるとはいえ、それを報じる記事が
「爆破されて消滅した」
「4人は粉微塵になってしまった可能性がある」
「死神マスクに恐れおののいて普段のキレが発揮できず」
なのだ。
いちおう言っておくと、これは悪口を言っているのではない。
しかしこの棺桶爆破マッチが、猪木の標榜したストロングスタイルや「世間との闘い」「プロレスに市民権を」というテーマとは、非常にかけ離れたものであるのは誰にも異論がないと思う。
プロレスに市民権を、とは、具体的には
「一般新聞のスポーツ欄に、プロ野球や大相撲と並んでプロレスが掲載される」
「地上波テレビのニュース番組のスポーツコーナーで、プロ野球・大相撲・サッカーと並んでプロレスの試合結果が報じられる」
ということだったのだろう。
だが
、いかに熱烈で真剣なプロレスファンであっても、まさか今回のスターダム大会や棺桶爆破マッチが、大谷翔平や大阪なおみやサッカーワールドカップと並んで報じられるなんて思いも期待も絶対にしない(笑) そしてまた、ふと思うのだが――
思えば今の日本のプロレスのかなりの部分が、「地上波テレビ放送を初めから諦めている・アテにしてない」プロレスによって占められているのではないだろうか。
まずデスマッチがそうであるし、この「爆破されて消滅した」式の試合もそうである。
そしてその源流は、やはり大仁田厚のFMWにあると思う。
思えば日本のプロレス界には、アントニオ猪木の新日本の幹があった。
ジャイアント馬場の全日本プロレスの幹があった。
UWFの幹も、前田日明の幹も、女子には全日本女子プロレスの幹もあった。
しかし
、この2020年代に最も枝葉を茂らせているのは、大仁田厚のFMWの幹ではないかと感じるのだ。
かつて猪木は、(馬場ではなく)大仁田厚を最も警戒していたとされている。
大仁田の毒が新日本に回るのを、何より危ぶんでいたとされる。
その懸念は、杞憂ではなかったのだろう。
大仁田の毒は新日本どころか21世紀の日本のプロレス界全体に回り、もはやそっちの方が本流になってしまった観すらある。
そういう意味では大仁田厚、やはり歴史的な名レスラーということになるのだろうか……
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