7月22日、世界最大のプロレス団体(プロレス団体とは名乗っていないが)で、つい1か月前まで会長兼最高経営責任者(CEO)を務めていたビンス・マクマホン(ジュニア。76歳)氏が、「引退」を発表した。
後任の会長兼CEOには、実の娘のステファニー(トリプルHの妻)が正式に就任するという。
(⇒ 日刊スポーツ 2022年7月22日記事:【WWE】米プロレス界に衝撃、76歳ビンス・マクマホン氏が引退発表 団体株主は継続) しかしあの、身長188センチでほとんどの日本人レスラーを上回る肉体を持ち(トレーニングによってではないらしいが)、希代のパフォーマーとしてリングをヒートアップ・アジテーションしてきたビンス・マクマホンのこと、
すぐまたリングに登場してパフォーマンスを繰り広げるのではないか、
これもまたアングルの一環ではないか、
とも反射的に思うのだが――
76歳という年齢、そして元女性社員との不倫(76歳で、である)を終わらせるため口止め料300万ドル(約3億9000万円)を払ったというリアルな不正行為を起こしているので、
どうもこれは額面どおり表舞台から退くのだと受け取った方がいいようである。
この幕引きは一般的には「晩節を汚した」と言われて仕方ないものだが、大昔から「スキャンダル上等」のパフォーマンスを繰り広げてきた彼のことを思えば、まるで「最後の通常運転」みたいに見えるのは、これもまた人徳と言ってよいのだろうか……
あと、
「西のビンス・マクマホン、東の永田裕志」と言われた(?)あの顔芸がもう見られなくなるかもしれない、というのは、世界のプロレスファンになんとも寂しさを感じさせることかもしれない。
それはともかくビンス・マクマホン氏は、世界プロレス史の中で最も重要な人物だったとして間違いはないだろう。
なんたって
戦国時代に例えれば、彼は本当にアメリカプロレス界の天下統一を果たし、世界最大のプロレス帝国を樹立したのである。
かつてアメリカのプロレス界は、群雄割拠の戦国時代さながらのテリトリー制であった。
かつてのWWE(当初はWWWF)のプロモーター・マクマホン家は、ニューヨークに割拠するプロレス大名の一人だった。
しかしビンス氏は父のビンス・シニアから1982年に経営権の譲渡を受け、1984年から「全米進出作戦」を開始する。
かのハルク・ホーガンは、その最強の「パートナー」となった。
そして最後に2001年、最後のライバルであるWCWとECWを買収し、アメリカプロレス界の天下統一を達成した。
アメリカ・メキシコ・日本は世界のプロレス三大国だが、その最大のアメリカでこんなことが起きたのだ。
メキシコでも日本でも、その他もっと規模の小さいヨーロッパ諸国でも、こんなことはいまだに起こっていない(はずである)。
もちろん今のアメリカにも他にプロレス団体はあるが、それは日本で言うインディーばかりと言っても過言ではない。
それどころかこの日本でさえ、レスラーがWWEに行くのは大出世であり快挙・栄誉だと考えられている。
WWEは世界プロレス界の最高権威の座を、日本でさえも確立したのである。(たぶんメキシコでもそうなのだろう)
これはWWEを幕府とする、世界的幕藩体制みたいなものだ。 何だかんだ失敗やスキャンダルはあったとしても、マクマホン氏がプロレス偉人伝の筆頭あたりに位置づけられるのは間違いない。
しかし40年にわたる「治世」を経た初代将軍が引退となれば、よく言われるように「守成は創業よりも難し」という言葉がどうしてもちらつく。
これを書いている今現在、マクマホン氏の引退発表を受けてもWWEの株価は下落していない。
何よりもまだ、マクマホン氏が死亡したわけではない。
そして今のWWEのストーリーラインは、マクマホン氏がいなくても全然支障ない(影響ない)ように進んでいるようだ。
それはそれでWWEの将来に向けた、マクマホン氏の最後の勝利・有終の美と言ってもいいと思われる。
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