7月8日の安倍晋三元首相の暗殺劇で、どのニュースも全て吹っ飛んでしまったが――
その前日の7月7日、新日本プロレスは恒例の戦略発表会を行った。
その席で
オーナー(ブシロード会長兼社長)の木谷高明 氏が、声涙下るといった形で「自団体批判」すなわち新日本プロレスの現状批判を行ったという。
(⇒ 新日本プロレス公式サイト 2022年7月7日記事:「今日からは、新日本プロレスver.2.1」最後に木谷高明オーナーが挨拶。『G1』来場特典として、木谷オーナーからマグネットコースターを“先着5万人”にプレゼント!【戦略発表会④】) その主な批判点は、
(1) 今の新日本プロレスは「古い・遅い・変化を嫌う」で、今の日本と同じ。
(2) 新日本のプロレスラーは(相撲の世界からの伝統で)、黒パンツを穿いて丸坊主にして無個性から始まる。
まず個性をなくすことから始めるというのは、いつの時代の話なのか。
ほんの最初は無個性でいいとして、もっと個性を出せるよう積極的に短期間に作ってあげるべき。 の2点である。
まず思うのは、(この会長発言に反応した内藤哲也が言ったように)これは新日本プロレスの会議室で言うことではないか、ということだろう。
木谷会長はオーナーである。
今の新日本が古い・遅い・変化を嫌うというのなら、それは誰よりもまず木谷オーナー自身の責任ではないか、と思うのが普通の感性だ。
ただ、しかし、思うのである。
トップがこういう風に思うのは、むしろ普通のことであると。
察するに木谷オーナーは、基本的には今は現場に不介入なのだろう。
マットのこと道場のことは、現場に全委任なのだろう。
しかしそうするとまた、当の現場はすっかり現状維持的・守旧的になってしまうというのは、実によくあることである。
そしてそんなことは、自社の会議室で言うより公の場で言う方がはるかに効果があるのだ。
これと似たことは一般社会でもザラにあって、これを外圧の社内利用と言う。(そして日本人が「外圧に弱い」というのは、よく知られたことだ。)
次に(2)であるが、これはブシロードがスターダムという女子プロレス団体も傘下に置いている以上、それとの「整合性」の面で特に改革しなければならない点である。
何もスターダムに限ったことではないが、女子プロレスの世界ではデビューから1年くらいの選手がベルトを巻きチャンピオンになることはザラである。
それが普通の光景である。
しかるに男子プロレスでは、特に新日本プロレスでは、そんなことはない。
最低でも2~3年は黒パンツ・丸坊主でヤングライオンをやり、それから海外武者修行へ行き、やっと一人前になって(ふてぶてしくなって)変身帰国する、というのが「普通の光景」である。
これはもう
まるで、「女子プロレスと男子プロレスは、プロレスと言っても全く違う種類である」と言っているようなものだ。
しかしそれは、やはりおかしいのではないか。
同じプロレスなのに女子はデビュー1年で王座を取り、男子は何年も何年もかかって(その間ほとんどずっと負けて)やっとベルトを取る。
これは、ファンたちもいぶかしんで当然である――
女子プロレスとは、そんなにも男子プロレスよりレベルが低いのか。
あるいは男子と女子のプロレスは、全然「仕組み」が違うんじゃないか。
そういう疑念を抱かないファンというのは、よっぽど感性が鈍いということになるだろう。
だから男子も女子もどっちも抱えるブシロードとしては、こんな齟齬というかアンバランスを、いつまでも放置しておけないのは当然である。 どっちのプロレスも同じプロレスなのだと、整合性を保たなくてはいけないのだ。
そして誰もが納得するように、女子の方を何年も何年もかけてやっとベルトを取るように「遅らせる」わけにはいかない。
それは当然、男子の方を「早める」しかない。
そして確かに、
今の新日本の主力陣の面々は、10年前とさして変わっていないような気もする。
これの新陳代謝を早めたいというのは、団体経営者としてごく当たり前の志向だろう。
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