女子プロレスの世界では、非円満退団はむしろ前向きなニュースとして――その退団選手の飛躍のきっかけとして――受け取られることが多いかのような、昨今である。
しかし逆に男子プロレスの世界では、どうもそうではないようだ。
9月7日、ZERO-1(ゼロワン)の大谷晋二郎とオッキー沖田が会見を開き、
●ゼロワンの前世界ヘビー級王者である田村ハヤトとのトラブルがあったこと、
●田村が移籍しようとしていた
GLEAT(グレイト)と絶縁すること、
●よってGLEAT所属選手であるエル・リンダマンの保持するゼロワンのジュニア2冠王座(インターナショナルジュニアヘビー級、NWA世界ジュニアヘビー級)を剥奪すること、
を発表した。
一目見て、エル・リンダマンが最も気の毒だと誰もが思う突然の破局である。
これはやはりアングルというか話題作りの「プロレス」ではなく、正真正銘の関係悪化と見るべきなのだろう。
実際ゼロワンも、そういう風に見られるのが嫌だからここまでの措置をとったと言っている。
(⇒ バトルニュース 2021年9月8日記事:元甲子園優勝球児が団体へ不義理の内容証明!「お世話になった関係者にいきなりナイフを突きつけるようなもの」) そもそも田村ハヤト(現在25歳)という選手、まるで女子プロレスの世界であるかのような超新星的スピード出世を遂げた男として、プロレスファンは嫌でも注目したはずである。
そのデビューは2019年9月、TAKAみちのくの率いるジャストタップアウト(JTO)においてだったが――
(ついでに言うと、練習生として入団自体が2019年になってからだ。)
なんとなんと、それから1年も経たないうちにゼロワンの世界ヘビー級王者になってしまった。
これは男子プロレスの世界では、ありえないほどの超短期間での頂点到達である。
いったいこれはどういうことなのか、と多くの人が思ったことだろう。
しかし今年2021年の1月には、JTO及びTAKAみちのくとの「方向性の違い」を理由として早々に退団。
(これですでに、非円満退団の1回目だ。)
それからはフリーとなりながらZERO1に参戦してきたが――
なんでも田村とゼロワンは、田村が世界ヘビー級王者時代に「参戦に関する覚書」を交わしていたという。
それはたぶん、一定期間は他団体への移籍を禁じる内容だったと思われる。
しかし田村はその覚書に反する形でGLEATへの入団を交渉しており、ついにゼロワンが堪忍袋の緒を切ったようだ。
しかもゼロワンによれば、GLEATのリデットエンターテイメントの鈴木社長もまた、今回の田村の行動には
「今回の彼の行動は間違っている。人としての『筋』が通っていない」
「私は今後、彼を指導していきたい」
としてゼロワン側と協議を継続していたとのことだが、
それも田村から内容証明郵便(その内容は明かされていない)がゼロワンに届けられたため、今回の破局に至ったとのこと。
もちろんこれはゼロワン側の言っていることであり、田村の側の言い分も聞いてみたいところではある。
しかしこの件で、田村ハヤトの異様性はますます際立つことになったのは否めない。
デビュー1年足らずで、いやしくもプロレス界で名高い団体の頂点を獲るという超スピード出世。
これはたぶん、空前絶後の出来事と言っていいかもしれない。
しかし同時に、デビュー団体もわずか1年で「方向性の違い」を理由に退団するという超スピード退団。
(と言っても、スターダムへ行った舞華もこれと同じくらいの退団の早さではある。)
大谷晋二郎は、今回の会見でも田村のことを「僕らの前では礼儀正しいとても好青年なので残念です」と言っているが、
それでいてゼロワンが田村への事実確認を行ったところ、音信不通になってしまい試合会場では無視を貫いたという態度。 ゼロワンの会場に来て試合をするというのにそんな態度を――話しかけられても返事しないということを――貫くというのは、異様なまでの雰囲気を感じさせるではないか。
しかもGLEATに移籍したとして、その当の社長が「彼は間違っている」と言っている(らしい)のである。
そんな雰囲気の中で会場に来て試合できるというのは、言い知れぬメンタルだと感じない人がいるだろうか。
何だか田村ハヤトという男、プロレス界で最もミステリアスな人物に一躍躍り出た観がある。
かのジュリアはアイスリボンからスターダムへの移籍騒動で、逆に一躍運が開けたのだが――
その移籍騒動よりさらにこじれたこの騒動で、田村ハヤトの将来はどうなるのだろうか。 本当にプロレス界では、思いも寄らぬことが突然に起きるものである。
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