6月6日、サイバーエージェント傘下の4団体(DDT、NOAH、東京女子プロレス、ガンバレプロレス)の合同興行である「サイバーファイトフェスティバル」が、さいたまスーパーアリーナで有観客で行われた。
この略称サイバーフェス、話題面では事実上2021年の日本プロレス界最大のビッグマッチと言えるかもしれない。
もちろん、新日本の1.4東京ドームはあるにしても――
しかしそれは新日本1団体だけの「鎖国開催」であり、
(同じ企業グループとは言え)普段はあまり交わらない4団体の選手が一堂に会する方が、はるかに話題性では勝るのだ。
だからこのサイバーフェス、来年以降も定期開催されることを期待していい。
さて、その話題の中でもヤフーニュースに載るほどのある意味「最大の話題」だったのは、「世界初のプロレス用義足を装着した、谷津嘉章64歳の復帰戦」である。
むろん義足レスラーというのは、プロレス界初ではない。
数年前には日テレジータスでTNA(現インパクトレスリング)が放送されていたが、
そこではイラク戦争に従軍して片足を失った兵士が、義足を付けてプロレスラーになっていたものである。
しかし谷津嘉章の場合は「プロレス用義足」というところが、初なのだ。
何となくこれは、オリンピックで誰かが金メダルを獲ることよりも、世の中に感動を与える度合いが強いように思えて仕方ない。
現役時代は(あの血だるまのデビュー戦を頂点として)とにかく「不遇レスラー」の代表格だったような谷津嘉章が、さらに糖尿病で片足を切断してなお、64歳で義足を付けてリングに上がる……
たとえ世の人はどう思おうとも、プロレスファンだけは言い知れぬ感覚に包まれて当然である。 さて、それ以外にも
杉浦貴&桜庭和志 vs 男色ディーノ&スーパーササダンゴマシン、
DDT高木三四郎軍 vs NOAH拳王金剛の12人タッグマッチ
など「世界観対決」の面で見所の多かったこの大会だが……
やはり最後は、声援禁止の観客をもどよめかせた、武藤敬司 vs 丸藤正道のGHCヘビー級王座戦である。
何にどよめいたかと言えば、王者・武藤掲示の放った(2018年の両膝人工関節手術のため完全封印したはずの)およそ3年ぶりのムーンサルトプレスに、だ。
結局武藤は敗れて王座陥落したのだが、それでもまたまた観客のどよめきとインパクトをもぎ取ったのは、武藤の方であった。
いや、何というか、これは「引退するする詐欺」の大仁田厚と並ぶ「封印するする詐欺」と同じようなものと思えないでもないが……
さすが武藤敬司、何が何でも主役を取りに行く男。
この「縁の下の力持ち」「名サポート役」などというポジションとは全く無縁の姿勢こそ、武藤敬司の真骨頂と言える。 58歳の今でもここまでスポットライトを浴び続けようとする姿勢を徹底されると、むしろ清々しい気分――
と言うより、これこそレスラーのあるべき姿と思いたくなってしまうというものだ。
しかも関係者の語るところによれば、武藤が(また膝を壊すリスクを冒して)ムーンサルトを解禁した一因は、
「NOAHとは2年契約を結んでいるから、ケガして欠場しても安心だから」
というものだそうだ。
これをアメリカナイズされたと言って良いかわからないが、これもまた武藤の真骨頂の一面と言えるのではなかろうか。
しかしそれにしても、2021年の(たぶん)最大のビッグマッチが
「谷津に始まり、武藤に終わる」
で総括されるような大会になろうとは、1990年代に誰が予想しただろうか……
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