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世Ⅳ虎引退―― vs悪斗のリアルな結末、団体内の本気の対立

 安川悪斗との凄惨マッチを行なった世Ⅳ虎が、引退すると正式に発表された。

 これについては本ブログでも4本の記事を書いているので、ついでに参照されたい。

【プロレス】世Ⅳ虎vs悪斗(2015.2.22)について思うこと

世Ⅳ虎vs悪斗① 今後の改善点

世Ⅳ虎vs悪斗② 週刊プロレス表紙問題

世Ⅳ虎vs悪斗③ スターダム最大のミステイク

 そして以下は、 デイリースポーツ5月31日(日)21時5分配信 の転載である。


(引用開始)*********************************

“凄惨マッチ”のスターダム・世IV虎が引退発表「試合したくない」

 女子プロレス団体、スターダムは31日、この日付けで、2・22後楽園大会で安川悪斗に重傷を負わせ無期限出場停止処分を受けていた世IV虎(よしこ、21)の引退を発表した。ロッシー小川代表が都内で会見を行い、明らかにした。

 小川代表は30日に本人と事務所で会談。辞めたいと言う世IV虎に対し「引退か退団か」を問い、「スターダムで試合をしたくないけど、スターダムでしか試合をしたくないので、引退します」という意向を了承した。

 世IV虎は2月25日に謝罪会見を行って以降、公の場に姿を現しておらず、騒動後はツイッター、ブログも更新していない。

 何度か会談を重ねたという小川代表は「(30日は)元気そうでした。次に行くための本人なりの騒動のけじめということです」と現在の状況を説明。

「まだ21歳で、素質のある選手だった。まだ若いから可能性があればまた(プロレスを)やればいい。こっちは送り出すことしかできない」とエールを送った。

 世IV虎は6・14後楽園ホール興行に来場し、ファンにあいさつをする予定だという。

(引用終わり)*********************************


 何だかんだ言って世Ⅳ虎は復帰するのではないか、それも悪斗と再戦し、どっちが勝とうと涙・涙で抱き合うシーンを見ることになるのではないかと思っていたファン、そういう展開を期待していたファンは多いだろう。

 「どうせそうなるんだろ」とシニカルな目で見ていた人も多いだろう。

 しかし、そうはならなかった。

 この事件はそういう類いのドラマ的な(プロレス的な、と言う人もいるかもしれない)収束ではなく、極めて現実的な/リアルな終わり方をしたと言えそうである。


 さてここで、もう一つの記事を紹介したい。

 それは、週刊プロレスno.1787(2015年4月22日号)に掲載された、

 短期集中連載「世Ⅳ虎vs悪斗、私はこう見る」の最終回――愛川ゆず季のインタビューである。

 とは言っても、全文引用するのは長すぎるので要約とする。

20150531週刊プロレスno1787表紙
週刊プロレスno.1787(2015年4月22日号)



(要約開始)*********************************

1 以前から悪斗がスターダム内で浮いているとの噂は聞いていた。 (※すでに愛川は引退している)

2 そこで昨年12月に本人と話をしたところ、やはりその通りだったため、「もうプロレス辞めなよ」と言った。信頼関係がないとプロレスは成り立たないため。

3 自分(愛川)と美闘陽子(引退)が夏樹☆たいよう&世Ⅳ虎と試合をした時(2012.3.20後楽園ホール)、相手側にケンカマッチを仕掛けられた。

4 試合自体は盛り上がったが、その後で自分と美闘は心が壊れ、二人で「プロレス辞めよう」と話し合った。

5 納得できなかったため夏樹に話をしに行くと、「美闘の本気の蹴りが見たかったからああいう試合にした」と言われた。

6 夏樹と世Ⅳ虎はその試合前からロクに話をしてくれず、練習の時もそうだった。今回の悪斗にとっての世Ⅳ虎もそんな感じだったと思う。その恐怖感は凄かったと思う。

7 スターダムでは「何かあったらやっちゃっていいんだよ」と教えられてきた。新人にとってはそれがプロレスの全てになる。だから悪斗も、ある程度は厳しい試合になると覚悟していたと思う。

(要約終わり)*********************************


 私はこれは、近年読んだプロレス記事の中で、最も突っ込んだ内情報告であると思う。

 それが宝島社のムックなど暴露的・スキャンダル的な本でなく、週刊プロレスに載ったことにもけっこう意外感を持つ。

 たとえて言えば、かつてのソ連のタス通信が、今の中国の人民日報が、自国共産党政権の内幕を書いたような感じか。

 週刊プロレスが、自誌を業界の御用雑誌と見られないよう――ジャーナリズムであり続けようと配慮しているのも透けて見える。


 それにしても、同じ団体にいながら、大会の最後にはリングに集まり 「今を信じて、明日に輝け! We are スターダム~!」 などと一緒に声を合わせていながら、なお実態はこうだった。

 それでいながら、「スターダム水着大会」などでキャピキャピ笑って遊んでもいた。

 これは、恐ろしいことである。


 この記事を読んで 「うわ~……」 と感じた人は多かったのではないか。

 何かこう、人間関係の闇というものを見せられた思いになったのではないか。



 私は数日前、同じ団体に属す選手同士が、本気で勝敗を争っているとか対立しているとかいうのは、プロレスの説得力を下げるものではないかと書いた。 (なぜイジメ自殺は…その4 プロレス界の最大矛盾――「本当に闘っている」と「上下関係が厳しい」のは両立するのか?)

 しかし愛川ゆず季の証言は、同じ団体であっても本気で戦うこと、本気の対立があり得ることを示している。

 何しろ同じ団体の「仲間」でありながら試合前は口をきいてくれず、そもそも「何かあったらやっちゃっていい」と新人は教えられているのである。

 やはり多くのプロレスラーが言っているように、試合中に仕掛ける/仕掛けられることはあるのだろう。

 スターダムのような、ビジュアル系レスラーを取りそろえ、全体としては明るい試合を志向する女子団体でも、やはりそういうことがあるのだろう。

(もっとも、 「そういうことがある」 ということは、他の大部分はそうでないことを示してもいるが。)


 これが女子の世界特有のことなのか、たとえば今の新日本ではそういうことは起こらないのか、私は知らない。

 しかし、我々の職場においてもこういうことがあるとは言える。

 職場の席では普通に談笑し仕事の話をし合っていても、食堂や廊下・階段、プライベートでの偶然のすれ違いなどで、お互いが無言のまま挨拶もしないこと/気づかないふりをしようとすることはけっこうよくあるように思える。

 プロレス界が、女子プロレス界の内幕が恐ろしいものであるならば、我々の日常生活もまた恐ろしい。

 やはりプロレスも現実社会の一部なのであり、いくら非日常の世界を演出すると言っても、日常を反映せずにはいないのだろう。




【補遺】

 世Ⅳ虎はまだ21歳。

 ロッシー小川代表が「まだ若いから、可能性があればまたプロレスをやればいい」と言っているように、復帰の可能性は多分にある。

 そもそも世Ⅳ虎は、「この人プロレス辞めたら何するんだろう」と周りが思う(心配する?)選手の代表格である。

 ひょっとしたら、vs悪斗の物語は、まだ結末を迎えていないのかもしれない。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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