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空前絶後の視殺戦30分-2020.3.29潮崎豪vs藤田和之の示すプロレスの謎

 サムライTVの同日中継で、3月29日・NOAH後楽園ホール大会を見た。

 コロナ危機下の無観客興行、全4試合がGHC四大王座戦というシチュエーションだったのだが……

 何と言っても全てを持って行ったのはメインイベントのGHCヘビー級王座戦、王者・潮崎豪と挑戦者・藤田和之の一戦であった。

 驚くべきことにゴングが鳴って約30分間、両者はほとんど動くことなく睨み合い(視殺戦)のみを続けたのである。

 これは、プロレスの試合を映画にたとえれば、問題作・異色作・実験作の範疇に入ることは間違いない。



 より正確に言うと――

 試合時間15分過ぎ、ようやく藤田が右側ニュートラルコーナーに歩く。これが視殺戦第1部。

 次に試合時間28分過ぎ、藤田が前方赤コーナーに歩く。これが視殺戦第2部。

 ここまで潮崎は、藤田に応じて体の向きを変えただけだ。

 そして32分ごろ、やっと両者が接近し、藤田の高速タックルが決まって「試合開始」となる。


 最後はラリアットで潮崎が勝利し王座防衛となったが、トータル試合時間は57分47秒で、GHCヘビー級選手権の規定時間60分のほとんどギリギリであった。


 それにしても約32分間、全く接触もせず視殺戦のみ続ける……
 
 こんなことは、無観客試合だからこそできることである。

 そしてこれからしばらく各団体で無観客試合が続くにしても、もうこんなことの二番煎じは絶対にできない。

 これはたぶんプロレスの歴史上、ただ一度だけ起こった「事件」となり、さらには「伝説」とされるだろう。


 特に藤田は、あの表情を――あの「静かな鬼」みたいな印象的な表情を――32分も続けたということだけでも、プロレスラーとしての株が爆上がりしたのではなかろうか。

(印象度ではそれより劣るが、潮崎もである。)


 あんなことは、たいていのプロレスラーにできることではない。

 よくプロレスは「動き回るのが能じゃない、『間』が大事なんだ」と言われるが――

 その意味でこの試合は、行き着くところまで行った究極の『間』の試合となった。


 くどいようだがこれはもう、二度と再現できない(マネができない)ものである。


 さて、視殺戦が終わって「試合開始」となった後の展開は、ほとんど(最終的には敗北した)藤田の独壇場のようなものであった。

 まずグラウンドで潮崎を圧倒したが、その光景はほぼ「無観客の道場で先輩が後輩のスパーリング(シゴキ)をしてやってる」光景に見える。

 実際藤田はレフェリーに向かい、「(これは)ラッパっつーんだ勉強しろ」などとさえ言っていた。

(これがまた、無観客なのでよく聞こえるのだ。)


 グラウンドの次は場外戦で、藤田はスタッフ席の消毒液を口に含んで「消毒液の毒霧」を潮崎にかます。

 さらには階段を経てロビーに潮崎を引き回し、

 会場に戻ったかと思うと今度は別の階段を上がって二階バルコニーに連れて行く。

 それはまるでNOAH(のGHCヘビー級戦)ではなく、DDTか大日本かというような光景であった。

 
 おそらくこの試合を見ていた人は、藤田和之というプロレスラーのことを、改めて見直したのではないだろうか。

 四十代も後半になって、それもどちらかと言えば「プロレスラーとしては失敗した」イメージさえある藤田が、こんな試合を見せてくれるとは……


 だが、何よりこの試合――前代未聞・空前絶後の超・長時間視殺戦――、プロレスの根幹の「謎」に関わっているように思われる。

 現代のプロレスファンの間でさえ「常識」になっているのは、「プロレスの勝敗は、事前に決まっている」という命題である。

 それどころか、どの技で終わらせるか、どんな試合展開にするかさえ、事前に決まっているとされている。

 では今回の「32分間の視殺戦」は、事前にそうしようと決まっていたのだろうか。

 藤田はこんなことを(提案し?)、相手や会社と打ち合わせ、みんなそれを承認したのだろうか。



 せっかくの無観客試合なんだから、どうせならインパクトのあることをやろう――

 そう考えるのは誰でもそうだとしても、だからといって32分間もコンタクトすることなく視殺戦だけやることにしよう、これは絶対に話題になるよ……

 と、そんな風に「あらかじめ協議して決めておいた」のだろうか。

 なるほどファイトを促すレフェリーの行動は、やや控えめだったように思える。

 あれだけ大勢いた(杉浦軍は全員、潮崎側は中嶋勝彦一人のみ)セコンドの中で、「行きましょう」「攻めましょう」と声を出していたのは鈴木秀樹だけである。

 しかしそれも、「観客がいなかったから」という理由で説明が付くと言えば付くように思える。、

 
 現代プロレス観の「常識」で言えば、もちろんこの長い長い視殺戦は、あらかじめ決められていたアングルであり展開である。

 しかしやはり、それこそ「常識的」には、そんなことをやろうとみんなが決める/賛成するとは、ちょっと思えないのである。

 今回の視殺戦の真相を、あなたはどうお考えだろうか。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙 表紙:『もうすぐ無人島になる瀬戸内の島へ』 ブログ販売欄掲載用

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