2月29日、武藤敬司会長とカズ・ハヤシ社長が会見を開き――
WRESTLE-1が4月1日後楽園ホール大会を最後に、無期限の活動休止に入ることを発表した。
解散とは言っていないが、事実上、団体の終焉・崩壊である。
(⇒ バトルニュース 2020年2月29日記事:武藤敬司がWRESTLE-1の活動休止を発表!「悔やまれることばかりです」) 現時点での日本の男子プロレス界においては、「6大国」とも呼べる団体がある。
新日本、全日本、大日本、DDT、NOAH、そしてWRESTLE-1である。
この中で「どれが最初に消えてなくなるか」と聞かれれば、それはWRESTLE-1を選ぶ人が一番多かったのではないか。
WRESTLE-1は、大方の人の目からは、6大国の中で最も弱体であった。 その意味からは、今回の終焉宣言はプロレスファンにとって特に意外ではなかったかもしれない。
いつか来るものとは知りつつ、ついにその日が来た――潰れるべくして潰れた、とも言えるかもしれない。
それにしてもつい先日、「このたびの新型コロナ騒動により、プロレス界の再編が進むかもしれない」と書いたばかりである。
(⇒ 2020年2月18日記事:スターダム、1ヶ月間の興行中止-新型コロナがプロレス界の再編を促す?) その舌の根も乾かぬうちに男子6大国の一角が崩れたのだが……
会見では、新型コロナの影響には一言も触れられていない。
なんでも
旗揚げからずっと赤字体質を脱却できず、オーナーの補填を受けてきたがこれ以上は無理、というのが活動休止の理由らしい。
ここで言うオーナーとは、(株)GENスポーツエンターテインメントのことなのだろう。
WRESTLE-1がずっと赤字だったというのは、プロレスファンには何となく「そうなんだろうな」と納得できるものではある。
さて、なぜWRESTLE-1がずっと赤字で崩壊に至ったか、という理由となると――
一言で言って、このごろ流行りの「企業プロレス」に移行できなかったことになるのだろう。
新日本・DDTは言うまでもなく、NOAHもまた(悪戦苦闘の数度の体制変更を経て)大企業のグループ傘下団体となった。
大日本はいまだに家内手工業的な側面を色濃く残すインディーで、
全日本は(こういう理解が正確かどうかは知らないが)むしろ自らが大企業をやめてインディーになった。
しかしWRESTLE-1は、大企業の傘下にもインディーにもなりきれなかった側面があると思う。
WRESTLE-1は、旗揚げ当初こそスポーツセンターをオープンするなど、「現代のSWS」的・企業プロレス的な側面を世間に見せていた。
しかしそれも今となっては、「カネのあるパトロンの支援」の域を出るものではなかったように思える。(もっとも、「プロレス総合学院」は何人も有力レスラーを輩出したので、その功績は大きかった。)
WRESTLE-1が「武藤敬司の率いる」「武藤敬司の一枚看板」だというのは、よく言われてきたことだが――
その肝心の武藤があまり大会に出場しなくなったのも、敗因の一つではあるだろう。
とは言っても、武藤がさんざん現代プロレス界最大の天才と言われようとも……
その観客動員力はもはや昔ほどではない、というのが本当のところのはずである。
そして、確かに以前からの契約とは言え、
自分の団体最後の4月1日大会に、自分はアメリカで試合があるので参加できません、というのは――
なんとも言えない武藤らしさだ、と感じる人が多いのではなかろうか。
武藤敬司というネームバリューのある選手がトップにいながら、WRESTLE-1を傘下にしようという大企業はなかった。
ひょっとしたらWRESTLE-1自身、それを望まなかったのかもしれない。
その選手陣は特にNOAHなどに劣っているようには思われないが、しかし生き残ることはできなかった。
まだ企業プロレスに移行していない全日本と大日本も、これに感じるところがあるはずである。
というよりWRESTLE-1の崩壊によって、大企業プロレスとインディープロレスの区分がますますハッキリしてきた、
生き残りたいならどちらかの道をハッキリ選ぶべきだ、と鮮明になってきたと言う方が正確だろうか。 2020年もまだ2月、そしてコロナ騒動も相まって、2020年のプロレス界再編はまだ続きそうな予感である。
【補遺】
この記事に、「ドラゲーは大国では?」とのコメントを戴いた。
そのとおり、うっかりドラゴンゲートのことを書き忘れていた。
本記事中の「6大国」は、「7大国」に修正してお読みいただきたい。
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