世Ⅳ虎VS悪斗について書いていると、これについて書く時間が取れなかった。(この程度の文章でも、書こうと思えば1時間以上かかるのです)
が、とりあえず録画を見た感想を簡単に書く。
見終わってまず感じたことは、
これは「負けた人が傷つかない大会」だということである。 PRIDEの再来でもなく、ましてUFCのオルタナティブ(代替選択肢)でもない。
こう言うと選手・関係者は怒るだろうが、私には
「ヌルヌル相撲」の延長線上にあるように見えた。 しかしそれは腐しているのではないし、くだらないと言っているのでもない。
今回の優勝者はキックボクサーのブライアン・ドゥウェス(オランダ)だった。
だが、だからと言って
「全ての格闘技の中で最強はキックボクシングだ」と思った人は一人もいなかったはずである。 プロレスのミノワマン(日本)があまりにあっさり負けたからと言って、ミノワマンって本当は弱いんじゃないのと思った人もいなかったろう。
「ほら見ろプロレスはやっぱり弱い」と思う/言いたがる人は必ずいるにしても、この試合で負けたからといってそう囃し立てるのはちょっと気が引けるのではないか?
選手本人はともかく見ている側としては、ここでの敗北はヌルヌル相撲に負けたくらいにしか感じられないのである。
ブライアン・ドゥウェス(中)、ミノワマン(右) これは、格闘技としては致命的な欠陥かもしれない。
要するにゲーム性が高すぎ、「本当の強弱」(これが何を意味するかは人によって捉え方が違うのだが)を決める場としての説得性に欠けている、ということになろうか。
そのゲーム性の高さの一番の原因は、やはり「場外に3回押し出されたら負けになる」ルールにあるだろう。
中継中に実行委員も言っていたが、やはり足がチョコンと場外(俵の外)に出ただけで場外1回とカウントされるのは酷である。これで負けなのかと選手も観客も思ってしまう。
闘技場は土俵状の高台になっているのだから、その高台から落ちてはじめて場外1回とするのが観客にもわかりやすく、選手も納得できるのではないか。
巌流島・闘技場 しかしそれもやってみて初めてわかることであり、見て初めて思うことである。
誰だって後知恵は次から次へと湧いてくる。 『巌流島』は回を重ねるごとにルール改正するのが前提されており、そもそも今大会は「検証大会」とされている。
まさにこういう問題点を抽出するのが目的だったのだから、観客も実行委員らもかなりの成果を得られたのではないだろうか。
もっとも人によっては、「押し出し」ルールなどなくしてしまえと言うかもしれない。
そして格闘技ファン(総合格闘技ファンのことである)が最も違和感・反発・否定感情を覚える点は、現ルールが寝技というものを完全削除してしまっていることだろう。
「こんなの“本当の格闘技”じゃねぇよ」と思っているファンは相当多いはずである。
しかしたぶん、「押し出しルールの維持」と「寝技の削除」とは巌流島ルールの根幹であり、いくら改正が前提だろうとこれが変更されることはないと思われる。
実行委員らによるルール検討の模様は『千原ジュニアのニッポン格闘技復興委員会』(スカパー・フジテレビONEチャンネル)という番組で放送されていたが、それを見た限りそう感じる。
(蛇足だが、格闘家や元格闘家でなくお笑い芸人の名を番組名の冠にする、というのが今の格闘技の置かれた地位及び芸能人の知名度の威力を表しているとは思う。)
そして私は、その方針は正しいだろうと思っている。
押し出しをなくし寝技を復活させるというのは取りも直さず総合格闘技になることであり、結局は劣化版PRIDE・UFCへ至る道だからである。 『新』格闘技イベントと銘打っている立場上、また競合戦略上、かつてのPRIDEや今のUFCと全然別の道を模索するのは間違っていない。
ただ問題は、今でも日本の格闘技ファンは、PRIDEの復活とそれがUFCへの対抗軸になることを望んでいるように思える点である。
それとは別の道を行くことについて、反射的に否定的になる――否定的にならねばならないとまで思ってはいないか?
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