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なぜイジメ自殺はよく起こるのに、イジメ復讐殺人は起こらないのか その1 人間関係の維持と人間の本性

 こういう記事を読んだ人は、まず間違いなく怒りと憤りを感じるだろう。許せないと思うだろう。

 しかし救いがないのは、そう思うまさにその人が、自分の職場や学校では(程度は低いが)似たようなことをやっている可能性が非常に高いことである。

 今回ピックアップした記事はたまたま警察が多かったが、もちろん自衛隊でも他の一般の職場でも、似たようなことは起こっている。 

 そしてこのブログを読んでいるプロレスファンの人ならば、昔のプロレス団体も例外ではなかったことを思い出すだろう。

 「辞めさせるためのシゴキ」「理不尽なシゴキ」「先輩の後輩に対するイジメ」とは、かつて多くのプロレス団体でかなり普通に行なわれていた――

 プロレスについての本や雑誌を読むくらいのファンであれば、そういう記事を読んだことがないとは言えないはずだからだ。


 しかしちょっと不思議なのは、「辞めさせるためのシゴキ」で辞めさせるのはそれで目的達成だからわかるにしても、そうでないなら先輩・上司は責任を問われないのか、という点である。

 警察学校への入学者が4人に1人辞める(兵庫県警の場合)というのは高すぎる率だと思うのだが、それは問題視されないのだろうか。

 「ついて行けない奴はそれぐらいいるもんだ」と普通に受け止めているのだろうか。

 団体の練習生が辞めて残らないのはむしろ「あるべき姿」であり、そうならないのは直属先輩がヌルいからと評価されていたのだろうか。


 想像するに、やはりこのことは問題だと、上の人も思ってはいるのだろう。

 しかしやはり、教官や直属先輩というのは上の人にとって身近な既存の仲間ではある。

 たぶん彼らどうしの仲はそんなに悪くない――上の人も、悪くしたいと思っていない。

 新入生はまだ余所者(よそもの)であり、それが辞めたからといって、上の人も「既存の仲間」との仲を悪くしたいと思わないのだろう。

 辞めた人が「警察学校は地獄だ」「あそこのプロレス団体はろくでもない」と言いふらすリスクは確実にあるはずだが、それは仲間内の仲を保つことに比べれば無視できるほどのリスクである(と、感じている)。

 そして実際、辞めた人がそういう行動に出た事例は、不思議と少ないように思える。

 それはおそらく、かつて所属した組織への義理立てなどではなく、「ケツを割った人間」の言うことを世間は軽んじバカにすることがわかっているからではあろう。

 また他ならぬ彼ら自身がそう感じ、どこか後ろめたく思っているからかもしれない。

 
 イジメとパワハラをする側は、もしターゲットが自殺でもすれば、自分たちがイジメとパワハラをしていたことをまず否定する。

 「あれはそんなものじゃなく、指導だった」と言う。

 「彼には、指導されるだけの理由があった」とも間違いなく言う。

 これはもちろん「イジメられる側にも原因がある/悪い点がある」と言っているのであり、世間の人はこんなセリフに怒りを感じる。 

 しかしその「世間の人」一人一人は、いざそんな事態がわが身に生じれば、やっぱり同じことを言う。


 これは絶対確実だが、事例(1)(2)(3)の教官・指導員・捜査2課長も、やっぱり同じことを言うし思っているはずである。

 「イジメられる側にも落ち度がある、そうされるだけの理由がある」と他人が言うのを聞けば、彼らも「こいつ何言ってんだ」と本気で怒りを感じるのだろう。

 しかしいざ自分自身のことになると話は別――これは彼らだけでなく、世間のみんながそうなのだ。

 「自分だけは例外」は、人間の最も根深い本性の一つである。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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