RIZIN9月30日さいたまスーパーアリーナ大会を、地上波放送で見た。
何と言っても、
メインイベントの那須川天心vs堀口恭司(しかし台風の影響で、最後ではなく中程の試合順となった)である。
この試合、本当に素晴らしい試合だったと思う。
まさに最強対最強(キックボクシング最強 vs 総合格闘技最強)の名に恥じない――
試合前に両者が言っていたとおり、刀で斬り合うような戦いである。 結果は、判定3-0で那須川天心の勝ち。
しかし逆に株を爆上げしたのは堀口恭司の方だったというのは、衆目の一致するところだろう。
最も印象的だったのは、堀口が2ラウンド目までは頻繁に笑顔を見せていたことである。
対する那須川は、最初から最後まで笑みのカケラもこぼれなかった。 もちろんこの試合、(テレビ解説ではもちろん誰もそんなこと言わないが)堀口の方がはるかに気楽な立場にあった。
何と言ってもこの試合はキックボクシングルールであり、それは那須川の本業であるのに比べ堀口にとっては余技である。
那須川が負ければ無敗の神童という経歴が確かに揺らぐが、堀口は別に負けても恥ではない。
そしてそのとおり、堀口はまんまと負けても大きな評価を得たのである。
(当然、本人があれほど強くなければそういう結果にもならなかったのだが。)
対する那須川は、ローブロー(金的誤爆)を二度も重ねるという痛恨のアクシデントをやってしまった。
これは運が悪いとしか言いようがないが、「当然のはずの勝利」に大きな悪印象を残したものである。
この試合、まさに「試合に勝って勝負に負ける」の典型のようだ。 そして堀口の笑顔と相まって、ますます「アクシデントがなければ堀口が(キックルールでも)勝ってたかも」と観客に思わせることとなった。
まさにまさに、
「今日の試合のテーマは笑顔です」がドンピシャで当てはまった試合といったところか……
次に、2018年大晦日の引退を撤回したミルコ・クロコップとロッキー・マルティネスの試合は――
なんと、ミルコの肘でマルティネスが額を大きくカットし大流血、そのままドクターストップとなりミルコの勝利となった。
誰もが疑問に思うのは、これがミルコがそうしようと意図してやったことだろうか、ということだろう。
このロッキー・マルティネスという選手、腹肉と胸肉がハッキリとダブついた「昭和のオジサンレスラー」みたいな体型なのだが、なるほどミルコを押していたように見えた。
そこでフィジカル面では勝てないと悟ったミルコが、意図して肘で額を切ったのだとしたら……
恐ろしいというか、ブーイングが起こっても不思議ではない行為のはずだ。
しかし一方、「勝つために老獪なインサイドワークを使う」という、プロレス中継でよく聞く話のようでもある。 まさかミルコ、そんな策略を意図して使う選手になってしまったのだろうか。
もしそうなら確かに彼、今までよりもずっと恐ろしい格闘家になりそうである。
さて、地上波放送で最初に放送されたボブ・サップ vs 大砂嵐の一戦だが……
ダイジェスト放送であれなのだから、会場の雰囲気はいったいどんなものだったのだろう。
大砂嵐はファラオの衣装で登場し、その後ろには(明らかに大砂嵐より強そうな)ジョシュ・バーネットが続く。
入場曲はあのアブドーラ・ザ・ブッチャーと同じで、ケンドーコバヤシらゲスト芸人は確かにそれで盛り上がっていた。
しかし
試合内容と言えば、那須川天心vs堀口恭司が100点とすれば、あれは5点にも満たないだろう。
ボブ・サップと言えばあまりに早く戦意喪失してしまうので有名だが、今回ばかりは大砂嵐がさらに早かった。
(逆に言うと、サップはいつになく試合意欲が持続していた。)
私は
あれほど、試合中なのに「もういいわ、まだやんのかよ、もう限界だよ」なんて内心を外に晒した選手を見たことがない。 ガードが下がるのは当たり前として、相手と正対しているのに両手を腰に当てるとか、少なくともRIZINのリングではなかったのではないだろうか。
これで「病床にある元横綱・曙の仇を討つ!」なんてナレーションされるのだから、曙もいい迷惑である。
(いや、大砂嵐本人だって、勝手にそういうことにされるのは迷惑だろうが……)
いやはや昔のプロレス風に言えば、大砂嵐は「とんだ一杯食わせ物」であった。
しかし統括本部長の高田延彦、共にスタミナ切れを起こして互いに手を出さず立ち会うだけの両者を「西部劇の決闘だよ」と評したり、もうすっかりテレビ人である。 それにしても大砂嵐はともかくとして、
サップってこんな試合ばかり経験しながらいまだオファーがあり、しかも必ず地上波放送されるというのは、考えてみれば凄いことだ。
しかももう、10年以上そういうことをやってきている。
試合終了後、まさしく野獣のような表情で大砂嵐に抱きついたサップの映像に、会場からは異様な爆笑が起こっていた。
何を隠そう私も、今回の大会で一番印象に残ったのは、メインイベントと並びその瞬間の映像である。
ボブ・サップ、なんだかんだ言っても、端倪すべからざる男である……
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