9月28日TBS放送の「今夜解禁!ザ・因縁」では、2017年4月以来心不全により入院し続けているプロレスラー・曙(49歳)を、元ライバルであった3代目若乃花(花田虎上)が見舞うシーンが映された。
もっとも私はこの番組を見ておらず、それを報じたスポーツ報知の記事を読んだだけだ。
(⇒ スポーツ報知 2018年9月28日記事:記憶障害でリハビリ中の曙、花田虎上と再会し笑顔取り戻す「一緒に両国の土俵に上がろう」) ここに記された曙の現状は、悲痛の一言に尽きる。
●体重は210キロから140キロに減り、(しかし、これだけ激ヤセしてもまだ140キロだ)
●記憶障害で会話もおぼつかず、
●自分の長男と次男のことを弟たちだと思い違いし、昨夜のことも憶えておらず、
●食べ物は夫人が砕いて食べさせ、
●歩くことを脚が憶えていないほど細くなり、もちろん寝たきり
だという。
こんな状態にある人のことについて、以下のようなことを書くのも気が引けはするが……
しかしこの際、書いておこうと思う。
まず、当然のことながら、今まで大勢のプロレスラーが曙を見舞ってきたのは確かなはずだが、そういうのは地上波番組に決して映らず、20年近く前のライバルが見舞いに来るのは放送される件について。
曙はいまだ欠場中の現役プロレスラーなのだが、見舞いに行っていることが確実の秋山準でさえも、地上波テレビに映ることはない。 ボブ・サップが見舞いに来たのかは知らないが、たとえ来ていてもそれも地上波放送されなかっただろうことは想像に難くない。
しかしこれは、熱烈なプロレスファン・格闘技ファンでさえ「仕方ない」と感じるだろう。
これもまた残酷ながら、大相撲とプロレス・格闘技の知名度の大差である。
「曙」という名には、確かにいまだ大きな知名度はあるものの、その知名度の成分のほぼ大半は「元横綱」としてである。
曙が総合格闘家であるとかプロレスラーであるとか、そんなことは全然知らない人の方が、たぶんずっと多いのだろう。
ただしこれには、他ならぬプロレスラーたちの責任だって、ないとは言えないと思う。
プロレスラー曙は、同じプロレスラーからでさえ「曙」ではなく「横綱」と呼ばれてきた。
いや、「おい曙!」と叫んだレスラーもいるかもしれないが、思い返してみても「横綱」と呼ばれてきた映像しか浮かんでこないくらいである。 曙が「過去の栄光」にしがみついていたとは言わないし、周りがその過去の栄光を崇め奉っていたとも言うまい。
(それが「敬語」の一種であることは、誰にだってわかる。)
しかし結局そういうのは
、いつまで経っても(三冠王者になってさえ)曙が「本当はプロレスラーじゃない」選手として、プロレスファンの脳裏にインプットされてしまう原因になってきたのではなかったか。
もし曙が「もうヨコヅナと呼ぶのは止めてくれ」と公言していたら、それはプロレス史の佳話の一つとなったと思う。
そして他のレスラーが本当にヨコヅナと呼ばずアケボノと呼ぶようになっていれば――
そのときこそプロレスファンは、曙を真性プロレスラーと思うことができていたろう。
(浜亮太ら、他の相撲出身レスラーは全員そうなっているではないか?)
別にそうなったからと言って、曙が横綱だった記録と記憶は消えることはないのだから、べつだん困ることはなかったはずだ。
曙は1988年から2003年まで15年間、力士であった。
しかしプロレスラーである期間も、2003年から2018年の今に至るまで同じ15年間だ。
そんなに長くプロレス活動をしていても、それでも「ヨコヅナ」と呼ばれ続ける……
レスラーが他のレスラーに経緯や礼儀を示すのが悪いこととは言わないが、やっぱりそれは、かえって曙をプロレスラー扱いしていないことにもなるのではないか。
今に至るまでプロレスファンの嘲笑の的、あの元横綱・双羽黒の北尾光司でさえ、周りのレスラーから「ヨコヅナ」と呼ばれてはいなかったと思うのだが…… もし曙が快癒してリングに戻ってくることがあれば、今度こそ一プロレスラーとして周りに認知され、扱われることを願いたい。
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