芸術の世界。特に、絵画の世界。
そのバブルの大きさと持続性は、世の中でもひときわ目立つ。
ピカソ、モネ、ルノワール、ダ・ヴィンチ……
その絵一枚に何十億円・何百億円の価値があるとされている画家は、覚えきれないくらいいる。
しかし、ここでも茶器の場合と同じ問いをしよう。
あなたは本当に、彼らの絵にそれだけの価値があると思うか。
もし純粋に自分自身の判断を下すなら、それらに十億円の値を付けるか。
もし「無名画家」ピカソの絵が路上で売られていたら、あなたはそれを買おうとするか。私なら五百円でも買わないだろう。 しかしあなたは、「あのピカソ」はすごい画家だと思っている。
それは世の雰囲気がそうだから、他人がそう言っているからという理由以外にあるだろうか。
ピカソ『ゲルニカ』(1937) クリスチャン・ラッセンという画家がいる。イルカなど海洋生物の絵で有名な人である。
私は、ピカソより彼の絵の方がよっぽど上手いし魅力的だと思う。
もし自宅に絵を飾る趣味があるなら、迷わずこっちを飾ると思う。
しかし世の中はピカソの絵の方をはるかに高く評価している。
それはなぜなのか、美術評論家は(ひょっとしたらあなたも)いろいろ「根拠」を述べ立てるだろうが、その根拠って何なのだろう。
それはやはり雰囲気の産物ではないか。他人が言うことの受け売りではないか。

クリスチャン・ラッセンの海洋絵画******************************************************
私は「スポーツに価値はない」との意見への反論として、
○スポーツに価値がないと思うのは、スポーツに興味がないから/無関心だからこそ。
○しかし世の中には、スポーツに価値を見いだす人/好きな人の方が多い。(=スポーツに興味がある人の方が多い)
の2点を挙げた。
しかし芸術の場合は、それに興味がない人(こっちの方が多いことは明らかに思える)さえも高い価値を認めようとするのが特異である。 私は美術商・画商というのは虚業家の最たるものだと思っているが、一般にはあまりそう言われない。
芸術の権威というか価値というものを高く評価する雰囲気は、世間一般に強く強く根付いている。
それは明らかに「芸術バブル」だと思うが、しかしそうは言えないほど長く続き、これからも続きそうである。
こんなことを書いたすぐ翌日の今日、ピカソの『アルジェの女たち』が美術品史上最高の1億7900万ドル(
約215億円)で落札されたとの報道があった。
もうこれは、バブルと言うより狂気の沙汰だと思う。
『人類は衰退しました』というラノベがあるが、まさに『人類は発狂しました』と題すべきニュースに聞こえるのは、私だけなのだろうか。

ピカソ『アルジェの女たち』
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