いま日本のプロレス界全体で最も注目を集めるのは、IGFと全日本が開戦(=交流)するかどうかだろう。
(NOAHの行く末を除く)
ただし今のところ、ここで言う全日本とは諏訪魔だけを意味しているようである。
しかし突然それを上回る、思いもよらないニュースが飛び込んできた。
DDTの社長である高木三四郎が、WRESTLE-1のCEO(最高経営責任者)に就任したというのである。

高木三四郎(左)・武藤敬司(右) 2015.5.5 WRESTLE-1後楽園ホール DDTとWRESTLE-1が手を組む――これは意外な提携である。(選手の交流はやらないらしいが)
おそらくプロレスファンのほぼ全員が、こんな組み合わせは予想もしなかったのではないか。
本当にプロレス界は先が読めない、何が起こるかわからない業界だとの思いを新たにする。
ところで、CEOとは何を意味するのだろう。
まず、WRESTLE-1は会社ではない。「株式会社レッスルワン」という企業はない。
それは「株式会社GENスポーツエンターテインメント」が運営しており、「WRESTLE-1」とはGEN社のいわばブランド名・商品名である。
ただしGEN社の代表取締役は武藤敬司なので、武藤がトップだということに間違いはない。(WRESTLE-1公式サイトを参照のこと)
ちなみに、「代表取締役」「取締役」は法律で定められた名称であり役職だが、「社長」「会長」「部長」「課長」などというのは全部そうでない。
それらは各企業団体が勝手に決める名称であり、法的根拠があるわけではない。
たとえば従業員10人の会社の「係長」を、明日から「世界戦略担当プレイングマネージャー」にしてしまってもいいわけだ――どんな職名を付けるかは、各社の勝手だからである。
むろん「CEO=最高経営責任者」というのも例外ではなく、その会社が社内の或る役職をそう名付けるのは勝手である。
(最高経営責任者とは社長のことで、それは代表取締役のことではないのかと思ってしまうが、この3種は必ずしも同じものではないらしい。これについてはググってほしい。)
ちょっと前のWRESTLE-1では征矢学(そや まなぶ)が「マッチメイカー」を務めていたが、もしかしたら今回の高木の「CEO」就任もそれと似たような話ではないか、という気も少しする。 だが武藤と高木の会見を見る限りでは、どうやら本当に高木は経営を任されるようにも感じる。 私はこれをどうしても、
「武藤天皇が高木三四郎を征夷大将軍に任命した」ように捉えてしまう。
それはつまり
、「形式は武藤が上だが、実権は高木にある」との意味を持つ。
私は武藤敬司のことをよくは知らないが、何となく「自分の思いどおりの団体を作っていきたい」志向の強い人だとは思う。
それが(額面どおりに受け取るならば)藁人形のような無名人でなく、高木のような「著名人」に経営を委任したということは、そんな志向も衰えたことを意味するのだろうか。
それともいよいよ経営に嫌気が差したのか。(全日本時代からのことを考えると、無理もないと思われる)
はたまた自分の行うWRESTLE-1の経営に行き詰まりを感じたのか。
自分がリタイアした後のWRESTLE-1の存続を考えたのか。
……などなど、いろんな想像が浮かんでくる。
それにしても思うのは、
つくづく新日本は日本のプロレス界における別世界だということである。
IGFと諏訪魔の関係、WRESTLE-1とDDTの提携――新日本はそれらと全く関係なく、超然と存在し試合を重ねているように見える。
やはり新日本は唯一の超大国(メジャー団体)なのであり、あとは「その他の国々」(インディー団体)なのだろうか。その覇権を脅かすことはできるのだろうか。
そして、最もその可能性があるのがNOAHでも全日本でもなくDDTだということに、古株のプロレスファンは感慨を覚えずにいられないだろう。
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武藤には、この二人を切ることができなかったでしょうから。
高額ギャラのベテランを切って、経営改革の次の一手は何になるのでしょうか?