大日本プロレス5月5日・横浜文化体育館大会を、サムライTVの生中継で見た。
そのうちセミファイナルとメインイベントの感想を短く書く。
セミファイナルのストロングヘビー選手権は、王者・鈴木秀樹と挑戦者・関本大介が戦い、時間切れ引き分けで鈴木秀樹が王座防衛。
これは実に、関本大介のシングルマッチとは思えないほど静かな、そしてねちっこい試合展開であった。
もっとも、だから退屈だというのではなく――
メインイベントのデスマッチとちょうど好対照をなす、かなり見応えのあるものに感じた。
ところで関本大介というレスラー、私はこの人はパワーファイターでなく知的・哲学的レスラーの部類に属すると見えて仕方ない。
あのレスラーの中でもひときわ異彩を放つ凄まじい体形に“騙される” かもしれないが、本当は肉弾戦より理詰めの戦いが向いているのではないだろうか。
それは今回の試合で、鈴木秀樹とそんなに引けを取らない技術戦を展開したことでも余計そう見える。(鈴木秀樹が知的・哲学的レスラーの代表格だというのは、大方の人が認めるだろう。
二人とも、私生活ではどうだかわからないが……)
それにしても鈴木秀樹、試合終盤には急所打ちとグーパンチを敢えてやった。
それでも試合後の関本大介は鈴木にベルトを巻いてやり健闘を称え合うのだから、たぶん好漢と言っていいのだろう。
そして鈴木秀樹は、あんなことしても悪役レスラー分類されることはないのだから、なんと言っていいのかわからない…… さて、メインイベントのデスマッチヘビー級選手権、王者・竹田誠志と挑戦者・アブドーラ・小林は、竹田誠志が勝利して王座防衛。
戦前のVTRでは竹田がアブドーラ・小林を評して「全然動けてない。酷すぎる」と言っていたが、これには小林ファンでさえも同意せざるを得ないと思われる。
そりゃ、あの体型で動き回れるわけはなく――
むしろ竹田には「全然動けてない」と評される程度の動き方ができているということだけでも、逆に凄いと思うべきかもしれないくらいだ。 しかしそれでも、依然としてアブドーラ・小林は大日本デスマッチの二本柱の一人である。(もう一人は伊東竜二)
「信頼を失うのは一瞬」とはよく言われるが、ことプロレス界に限っては(いや、他の世界でもそうかもしれないが)いったん確立したイメージをファンの脳裏からなくすのは、なまなかなことではない。 そしてアブドーラ・小林、大日本デスマッチのエースであることを証明するかのように、この試合のっけから血だるまである。
むろん圧巻は、五寸釘をびっしり打ち込んだボードに、コーナーポストの上から雪崩式で落とされたこと。 いや、確かに……
たとえ釘でも密集して植えれば、かえって力が分散して体に突き刺さる危険性は軽減される。
そんなことは別に物理が得意でなくても(たぶん多数の観客も)わかるのだが、それでも「じゃあ自分もやれるだろう/やってみよう」などと思う人はほとんどいない。
試合後に竹田が「小林の受けの凄さは認める」と言っていたのも無理はない。
あんなことを受けられるのは、まさしくエースである。
……と書いてきて思うのだが、
アブドーラ・小林の立場は、つい前日の5月4日・新日本レスリングどんたくにおける棚橋弘至の立場と酷似しているのではないだろうか。
(⇒2018年5月4日記事:新日本どんたく2018短感①-オカダの棚橋記録超えと時間無制限三本勝負) 小林の決めゼリフ「愛してま~す!」が棚橋弘至のパクリだというのは言うまでもないが――
なんとなんと、本当にレスラーとしての立場が、棚橋に似てきているではないか。(してみると竹田誠志は、デスマッチ界のオカダ・カズチカなのだろうか。)
しかし、大変失礼な言い方になるが……
アブドーラ・小林という男、あの体型(と顔)で団体の象徴でありエースと見なされていた(いる)というのは、考えてみれば尋常なことではないのではないか。
この点もしかして、棚橋弘至をも上回っていないだろうか。 棚橋も小林も、今はもう落日期にあるかもしれない。
しかしまだ底力は残しているのを、奇しくも5月4日・5日と連続してファンに見せた。
この「イメージの牙城」を崩すのは、極めて難しいことになりそうだ――
と言うより、崩せないまま本人が引退する可能性がはるかに高そうである。
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