2月25日のDDT後楽園ホール大会を、サムライTVの生中継で見た。
しかし今回書くのは試合のことではなく、
今大会で初めて(?)行われた「インフォマーシャル・マッチ」という試みについてである。
インフォマーシャルマッチとは、企業の宣伝を絡めたオモシロ試合をやり、試合後にその企業の真面目な映像を流す、というものであった。
要するに、テレビのCMをプロレス会場の大型ビジョンで流すのである。
その企業はどこだったかというと、「ネットワンシステムズ株式会社」という会社。
不明ながら私はこの会社のことを知らず(雨後の竹の子のごとく、よくありそうな名前ではないか)、どこのITベンチャー企業だろうなんて思っていた。
しかしネットで調べてみると、ポッと出のアブクIT企業などとはとんでもない――
はるか太古の1988年に、あの天下の三菱商事の関与によって設立された、国内最大手の「ネットワークインテグレーター」(要するに、ITソリューション提供事業者なのだろう、たぶん……)なのである。
もちろん東証1部上場で、資本金は123億円に及ぼうかという、押しも押されぬ超・大企業だったのだ。
(会社法上は、資本金5億円以上なら「大会社」である。) いやぁ……
こんな文句の付けようがない大企業が、よりにもよって――と言っては失礼だが――プロレスの、しかもDDTのリングで、オモシロPRやCMを流す時代が来たのである。
いったいどうしてこんな大企業が、と思うのは当然だと思うが、やはりDDTの親会社であるサイバーエージェント繋がりなのだろうか?
(⇒ 2017年9月23日記事:DDT、サイバーエージェント傘下になる-これは21世紀のメガネスーパーなのか?) さてしかし、いったいITソリューション提供企業がDDTのリングで宣伝をして、はたして効果はあるのだろうか。
ネットワンシステムズ(株)は、大衆に物を販売している企業ではない。
ITソリューションなんていう、大衆市場とはほぼ無縁のものを企業に売っている会社である。
売店でフランクフルトを売るのとは、言うまでもなく全く違うのだ。 なんだかひどくミスマッチな、もっと言えば見当外れな場所で広告を打っているような気もするが……
しかしよく考えてみれば、それほどおかしなことではないかもしれない。
結局ITソリューションなんて、大衆向け物販とは桁違いに販売量(契約件数)は少なくて済む商売である。
ごく少数の人の心にその社名が、引っかかってくれればいいのである。
おそらく後楽園ホールの会場に来ていたDDTファン、DDTユニバースを見ているファン、サムライTVを見ているファンは、今回のインフォマーシャルでネットワンシステムズ株式会社という名前を覚えただろう。
しかも好感を持ってである。
現代のプロレスファンは、かつてのメガネスーパーに対するように、大企業がプロレスに絡んでくることに反発しない。
それどころか「ありがとう」「ありがたい」「おお、すごい」などと思うはずである。
そしてそう感じたファンが実社会では、ITソリューション導入や働き方改革に関わる部署で働いている/いずれ働くことになる、というのは、かなり可能性の高い話だ。
そうなったとき、彼や彼女の頭には、もちろんネットワンシステムズの名が浮かぶ。
いやそれどころか(違法にならない範囲で)引き立ててあげたい、ぜひ選定したいとすら思うはずである。
(少なくとも、入札や選考対象には入れたがるはずだ。) これは案外、的外れな話ではないのではないか。
そういう人が一人でもいてくれれば、一件でもそんな影響で契約が取れれば、DDTに払った(いや、払わなくて済んでるかもしれない)広告費なんて充分すぎるほどペイするのである。
おそらくこういう試みは、DDTだからこそできる業だろう。
いかに(カードゲーム会社の参加企業だという、超現実的な現実の中に生きる)新日本といえども、スポンサー企業の宣伝を組み込んだオモシロ試合をやれるとは思えない。
(できるとすれば、田口隆祐である。) そしてこれは、企業が他のスポーツ大会やスポーツチームに大金を投じてスポンサードし、その企業の広告をデカデカと張り付ける――
という「伝統的スポーツ広告」のやり方に、一石を投じるものでもある。
私もそうだしあなたも昔から思っていただろうが……
球場や会場の壁にデカデカと企業名が書いてあったからって、別に見る人はそんなもの気にしやしないのである。
野球やフィギュアスケートをどこの企業がスポンサードしてるかなんて、見る人にはどうでもいいし気にもしないことなのである。
いったいああいうのにどれほどの宣伝効果があるのか、もし数値化すれば(その企業の宣伝担当者にとって)恐ろしいことになるだろう――
と、あなたも一度は思ったことがあるのではないだろうか。
今回のネットワンシステムズとDDTの試みは、もしかしたら企業の宣伝広告の革命的な(非常に投資効率のよい)方式になるかもしれない。 さて、アメリカのWWEは、それ自体が大企業である。
対するに日本のプロレス団体は、それ自体が大企業になるなどほとんどあり得ず、トップ2の新日本とDDTはいずれも大企業の傘下となった。
このことは、日米プロレス団体の規模の差を、如実に表していると言える。
だがしかし、そんなこと嘆いてたって仕方がない。
企業もプロレス団体も(そして個人も)、今ある環境の中で生きていかなくてはならないのだ。
サイバーエージェント傘下となること、AbemaTVとの提携、元SMAPの飛び入り、Lilicoなど著名芸能人の投入……
と、DDTは次々とプロレス団体とは思えないほど企業的な動きを行なっている。
そしてたぶんこれこそが、21世紀のプロレス団体の姿なのだろう。
もしかしたら数年後の日本で最も有名なレスラーは、オカダ・カズチカなどではなく男色ディーノだ――
なんてことも、充分あり得る話である。
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