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官邸ドローン事件と個人テロリズムの時代 その6 テロ心理とその抑止

 しかしそれでも、テロリストとしてはやはり、水源地攻撃を試してみる価値はあるだろう。

 一度でも成功例を作れば、いや未遂に終わってさえ、それは社会に大きな脅威を与えられる。

 全国全ての水源地に警戒網を敷かなくてはならなくなり、そのコストは莫大にかかる。

 テロリストは社会を「奔命に疲れさせる」ことができる。

 それは爆弾で数十人数百人を殺傷するより、はるかに大きなダメージを社会へ与えることになる。



(もっとも、捨てる神あれば拾う神あり――ダメージを受ける者あれば、必ずや利益を受ける者もある。

 警備業界・監視カメラ製造業界などにとって、これは明らかに一大ビジネスチャンスである。)



 結局、こと攻撃の主導権に関しては、いつだってテロリストは鎮圧側より/社会より有利なのである。

 敵の上陸の恐れがあるからと言って、全ての海岸線に阻止陣地・要塞・砲台を築くことなどできはしない。

 放火の恐れがあるからと言って、全集落を全時間パトロールすることもできない。

 水源地テロの恐れがあるからと言って、全ての水源地を完全警備することもできない。

 そうしようとすること自体が大負担・大ダメージであり、それでもどこかに穴は生じる。

 テロ側は「しめしめ」と思い、その穴または別のターゲットを狙えばよいのだ。 


 
 また私は、テロリストが水源地攻撃をやらない理由は、その不確実性や「思うより難しい」点だけではないと思う。

 彼らも人の子であり、何かデカいことをやったら「自分がやった」と言いたがる心があるはずだ。

 匿名のまま社会を恐怖させるだけでは我慢できない、実名を示して注目を集めたい、ヒーローになりたいという願望があるはずである。

(そもそも自己顕示こそ、テロをやる主要目的の一つである)

 そしてやはり人の心として、劇的なことをやってみたい/すぐに効果が見えることをしたい、との願望もあるだろう。

 社会にコストをかけさせるなどというのは、(それが本当はいかに効果的であっても)迂遠であり、目にも見えないしインパクトも薄い。

 それならやっぱり、爆弾を破裂させたり要人を撃ち殺す方が派手である。やろうという士気も湧くのである。

 極悪非道なテロリストさえ、そういうのが「まっとうな」テロだと思っている。

 敵を病気で殺すなどということに、「こんなのテロじゃないやい」と感じてしまう。

 そういうことは邪道ではないか、してはいけないことなのではないかと思う。

 よってこれからも、テロの主流は爆弾と銃弾であり続ける――

 私はそう思っているのだが、どうだろうか。


  
 おそらく、テロを防止するのに最も効果があるのは、「人を殺すのは絶対悪である」との一種の宗教心を植え付けることだろう。

 「テロという暴力に暴力で対抗しても解決にならない、まず人の心を平和に導かねばならない」などと言えば、何かスピリチュアル系の空想平和主義的タワゴトに聞こえるかもしれない。

 しかし先にも言ったように、どうせパワーで全てを守ることなどできないのである。

 ドローン攻撃や細菌攻撃や放火を、物理的に抑止することはできないのであり、そうするには耐えがたいコストがかかるのである。

 そして実際、「人を殺してはいけない」「放火なんかするのは怖い」「細菌攻撃をするのはためらいを感じる」などの“人の心=雰囲気”は、ものすごく多くの犯罪・テロを未然に防止していると思う。

 もしこういう雰囲気が薄まれば、仮に武器が一切ない世界でも犯罪・テロは起きまくるであろう。

 「人の心にまず平和を」という言い方をバカにする人でも、「国を治めるには、まず人の心から治めよ」とでも中国古典風に言い換えれば、どこかしら納得するところがあるのではないか。 

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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