11月3日、横浜大さん橋ホールでの30周年記念大会&引退試合で、豊田真奈美(46歳)がついに引退した。
(⇒ デイリースポーツ2017年11月3日記事:さらば“飛翔天女”豊田真奈美50人掛け引退試合完走!「どこも痛くない体に戻りたい」) 興行自体が現役から全女OB(そして男子選手)までの「50人掛け」という異例な形式で、2度の休憩を挟んだものの4時間近くを一人で戦う、前代未聞の引退試合である。
最新の週刊プロレス11月15日号(No.1929)でも元タッグパートナーの山田敏代が言っていたように――
今の豊田の体の状態を考えれば、「本当は引退試合もやっちゃいけない」のかもしれない。
たぶん関係者も、本当に豊田がこれを完走できるのか、途中で本当に試合続行不可能になってしまい最悪の結末になってしまわないか、危惧するところもあったはずである。
しかし豊田は、これをやってのけた。
まさにやられてもやられても(平気なように)立ち上がってくる、“ゾンビ”の異名の面目躍如である。 そして最後の対戦相手に指名(時間無制限)したアイスリボンの藤本つかさとは――
初戦はジャパニーズオーシャンサイクロンスープレックスで勝利、
再戦はジャパニーズオーシャンクイーンビーボムで勝利、
再々戦でようやく藤本のジャパニーズオーシャンサイクロンスープレックスに敗れ、“介錯”された。
しかしちょっと思うのは――
藤本つかさ(34歳)、今まで50人と3時間以上も戦ってきたフラフラの46歳に二度も敗れるというのは、どうなんだろうということだ。(この大会、サムライTVでも放送してなかったので、見てはいないのだが……)
それはさておき、上記デイリースポーツ記事に載った「よっしゃ行くぞー!」ポーズの豊田の引退写真は、まさに女王の風格である。
これまで何度も、何人にも語られてきたことであるが、豊田真奈美は史上最高の女子プロレスラーとの呼び声が高い。
それも“日本プロレス史上”ではなく“世界プロレス史上”の、である。 あのAJスタイルズが最も好きなレスラーとして彼女を挙げたとか、WWEディーバたちからもリスペクトされているとか、そういう話は枚挙に暇がない。
そして1990年代の彼女の試合を見れば、その評価が決して過大ではないことを誰もが(非プロレスファンさえもが)納得するだろう。 確かに今まで存在した全ての女子プロレスラーの試合を見ることなどできないだろうが、それでも豊田は少なくとも最高ランクの一角にいるに違いない――
そう思わせる技と運動神経・体の柔軟さなのだ。
しかし、引退時のマイクでもそれ以前のインタビューとかでも本人が言っていたとおり――
近年の彼女の試合を見て“史上最高の女子レスラー”とか“天才”だとか感じる人は、正直誰もいなかったろう。 過去の豊田を、そしてプロレス史の知識がない人が見れば、他の女子レスラーとたいしてやってることが変わらない「ありふれた女子レスラー」の一人になってしまっていたのだ。
これは無理もないことで、確か数年前の雑誌(kamiproだったと思う)では、「物が二重に見える」状態でプロレスをやっていると言っていたのだから…… むしろそんな状態で、「体が痛すぎる」状態で、今までリングに上がっていたこと自体を賞賛すべきなのだろう。
(本当は、賞賛してはいけないのだろうが……)
豊田真奈美は、「自分がプロレスをするのは好きだが、人がプロレスをやるのを見るのはそんなに好きじゃない」タイプの人である。(自分がそう言っている)
引退しても、プロレスに積極的に関わることはないだろうとも言っている。
この点、3日前に7度目の引退を果たした(しかし次はレフェリーデビューすると言っている)大仁田厚とは、対極にあるレスラーと言える。 おそらく今後、プレゼンテーターとかトークバトルとか「全女AGEIN」以外には、もうリングに上がっている(コスチュームを着ている)豊田真奈美の姿を見ることはないだろう。
しかし豊田の驚異的な試合は、映像でこれからも見ることができる。
(本当に、映像とは偉大なものである。)
そしてプロレスが続く限り、また新たな「不世出の女子レスラー」が出てくることは充分に期待できるしそれが必然でもある。
これだけ女子プロレスの規模が縮小してもいまだ新人のデビューは続いているのだから、ある意味プロレス界とは「世話はない」世界なのかもしれない。 史上最高の女子プロレスラー(私もそう思っている)豊田真奈美に拍手を送るとともに、次の史上最高レスラーが自分の生きているうちに出てくることを、ぜひ期待したいものである。
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