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高山善廣「再起不能」の発表-鈴木みのるの涙と高田延彦の名

 9月4日、ついに高山善廣の病状が発表された。

 後楽園ホール展示会場で行われた会見に出席したのは、

 石原 真(高山のマネージャー)

 鈴木 みのる(有志代表)

 高木 三四郎(DDT社長。高山は5月4日のDDT大阪・豊中大会で負傷した)

 の3名。


 高山はICU(集中治療室)からHCU(準集中治療室)に移り、自分で呼吸できはするが、肩から下の感覚が戻っていない。

 結論として病名は頸髄(けいずい)完全損傷で、医師から「現状では、回復の見込みはない」と言われている。

 あの高山本人さえ絶望を口にしていたが、少しでも望みを持ってリハビリを行っているとのこと――


 正直、近年の高山のコンディションは、お世辞にも素晴らしいとは言えないものだった。

 見るからに腹は緩み、それほどトレーニングを行なっていないことは、素人にも明らかにわかるほどだった。

 しかしそれでも意外なのは、彼の大怪我(怪我と言うにはあまりに重大だが)の原因が、例の頭から落とす技を食らったとかエベレストジャーマンを失敗したとかでなく、「自分から回転エビ固めをかけるときに頭から落ちた」というものであることだ。

 まさかそんなことで全身麻痺になってしまうとは、つくづくプロレスとは恐ろしいものである。

 そしてまた、いかに高山の体にダメージが蓄積されていたか、今更ながら慄然たるものがある。



 高山善廣といえば誰もが思い出すのが「トップロープを一またぎ」の入場と、「プロレス界の帝王」という異名である。

 しかし何より有名なのは、あのドン・フライとの伝説的な殴り合いの試合だろう。

 2002年6月23日の総合格闘技大会『PRIDE21』(さいたまスーパーアリーナ)のメインイベント(!)、高山vsドン・フライは、PRIDE史上はおろか世界格闘技史上における一つの金字塔のような扱いを受けている。

 MMA技術なんてクソ喰らえと言わんばかりの拳の大打撃戦で高山の顔は無残に腫れ上がり、フライの軍門に降った。

 しかし、この日の大会の沈滞した雰囲気はこれで一気に吹き飛び、負けた高山は工業の救世主となるとともに一挙に「プロレス界の帝王」と呼ばれるようになった。

(この、負けたのに帝王と呼ばれるというところなど、まさにプロレスラーの真骨頂である。)

 以後高山は、「プロレス界の救世主」と呼ぶのは言い過ぎかもしれないが、それに近い活躍をあらゆるプロレス団体で見せるようになる。

 2000年代前半の日本マット界は、負けたことで大いなる“格”を手に入れた「高山善廣の時代」だったと言っていいほどかもしれない。

 その高山が「半身不随」(これでも非常にどぎつい言葉だが)以上の「全身麻痺」という形でプロレスラー人生にピリオドを打つ(さすがに、もうリング復帰は無理だろう)ことになろうとは、誰が予想しただろうか……

 やはり高山は、三沢光晴の死、小橋建太の引退を経て、自らももう少し早く引退すべきだったと悔やまれてならない。

 しかし「もうちょっと行ける」と思う気持ちは、人間なら誰しもわかる気持ちである。

 せめて首から下の感覚が戻り、車椅子生活だけでもできるようになれば、と願う。


 なお、病状発表会見に有志代表として出席した鈴木みのるは、日頃のキャラを捨てて涙ながらに「力を貸してください」と訴えた。

 そして近年、現役プロレスラーの口から絶えて聞くことのなかった人物の名まで出したという。



「命を懸けて闘った自分の親友です。

 今さらこんな『バカヤロー』って人のことをぶっ飛ばしている、

 こんなクソヤローが何を言っても皆さんに響かないと思いますが、

 俺なんかどうでもいいので、ぜひ高山善廣に、勇気をたくさんもらったと思うので、ぜひ皆さん力を貸してください。

 それと彼は言いませんが、UWFの大先輩の前田日明さん、彼の一番最初の師匠である高田延彦さん、力を貸してください。よろしくお願いします」




 前田日明はともかく、高田延彦――

 これほど「UWF本」が氾濫する昨今の中、元選手陣の中でただ一人、UWFについてのインタビューを一切受けない高田延彦。

 それはまるで、UWFが彼にとっては思い出したくない“黒歴史”であったかのようにさえ感じられる。


 実際、高田に面と向かって「UWF」と口にするのは、テレビ局員やテレビタレントにとっても禁断のタブーなのではないだろうか。

 しかも鈴木みのるは、よりによって前田日明と高田延彦の名を並べて(続けて)涙ながらに口にしている。

 前田と高田の因縁がプロレス界で最もリアルで深刻なもの(だろう)ということは、ちょっと前田のインタビューを読んだことのあるプロレスファンなら、誰でも知っていることだ。


 現役プロレスラー、しかも同じUWFに所属していた鈴木みのるらが、(個別の雑誌インタビューはともかくとして)こういう公の場で映像の残るところで二人の名を並べて出した――

 というのは、よほどの覚悟……というか、やむにやまれぬ心情があったのだと思わずにはいられない。

 
 ただ、果たして前田と高田に力を貸してくださいというのは、具体的にどういうことをして欲しいというのか――

 それはまだ、当の二人の動きを見てみないことにはわからない。



 
 なおDDTでは、高山を支援する「TAKAYAMANIA(タカヤマニア)」を立ち上げ、

●各団体に呼びかけ、各試合会場に募金箱の設置と応援グッズの販売

●高山プロデュースによるプロレス興行などを行う

 ことを併せて発表した。

 その収益は、全て高山の治療費に充てられるという。

(むろん生命維持装置に繋がれての治療には、毎日莫大な費用がかかるはずだ。

 加えて、おそらくプロレスラーなので、生命保険・入院保険にも入れてはいない。) 
 

 高山善廣は、「プロレス界の帝王」というのはもはや言い過ぎにしても、「プロレス界の(暗黒期を支えた)功労者」であったことは疑いない。

 募金の振込先は、次のとおりである。


【銀行振込】

東京三菱UFJ銀行 代々木上原支店

店番号  137

口座番号 普通預金0057767

口座名義 株式会社高山堂 カ)タカヤマドウ 


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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

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