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官邸ドローン事件と個人テロリズムの時代 その4 なぜ放火はもっと起こらないのか

 消防庁の統計を見ると、日本では2014年(平成26年)に43,632件の火災が起こっている。

 そのうち「放火」は4,825件、「放火の疑い」は3,132件。

 合わせて7,957件で火災原因の18%を占め、堂々のトップである。

 これだけ見れば、やはり放火は多いではないかと感じられる。

●平成26年における火災の概要(消防庁)
  http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h27/04/270413_houdou_1.pdf


 しかし一方警察庁の統計を見ると、2014年の刑法犯認知件数は1,212,163件。

 うち「凶悪犯」は6,453件であり、この中には「放火」が含まれる。
 (警察白書でいう「凶悪犯」とは、殺人・強盗・放火・強姦の罪を犯した者のこと)

●平成26年の刑法犯認知・検挙状況(警察庁)
  https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/h26_keihouhan.pdf


 そして「平成25年(2013年)の犯罪情勢」を見ると、「放火」の認知件数は1,090件。

 よって6,453件の凶悪犯中の約17%を占めることになるのだが、これは驚くべきことに強姦犯の1,410件よりも少ない。

●平成25年の犯罪情勢(警察庁)
  https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/h25hanzaizyousei.pdf
  ※「放火」「強姦」の件数は22ページ。


 消防庁では「放火」が4,825件(2014年)なのに、警察庁では1,090件(2013年)となっている理由はよくわからない。
 私が統計の読み方を知らないだけかもしれないが、こんなに食い違っているのはなぜだろう、そしてなぜ何の問題にもならないのだろうとは思う。

 もしかするとこれは縦割り行政の一例であり、消防庁には放火件数を大きくする動機があり(予算獲得のため)、警察庁には逆の動機がある(母数を減らして検挙率を上げる)ということなのだろうか?

 それはともかく、試みに消防庁の「放火+放火の疑い」7,957件を警察庁の「刑法犯認知件数」1,212,163件で割ってみると、たったの0.0065%である。
 
 
 私は、放火というのは、犯罪の中でもスキルも度胸もそんなにいらない部類に入ると思う。
 さらに言えば、リスクもかなり少ないと思う。
 放火のプロには怒られるかもしれないが、こんなに手軽に簡単にできる犯罪も珍しいと思う。
 それは、首相官邸にドローンを飛ばすよりずっとたやすい。
 思い立ったらすぐにでもできる。


 あなたは深夜、ペットボトルに灯油でも入れて家を出る。

 人通りは少なく、もし誰か自分を知っている人にでくわせば、今夜は中止すればいい。
 
 あなたは適当な家や建造物を見つけ、物陰で灯油をまく。

 人を殺す気がないのなら空き家でもよい。(当今、空き家はあちこちにある)

 ただ大火事を起こすのが目的なら、誰もいない山林でかまわない。

 灯油をまいたらライターで紙に火を付け下に落とす。そして立ち去る。

 たとえ木造でも建物へそう簡単に火は付かないかもしれないが、しかしやることは基本的にこれだけである。

 これは刃物で人を殺すことはおろか、窃盗より強姦より際だってイージーと言わねばならない。
(児戯に等しい、と言っては言い過ぎだろうか。)

 こう考えると本当になぜ、放火犯罪はこんなにも起こっていないのだろう。

 燃える炎に性的快感を覚える人(これもほぼ全員が男だろう)がけっこういるらしいことを思えば、ますますその感が強くなる。

 これはひょっとしたら、「世の中にそこまでの悪人は多くない」ことの証明なのかもしれない。

 詐欺師・ウソつき・意地悪人間・ひねくれ人間は多くいるとしても、みんなそこまでは邪悪でないのかもしれない。


 しかし私には、なぜ起こらないのか不思議に思う犯罪がもう一つある。

 私の知る限り、これが実行されニュースになったことはない。

 もしかすると、本当に全く起こっていないのではないかと思うほどである。

 それは放火と同じく刑法に規定する「犯罪」ではあるが、はるかに「テロ」の方に近い。

 放火と同じくらい簡単にでき、しかもリスクが低そうなのに、効果は抜群にあると思える。

 それは、「水源地への毒の投入」である。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙 表紙:『もうすぐ無人島になる瀬戸内の島へ』 ブログ販売欄掲載用

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