6月7日、
JASRAC(ジャスラック。一般社団法人日本音楽著作権協会)は、2018年1月1日以降に日本各地の音楽教室が(JASRACが著作権管理する)音楽を流す際及び演奏する際は、受講者数と受講料に応じた使用料を支払わなければならないという、使用料規定の改訂を文化庁に届け出た。
(これにより音楽教室は、年間受講料の2.5%を納入する必要があるという。)
これに対して音楽教室側は、ヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所などを中心に早速「音楽教育を守る会」を結成。
そしてこの6月20日、守る会会員である249の企業・団体が、JASRACには使用料請求権がない旨の確認を求める訴えを東京地裁に提起した。
反撃の迅速さもさることながら、ヤマハや河合楽器製作所という日本有数、いや世界有数の音楽企業が先頭に立っていることからも、これが日本音楽界を真っ二つに割る大戦争であることがわかる。(なんたって、「音楽教室」とくれば「ヤマハ音楽教室」としか思いつかないほどヤマハのフランチャイズ網は大規模である。)
さてこのニュースを聞いて、ほとんど全ての人は「そうだ、音楽教室がんばれ」「JASRACくたばれ」と思ったのではないか。
ついに“横暴極まる銭ゲバJASRAC”に立ち向かう大勢力が出てきたことに対し、快哉を叫びたい/溜飲が下がった気分ではないか。 近年のJASRACは、特にネット民にははなはだ評判が悪い。
「ジャスラック」と「カスラック」と言い換えることは定番であるし、ほとんど北朝鮮やイスラム国と並ぶほどの「悪の枢軸」組織扱いされている。
いったいJASRACに就職希望する若い人がいるのか、採用業務は破綻してるんじゃないのかと心配になるほどである。
(しかしおそらく、これは杞憂なのだろう――それでも就職希望者は求人数より多いのだろう。)
ここでプロレスファンならば、常々疑問に感じてきたことがあると思う。
それは、
「プロレスラーが入場するときテーマ曲を流すが、あれはJASRACに使用料を払ってるのだろうか」という疑問である。
断っておくと、私はこういうことに何の知識があるわけでもない。
しかし音楽教室で曲を演奏したり流したりすることにさえ使用料を課すならば、もちろんプロレス会場で流すときも使用料を課すべきである。
しかもプロレス会場で既存の(JASRACが著作権管理しているはずの)曲を流すというのは、もう何十年も前からあらゆるプロレス団体がやってきたことであり、世間の認知度も相当高いはずだ。
もちろんJASRACの人たちが、これを知らないはずがない。 しかし、では過去と現在において、JASRACはプロレス団体に対し使用料請求をしているのだろうか。
我々はそんな報道を聞いたことがあるだろうか?
プロレス団体が既存の曲を入場曲に使うことにつき、JASRACの許諾を取ったり使用料を払ったりしてはいないだろう――
業界最大手の新日本プロレスが運営する定額見放題ネットサービス「新日本プロレスワールド」を見ていると、そういう風に推測できる。
「ワールド」を見たことがあればすぐ気づくように、レスラー入場時に既存の曲がかかる場合、必ず他の著作権フリー音楽に差し替えられている。(というか、そうなるからこそ、元の曲は既存楽曲だったのだと初めてわかることもある。)
はっきり言って、あれが嫌で「ワールド」への加入を渋る人も多いのではないか。 新日本プロレスサイドもそれはわかっているはずだが、しかしいまだに曲の差し替えで対応しているということは、やはり使用料を払いたくないのである。
使用料を払えばユーザーの聞きたい既存楽曲を使える、そうすれば「ワールド」加入者が増える、しかしその増加利益は使用料支払い負担に及ばない、と判断されているのだろう。
業界最大手の新日本プロレスがそうなのだから、他団体は推して知るべし。
しかし一方、会場で流すこと自体はいいのだろうか。
新日本プロレスだってネット放送こそ曲の差し替えをやっているが、なぜかテレビでは地上波・衛星ともそのまま元の曲が流されている。
JASRACの人、あれはいいのだろうか。
ごく短い時間なら目をつぶる、ということだろうか。
しかし、では、つい最近までDDTの平田一喜(現・ヒラタコレクションAT)が踊りまくっていた「TOKYO GO!」はどうなのだろう。 平田一喜(あるいはDDT)があれを止めたのは、もしかしてJASRACの人がこっそり注意に来たからだろうか。
それはさすがに考えすぎの気がするのだが……
どうも、既存のJASRAC管理局をプロレス入場曲に使うに当たっては――
会場で流すのは良く、それをテレビで流すのも良く、しかしネットで流すのは許されない、という実態にあるようだ。 それがなぜなのかは、誰かがJASRACに聞いてみるべきなのかもしれない。
しかしそれは藪蛇で、今度こそJASRACが各プロレス団体に足を運び、使用料の支払いなく曲を流さないように注意・警告して回る――
これに対して各プロレス団体が集団訴訟を起こす、などという展開になってしまうのかもしれない。
- 関連記事
-
スポンサーサイト
コメントの投稿