ラジコンヘリに爆弾を積んで特攻させる。
銃火器を積んで攻撃に使う。
これらはたいていの男が考えつくことである。
では、なぜ、それが実現されないのだろうか。
なぜ世界各国の軍隊・警察で、そういう部隊が編成されたと聞かないのだろうか。
私は軍事評論家でも兵器アナリストでも何でもないが、以下、思いつくままにその理由を挙げてみよう。
(1)搭載兵器が極めて限られる ラジコンヘリもドローンも小型軽量である。むしろそうでなくては意味がない。
だから重い兵器は積むことができない。一般的なライフル銃でさえかなりの重量オーバーになるだろう。
(今回の官邸ドローン事件では、搭載兵器は「砂」だった)
もし大型化してそれをクリアしようとするなら、もはやラジコンヘリやドローンとは呼べないものになってしまう。
それは本物の攻撃ヘリや無人攻撃機なのであり、ドローンにその代替をさせるには、無駄に高額な開発費が必要になる。
それだったら本物の入手に努めた方がよい。
(2)「反動」の問題 これも小型軽量であることに関係する。
銃を撃つと反動が生じるが、それは火薬を使う武器(つまりほとんど全部の現代兵器だ)の宿命である。
ラジコンヘリもドローンも、一発撃てばたちまち飛行体勢を崩してしまうに違いない。
たぶん(1)と(2)は、反重力推進装置とか小型レーザー砲とかが実用化されない限りクリアできないのではないだろうか。
(3)爆風ですぐよろめく これまた、小型軽量だからである。
本物の戦場ではいくつもの爆風が生じる。
たとえ飛び散る無数の破片に当たらなかったとしても、爆風を食らっただけで体勢・軌道は崩れてしまう。
むろん、これをクリアするには高空を飛べばよい。
しかし、低空を飛んでこそのラジコンヘリでありドローンである。
高空を飛ばせたいなら普通の飛行機を使うべきなのだ。
特に今のドローンは、単なる強風でも飛行不能に陥ってしまう。
(4)スピードが遅い。よって簡単に射的の的になる 小型軽量なのにはもちろん利点もある。
それが、なかなか弾を当てにくいという点である。
しかしそれも、あまりのスピードの遅さに相殺されてしまうと思う。
私は戦争でも格闘技でも、スピードが最も重要な要素だと思っている。
もし動作がのろいなら、たとえ防御力が高くても――必殺の武器を持っていても、ただのナイフを持った素早い敵に切り刻まれて死ぬはずである。 ドローンは低空を飛ぶ。そして遅い。
ラジコンヘリはそれよりはマシだろうが、やはり鈍足である。
むろん敵の銃砲の射程外を飛べばよいのだが、(3)でも言ったとおり敵の射程内を飛んでこそ意味があるのである。(偵察用は除くが)
「戦場に悠然と浮かぶ大型ドローン」というのは、確かにSF映画のUFOのような魅力がある。
しかし現実には、射的の的になるだけだろう。 また特攻ラジコンヘリを使うくらいなら、丘の上とかビルの中など高所からロケット砲を打ち込んだ方がよいだろう。
(5)近距離で操作しなければならない これが一番の問題である。
無線操縦とはいえ、操縦者はヘリ/ドローンのすぐ近くにいなければならない。
それは同時に、標的のすぐ近くにいなければならないことを意味する。 そんなことができるのだったら、やはり普通に銃火器で攻撃した方が早い。
ビルの一室からライフル銃を構えて撃つのと、危険度はそんなに変わらないだろう。
しかも今回の官邸ドローン事件では、官邸のごく近く(直線距離で200m程度)の駐車場から操縦してさえ電波ロストに陥っている。
こんなにも信頼性がなくては、とても戦場で使いものになりそうにない。
複数機を使用するとすれば、混信の問題だって生じるはずだ。
どうせ標的のすぐ近くに操縦者が行かなくてはならないなら、組み立て式のバズーカとか手榴弾+投擲器のセットでも持たせた方が賢明ではないか。


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別に今回は「ドローンにケチを付ける記事」を書く気はなかったのだが、結果的にはそうなってしまった。
しかしやはりこう考えていくと、軍隊において「ラジコンヘリ特攻隊」や「ドローン攻撃隊」を編成しようとする建言は、確かに軍人生命を賭けたものになりそうである。
そういうものが現実にないということは、軍人の保守性に由来するのではなく、やはり実効性に欠けているからということになるのだろう。
そして私も、攻撃兵器/テロ兵器としてのドローンは、そんなに将来性があるものだとは思っていない。
思うに戦場の未来は、ドローンに代表される低空にではなく地べたにある。 宙に浮かぶ兵器より地面を這いずる兵器の方が、はるかに効果的であり敵に脅威を与え得ると思う。
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