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旧ノア破産、田上明はどうなるのか?

 帝国データバンクによると、旧(株)プロレスリング・ノアであった「(株)ピーアールエヌ」(代表:田上明)が、2月1日付けで東京地裁から破産手続開始決定を受けた。

(話がややこしくなるので、以下「(株)ピーアールエヌ」は「旧ノア」と表記する。

 周知のとおり、旧ノアは昨年11月にエストビー(株)にプロレス事業を事業譲渡し、エストビー(株)は11月7日付けで「ノア・グローバルエンタテインメント(株)」(会長:内田雅之)に社名変更してプロレス興行を続行している。

(以下、「ノア・グローバルエンタテインメント(株)」は「現ノア」と表記する。


 まさにこうなる(旧ノアが破産する)ことが事業譲渡の目的だったのだから、このニュースは全く驚くに当たらない。当然の既定路線である。

 なおこれを受け、旧・現ノアのトップレスラーである丸藤正道、及び現ノアの会長である内田雅之氏は、次のようにコメントしている。


***********************************************

【丸藤正道】(しらべぇ編集部の記事から転載)

 何かが始まるときは何かが終わるとき。終わると言っても全て『終わり』では無いんだ。

 人として一番大事な部分、偉大な先輩たちの『意思』は俺達は引き継いでいる。

 誰が何と言おうとそれは俺たちにしかわからないものもある。

 新たなるステージへのステップアップだと思ってほしい。

 こういう時に憶測や噂で何かを断言するのが一番良くないしかっこよくない。

 数ヵ月前にも言ったが俺たちは『前しか見てない』『やらぬ後悔よりやる後悔』まだまだ足りぬところだらけだろう。

 でも足りないってことはこれから伸びる『可能性』を秘めてるってこと。ピンチや逆境など現場やリングにいる人間が一番わかってる。

 そして今わかってることは『ノアは進化する』見ていてくれ。

 俺が好きな言葉 『難が無いのは無難な人生 難が有るのは有り難い人生』。


【内田雅之】(東スポ記事による)

 昨年11月1日付で事業を譲渡してもらって、継承しているので(現体制に)全く影響ないです。

 先人が作った意志は引き継いでいるつもり。プロレスについては今後も期待していただきたい。

 今は歩みの途中なので、目指してきた道をひたすら進んでいくだけだと思っています。

 (旧ノアで代表を務めている田上明について)

 公的に破産管財人がついて清算していくというキチッとした責任の取り方を前任の社長(田上)がなされているので、経営者として立派な対応だと思います。 


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 さて、プロレスファンが最も気になる点は、いったい田上明はどうなってしまうのかということだろう。

 そしてもう一つ――

 NOAHというプロレス団体は超過債務を旧ノアに残し、プロレス事業を現ノアが引き継ぐ形で(負債なしで)興業を継続する選択をしたわけだが……

 こんなことがまかり通るならNOAHに対する債権者は踏んだり蹴ったりではないか、これなら世の中の会社はいくらでも延命できるではないか、という疑問も湧いてくるはずだ。

 私はむろんNOAHの内情に詳しいわけでも何でもないが、以上2点について想像できるだけ考えてみる。


 まず旧ノアという会社が破産したからといって、代表(社長)の田上明も自動的に破産したり身ぐるみ剥がされるわけではない。

 会社の破産手続はあくまで会社の財産を清算し債権者に分配するのであって、社長といえどもその個人財産を清算させられることにはならない。

 しかし社会人なら大半の人が知っているように――

 世の中小企業の社長さんのほとんどは、自分の経営する会社の債務につき、社長個人として連帯保証しているものだ。

 もちろん旧ノアは(現ノアもだが)中小企業に他ならないので、社長の田上明も自己所有の居宅と敷地、そしてもし所有しているのであればその他の所有不動産(親から相続した実家の土地建物など)も担保に入れているだろう。(具体的には、抵当権を設定している。)

 よって(連帯保証なので)会社が破産しようがしまいが、債権者は旧ノアに対する債権を直接に田上明に請求できる。払わなければ抵当権も実行できる。

 しかし、とはいえ――

 おそらく旧ノアの債務について田上明が連帯保証していたのは、銀行に対する債務のみのような気がする。

 おそらく旧ノアの末期にもなると銀行から借り入れすることはできず(旧ノアの返済能力に疑問がありまくるため)、ノンバンクあたりから無担保融資(すなわち高い利子付き)を受けていたのではないかと思われる。

 興業の売り上げを担保に借り入れていた可能性もないではないが、それについてまで田上明は連帯保証していないだろう。(あくまで推測である。)

 はたして旧ノアに銀行からの借り入れ未返済額がどれほどあるのか知るよしもないが、その金額次第では、田上明が身ぐるみ剥がされるまでには至らないかもしれない。


 
 さて次に、破産手続開始直前に「プロレス事業」を新会社に譲渡して興業を継続するというのは、許されるのかどうか。

 確かに破産管財人には、「否認権」というものがある。

 破産会社が破産直前にその財産を「不相応な安価で譲り渡す」など、債権者に分配するための財産を散逸させる行為については、破産手続開始後になって(遡って)その行為を否認する――財産を管財人に取り戻す権利がある。

 旧ノアの財産と言えば、むろんプロレス事業そのものである。(旧ノアはこれだけで収益を上げていたのだから。)

 よって、破産するのを見越してその前にプロレス事業を新会社に譲渡するというのは、モロに否認権の行使を喰らいそうだ。

(念のために言うと、破産管財人は破産会社の味方ではない。あくまで公平中立に、破産会社の財産を債権者らに分配するのが仕事である。)
 

 ただ――

 破産会社の従業員(ここではフロント組)が(破産前に)新会社に移ることについては、否認権は行使できない。(転職するのは個人の自由だから)

 ましてレスラーは従業員ではなく個人事業主なのだから、破産会社との契約を打ち切って新会社と契約するのは当然に自由である。

(そう、「所属」とか「入団」とかいうのは、選手という個人事業主がプロレス興行会社と契約したことを俗にそう言い慣わしているのだ。)


 強いて言えば、旧ノアの所有していたリング・トレーニング器具・巡業バスを現ノアに譲渡することについては、否認権が行使できるだろう。

 ただ実際には、そんなことについてまで否認権の行使はなされないと思われる。

 そこはそれ、何らかの形で話は付いていると感じられる。(もっと言えば、旧ノアの債権者の面々とも、何らかの話は付いているのかもしれない。)


 結論として、旧ノアの債務を事実上帳消しにして(旧ノアの財産なんて、ほとんど無いも同然だろう)、現ノアがそれとは無関係にプロレス事業を続けることは可能なのだ。

 世の中には、そういう「ホントにそんなことできるのか」と思いたくなるような話もあるのである。

 ただもちろん、今の新ノアの“債務者としての”信用はゼロに等しい。(リング上の試合のクオリティは、これとは全く別の話。)
 
 旧ノアにカネを貸していた人も、さすがにもう新ノアにカネを貸すことはないだろう。

 現ノアの集客力は残念ながらいまだ満足なものに至っていないようなので、あえて資金を投じてくれる人を見つけるのは非常に難しいはずだ。

 正直このままでは、また何年か後に同じような事業譲渡が繰り返されるのではないか――

 そう感じるプロレスファンも、きっと多いことだろう。


 ここでまた最初の点に戻るのだが、やはり気になるのは田上明のことである。

 私としては、さすがに田上明ひとりだけが連帯保証で身ぐるみ剥がされ無一文になる――

 などということには、周りがさせないと思っている。


 もしそんなことになろうものなら、それこそ田上火山大爆発の時だろう。

 しかし、仮に田上明が「いや、オレ一人が自己破産すればそれでいい。それでオマエらがNOAHを存続させてくれるなら……」と覚悟を決めているのだとしたら、

(経営者として当然だという意見もあろうが)冗談抜きで敬意を表すべき態度である。

(⇒ 2015年6月16日記事:レスラー短感02 田上明・NOAH社長の元気のなさは異常ではないか?)

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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