Entries

レスラー短感04-3 丸藤正道のチョップ、トラースキック、ガンダムのエルメス及びビットについて

 NOAHの象徴ないしノア藩筆頭家老という立場を離れ、レスラーとしての丸藤正道を見てみよう。

 何と言っても特筆しなくては済まないのは、彼が最近アッという間に日本有数のチョップの使い手に変貌を遂げたことである。

 私も彼を常にウォッチしているわけではないので、いつからあの「しなりを加えた(スナップを効かせた)チョップ」を使い始めたのか判然としない。

 しかしつい1年前、彼が日本マット界を代表するチョップの名手に数えられるようになろうとは、誰が予想しただろう。

 これは私見では、中邑真輔が「イヤァオ」「クネクネ」「のけぞり滾り」をやり始めたことには及ばないにせよ、最近の日本人レスラーにおいては驚くほど顕著な変貌を遂げた一例である。

(中邑のあの変貌を超える変貌というのは、非常に珍しくしか生じないものだと思う。)



 しかもそれが、ありふれていると言えばありふれている「キャラチェンジ」の類ではなく「技」だという点が、いかにもNOAHらしいと言えばNOAHらしい。

(旧全日本プロレス系らしい、という意味である。)



 同時代で類似の例を探せば大日本の神谷英慶のバックドロップが思い当たるが、しかし観客に「変貌のインパクト」を与えることの難しさで言えば、チョップの方がより難しいのではなかろうか。

 しかしこの「丸藤のチョップ」という新得意技・新名物技、ちょっと気になるのは、NOAHに復帰した潮崎豪のそれと完全にかぶっていることである。

 なるほどチョップとは、言わば「誰でも使う技」であり、同じ団体の中に使い手が複数かぶっていても特に見苦しく感じることはないにしても――

 正直潮崎がどう思っているのか、内心の声を聞いてみたいものである。

 もっとも、あの「小橋建太vs佐々木健介」の東京ドーム大チョップ合戦(2005年7月18日)があまりに伝説化していることもあり、「NOAHと言えばチョップ合戦」とのイメージを持っている人もいまだに多いと思う。(あるいは、懐かしむ人が多いと思う。)

 もしかすると丸藤が自分の得意技にチョップを加えたのは、自らの「しなりチョップ」と潮崎の「剛腕チョップ」をNOAHの新たな呼び物にしようという深謀遠慮から発したものかもしれない――

 などと、邪推を巡らせたくもなる。

 
 さて、もう一つ丸藤の得意技と言えば、むろんトラースキックである。

 ここで個人的な感想を言うと、別に丸藤個人に限ったことではなく、現代の日本プロレス界はトラースキックの極盛期に当たる。

 いったいあなたは最近、トラースキックの使われないプロレス興行を、いや試合を見たことがあるだろうか?

 今のプロレスの試合は、トラースキック抜きでは全く成り立たない。(それなしでは試合を構築できないレスラーもいるのではないか、とも思う。)

 まさに、トラースキックなしでは夜も明けぬといった時代のように感じられる。


 しかし丸藤は、昔からトラースキックを得意技にしてきた。

 加えて最近毎試合使い出したのは、「相手の背後に自分も背を向けた状態で後ろ向きにトラースキックを放ち、足首をクイッと曲げて相手の顔面に足裏をヒットさせる」タイプであるのは周知のとおり――

 これはまさに、よく彼について言われる「変幻自在、どこから飛んでくるかわからないトラースキック」をこの上なくビジュアル化した蹴り方と言える。

 そしてこの技について私が連想するのは、初代ガンダムに出てきたエルメス及びビットである。


2016.08.23エルメスのビット
エルメス(奥の1機)・ビット(手前3個)




 知っている人には釈迦に説法だが、ビットは遠隔操作のレーザー発射装置、エルメスはそのコントロール母機である。

 複数のビットが機動してあらゆる方向からレーザーを発射する様は、まさに「変幻自在、どこから(レーザーが)飛んでくるかわからない」という表現がふさわしい。

(ウィキペディアの「エルメス(ガンダムシリーズ)」の項にも、「予期せぬ方向からの攻撃が可能である」と書いてある。)


 丸藤の「後ろから相手の顔面にトラースキック」は、「プロレス界のエルメス/ビット」と呼ぶに値すると思う。

 なおこれもプロレスファンには周知のとおり、丸藤の元同僚(元NOAH)でガンダム好きの鈴木鼓太郎は、そのままズバリ「ビット」という技を使っている。

 しかしこれは一般的な「ハンドスプリングエルボー」の彼固有の技名であり、「ビット」という言葉のイメージからして、丸藤のトラースキックの方がはるかにビットらしいと私には思える。



 ところで、チョップもトラースキックも、誰でも使う(あるいは使える)技である。

 そして飛翔系レスラーが加齢と身体能力の低下というどうしようもない現実に直面するとき、地上戦にシフトチェンジを考えるに当たり、真っ先に頭に浮かびそうな技でもある。


 たぶん、「俺もチョップでレスラー人生を延命しよう/歓声技にしてやろう」と考えるレスラーは、ひそかに数が多いと思う。

 しかしながらそれゆえにこそ、そんなことを実現するのは非常に難しい。

 誰でもやれる技をやって人と差を付け、「これは並のものとは違う」と観客に思わせ、しかもたまにやる単発でなく継続してフェイバリットホールドにしていく……

 こんなこと自体が至難の業(わざ)、難度A級の技と言うべきだろう。

 それをいつの間にかすんなりと成し遂げたのだから、丸藤がやたら「天才」と呼ばれるのも業界の慣例とばかりは言えない。


 ちょっと大それた対比になってしまうのだが、丸藤の立場とレスラーとしての力量をトータルで考えると、彼は『三国志演義』の中の蜀の諸葛亮孔明に相当するのではないだろうか。

 蜀という国(NOAHという所属団体)は弱体だが、天才軍師で丞相(副社長)でもある彼は、(他のNOAHの選手には悪いが)孤軍奮闘の状態にある。

 しかしむろん蜀とNOAHが違うのは、蜀は魏(新日本)とマジ対立していたが、NOAHは新日本の従属国であることだ。

 従属国の元首代行とも言える丸藤が、この先どんな立場・どんなレスラーとして活動していくのか――


 興味が尽きないのは、私だけではないだろう。

このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://tairanaritoshi.blog.fc2.com/tb.php/312-65a57dd7

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

FC2ランキング

FC2オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

FC2アクセスカウンター

日本ブログ村・人気ブログランキング アクセスランキング

ツイッターウィジェット

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR