小島聡が天山広吉にG1出場権を譲り渡し、新日本もそれを認め、正式に小島を外し天山をエントリーし直した。 このことは、ネット上で不評を巻き起こしている。
新日本のオーナーである木谷会長もファンの「こんなんでいいんですか?」との質問に答え、「いいわけないでしょう。G1出場権は個人の所有物じゃない」とツイッターに書き込んでいる。
しかし、それでもなお「これも全てアングル(シナリオ)じゃないか」と疑ってしまうのが、プロレスファンの(悲しい?)サガである。 ただ、もし、これが事実――小島が自分だけの意志で天山に出場権を譲り、天山も独断で受け、新日本はそれを追認したのだとしよう。
だとすれば、これは次のことを意味するはずだ。
(1) この時代でも、そして最大手の新日本でも、プロレスラーは会社を通さず独断で事を進めることがある。しかもそれが通用する。 プロレス界は、今なお一般世間の「サラリーマン-会社」関係とは決定的に異なる。
(2) 新日本でさえ、最高経営権者(木谷オーナー)と現場は分離している。 もっとも、何から何まで木谷オーナーの決裁を受ける仕組みには初めからなっていないだろうが……
(木谷オーナーにとって新日本は、自分の手がける複数の事業のうちの1セクションである。)
このことは、却ってプロレスファンに夢を与えるものとも言えないだろうか? プロレスラーはサラリーマンじゃない、とはよく言われることである。
そしてファンも、プロレスラーやプロレス界がそうあってくれることを望んでいると思える。
レスラーが・現場が、何事もオーナーの意向に沿って動く――
これはこれでプロレスファンは、「そんなんでいいんですか」と感じるのではないかと思う。 私が今回の件で反射的に連想したのは、漫画『キン肉マン』屈指の名シーン――
“夢の超人タッグトーナメント”開幕前、スペシャルマン&カナディアンマン組が、乱入してきたアシュラマン&サンシャイン組(はぐれ悪魔コンビ)に、
「弱小チームはご退場願おうか。ねぇスペシャルマンさんにカナディアンマンさん?」「な、なにぃぃー!?」
とのやりとりの後アッサリやられ、はぐれ悪魔コンビが出場権を奪取した(ハラボテ委員長もそれを認めた)あのシーンである。 これも無茶な話なのであるが、やはりスペシャルマン&カナディアンマン組よりは、アシュラマン&サンシャイン組の方が話が面白くなったと思うし、実際そうなったとも思う。
むろん「スペシャルマン&カナディアンマン=小島聡」「アシュラマン&サンシャイン=天山広吉」と言いたいわけではなく、あくまで連想しただけである。
さて最近、
新日本は株式上場を目指していると、木谷オーナーがインタビューで答えたことがある。
(⇒ 東洋経済オンライン 2016年5月16日記事:新日本プロレスはなぜ一部上場を目指すのか V字回復を遂げた「企業」の新たな挑戦) このたびの「出場権譲渡事件」は、今度ばかりはテンコジの絆に感動する人より、新日本のやり方に失望した人を多く産み出した観がある。
新日本は「株を下げた」と言えるかもしれないが、株式上場すればそれが文字通りの意味を持つことになりかねないのだ。 オーナーと現場が一体でない。
所属タレント(プロレスラー)は勝手なことをやり、現場をそれを追認する。
これは大げさに言えば昔の関東軍であり、今で言えば内部統制の欠如であると捉えられないこともない。 となると新日本は株価を気にして、今回のようなことは許さなくなるのだろうか。
棚橋弘至が引退したら、オカダ・カズチカが退団したら、株価は激落するのだろうか。 プロレス会社が株式上場することの意味については、時間があったらもっと詳しく書きたいと思っているが――
いずれにせよ、天山が出場権を得たからと言って天山が優勝するとは誰も(天山ファンさえも)思っていないのが現実だろう。
いや、しかし、それでも万一天山が優勝したら、新日本の株は上がるのだろうか下がるのだろうか? 今回の件で、そんなことを思ってみた。
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もちろんG1のためです。
今年のG1は、フレッシュな顔ぶれになったので(レベルの低下も否めませんが)、とても期待しています。
私としては、ノアの丸藤正道、中嶋勝彦がらみの試合カードにとても興味があります。
特に丸藤VSオカダカズチカですね。
ノア勢の参加は、興行面での強化のためとは思いますが、それでもこうやって、私のような者でも「観たい」と思わせて、「新日本プロレスワールド」に入会させるのですから、ある程度の効果は見込めると思います。
さて今年のG1。
天山の件だけは、いただけないですね。
このくだらないブックを書いたのは誰だ?と、問い詰めたいです。
どうせ出場するなら、最初から出場メンバーに入れておけばよかったのにと思います。
来年以降は、G1の権威付けのためにも、G1出場予選トーナメントの開催も、検討して欲しいです。