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週刊プロレスの若手育成論に異議 その5 プロレスはやっぱり社会の反映・縮図か?

 だいたい「新人の使える技をあえて制限する」、「新人にはあえてガマンの時を過ごさせる」というのは、

 プロレスラーがそんな統制・方針の下にあるいわば“役者”であり、プロレスはそういうことが行なわれている“作り物”の戦いである、ということを如実に示すものであるはずだ。


 世間の一般人がこのことを聞けば、「なんだ、戦いなんて言ったって、やっぱり“作って”るんじゃないか」と思うのは自然であり必然である。

 しかし週刊プロレスと多くのプロレスラー・プロレスファンは、このことを肯定するばかりか推奨してもいる。

 逆に、「新人をデビューそこそこでトップ戦線に食い込ませる」ということについても――

「新人にチャンスを与える」のはともかく、「あえてトップに持っていく」というのは、やはりプロレスが“作り物”であることになる。



 しかし別の見方をすれば、それだからこそプロレスは、我々の大多数が暮らす一般社会や会社生活に最も近いスポーツ(ないし疑似スポーツ)だとも言える。

 プロレスが人生及び社会の投影・縮図であるということは、これまで何度も言われてきた。

 長州力の藤波辰彌に対する「オレはオマエの噛ませ犬じゃない!」との叫びが、会社生活に抑圧されたサラリーマンの代弁だった――だから長州が圧倒的な支持を集めたのだ、というような文章も、読書系プロレスファンなら何度も読んだことがあろう。   

 はっきり言って、他のプロスポーツ選手――

 ゴルフ界の石川遼とか、大相撲力士とか、プロバスケ・プロサッカー選手だとか、総合格闘家だとかが、

 我々の人生や会社生活や社内政治や人事方針の参考になる点は、ほとんど何もないだろう。


 しかし、プロレス界は違う。

 多産多死戦略を採るか、少産少死戦略を採るか。

 若手・新人をどう抜擢すべきか、いつまで下積みをさせるべきか。

 いや、下積みなんて必要なのか?

 そんな期間が長いとわかっているのなら、自分の能力をいきなりは発揮させられないとわかっていれば、新人自体が入ってこなくなるのではないか?

 「下積みが長くても、いつか“先輩”として上に上がれるから/長く勤められるならそれでいいや」と思う人間ばかり入ってくるのではないか?

 ――ことほど左様に、一般社会とプロレス界は同じ課題を持っている。



 そして我々は(企業の人間は)、「ウチにも石川遼クンみたいな新人が入ってきてくれれば」「そこまでは言わないが、優秀な新人が入ってきてくれれば」と素朴に願う。
  
 しかもそれは、その石川遼や“優秀な新人”が、ずっと自分の下にいるという大前提があってのことなのだ。


 これは非常に笑うべき滑稽なことのように感じられるが、多くの人の心の中で実際に起こっていることである。

 もしかすると、我々の暮らす一般社会というのは、プロレス界以上にフェイクな“作り物”なのではないか――そう思わずにいられなくならないだろうか?


 何と言ってもプロレス界なら、若い後輩が自分を抜いてチャンピオンになることなど日常茶飯事なのだから。

 いくら若手の“溜め”が肯定されていようと、そういうことは間違いなくどの団体でも起こっていることなのだから。


 最後に改めて書くが、この記事は週プロの佐藤編集長の言葉尻を捕まえて論難しようというものではない。

 ただしかし、今のプロレス界は佐藤編集長の主張とは裏腹に――

 若手の“溜め”が少ない団体こそ発展しているのではないか、そういう環境にあるのではないか、ということは強く指摘しておきたい。


 そしてまた、何度も“溜め”が長いことの例に使わせてもらったNOAHの熊野準には、ぜひともこれからの躍進を期待したい。

 こんな記事を書いていても、やはり私にも、下積みの長かった人を応援したい気持ちは確かにあるからである。

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コメント

[C63]

こんにちは

こんにちは
現在のプロレス業界がかかえる問題ですね。

ただし、DDTにしろ大日にしろあるいはドラゲーにしろ、
HARASHIMA 伊東関本 CIMAといったベテランが依然として団体の顔として君臨してチームドリフやミレニアムズといった溜めがすくない選手が
現状団体の期待ほどは伸びていないという問題は指摘しておくべきでしょう。

鷹木ハルクYAMATO世代も上に引き上げられた時期と真の意味で主役になった時期はだいぶずれており、メインに使われるとトップになるはすこし分けて考えたほうがよいのではと考えます。

一連のエントリーに新日が出てこないのはどうかとも思ったのですが、新日が他の団体と違うのは海外遠征というわかりやすいイベントが存在することですね。EVILはキャリア5年でメインイベンターの一員となっていますが、海外遠征前の下積み時代のことは、ファンの思い入れ以外は一切リセットされています。

他団体は国内他団体に出ることはありますが、テレビ中継もない中でわかりやすく成長を見せることが難しいため、最初に一番下に置くと上に行くまでの速度が遅くなり、他団体の同世代より下に置かれることでその後の伸び代まで狭まってしまう状況になってしまっています。

ヤングライオン時代は前座で抑圧されていても海外遠征というファンの目に触れない状態をつくることで明らかに変わったというエクスキューズと第一試合からメインまでの一歩ずつ上がる階段をすっ飛ばすことができ、叩き上げ感と若手の引き上げを両立することができます。

その意味で棚橋と中邑は、海外遠征というイニシエーションを経ることなく一気に上にいったことで当時はファンの支持を得ることができず苦労したように思えます。

しかし、現代になって海外の様子がリアルタイムでわかるようになるとそれも変わっていくことでしょう
  • 2016-05-25 01:40
  • アンコモン
  • URL
  • 編集

[C66] Re: タイトルなし

アンチモン 様

 返信が遅くなりすみません。長文のコメントを寄せてくださり、ありがとうございました。
 この件、こちらももっと長文で掘り下げて書きたいのですが、なかなか書くことに集中できる時間が作れません。
(いずれ書くつもりではありますが。)

 ただご指摘のように、新日本プロレスには若手の海外遠征(海外修行)というものが制度的に存在する、というのは非常に大きな長所だと思います。
 こういうことができている団体は新日本だけであるという事実は、やはり新日本が日本ではぶっちぎりのプロレス団体であるとの裏付けにもなっているでしょうか?
 そしていくらネット時代になっても、EVIL(渡辺高章)のアメリカでの試合をネットで見ようとした日本のプロレスファンというのは、なかなか少なかったのではないかと思います。
 海外に出た若手選手(ヤングライオン)は、日本のプロレスファンにとっては意識の外に出てしまう――
 見ようと思えば検索して見れるのに、そもそも見ようと思わない面があるのかもしれません。
 しかしそれは、逆に「帰ってきたときのサプライズ感」に繋がり、だからこそ今でも海外長期遠征に出す効用はかなりあるものと感じます。
 私としては、「道場がない⇒団体内での下積みがない」という外国人レスラーがどうやってメインイベンターに上がっていくのか、そのグローバルスタンダードな過程に興味を持っているのですが。
  • 2016-06-04 21:33
  • 平 成敏
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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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