Entries

プロレスと「差別」その10 カミングアウト論Ⅰ-WWEの告白と建前

 プロレスとは、あらかじめ結末の決まったショーなのです。決して本当に勝敗を争っているわけではありません。

 それを最初から告白しておくべきだというのがカミングアウト論である。
 プロレスの試合は本当は「試合」ではない、しかし試合という劇のショーを見てくれ、その内容とクオリティを楽しんでくれというものである。

 これを実行し、しかも成功したとされているのが、アメリカ最大(世界最大)のプロレス団体であるWWE(ワールド・レスリング・エンタテイメント)なのは言うまでもない。
 また、日本での最も有名な唱道者がミスター高橋(元・新日本プロレスレフェリー。プロレスは結末の決まったショーであるとの暴露本を書いた)であるのも、プロレスファンには周知の事実である。

20150419ミスター高橋『流血の魔術 最強の演技』(講談社 2001)
ミスター高橋『流血の魔術 最強の演技』(講談社 2001)



 しかしながら日本のプロレスは、いまだこれを採用するには至っていない。
 それはもちろん、今までやってきたこと/今もやっていること/これからもやるだろうことが嘘になってしまうからである。
 リング上での勝ち負けは当然のこと、選手同士・団体間の対立抗争、勝利の歓喜、敗北の涙、「絶対勝ちます」「負けて悔しい」などのコメントが、全て作り話の演技だということになるからである。

 それは、プロレスが八百長でありインチキであるとの非難を、正しいと認めることを意味する。
 そんなことができるわけがない――私がプロレス業界の人間だったとしても、やはりそう考えるだろう。

 しかし、そんな事情はアメリカでも同じはずである。
 では、なぜWWEはカミングアウトしたのだろう。また、なぜそんなことをしてなお成功できたのだろう。

 いろんな本を読む限り、WWEがカミングアウトに至ったのは次の二つの要因が大きいようである。

(1)アメリカでは、スポーツとして登録するよりショーとして登録した方が税金が安い(らしい)。
(2)上場株式会社として生きていくには、投資家に対し事業内容を透明化し開示する必要がある。

 直感的に思うのは、これは告白というよりタテマエというものではないだろうかという疑問である。
 プロレスはショーであると言っているのは税金対策のためであり、それこそが世間向けのポーズではないか。 
 カミングアウトは身すぎ世すぎの手段であり、日本語では「方便」と呼ぶべきものではないか。


 日本のプロレスは、その試合が真剣勝負だということを世間向けのポーズとしている。
 WWEは、その試合が劇であるということを世間向けのポーズとしている。
 前者がポーズであり、それゆえに真実ではない/疑ってかかるべきものとすれば、後者のポーズもそう考えていいのではないか。 

 
 私はWWEをはじめ、外国のプロレスをそんなに見ているわけではない。
 (日テレジータスで放送されているTNAは、私が唯一欠かさず見ているプロレス中継番組なのだが)

 しかし一つ言えるのは、WWEを含めた外国のプロレスといえども、その試合やバックステージで起こることが作り物であるとは全然していないことである。
 実況アナ・解説者とも、「素晴らしいダメージ表現ですね~」「今のはいい演技だ!」などとは決して言わない。


 選手同士が控え室や階段で「密談」したり、悪の軍団が秘密のアジトで「謀議」をしたり……
 そんなシーンをカメラで写して放送しているというのは、子どもでも意図的に「作った話」だとわかる。
 カメラマンに「気づいた」レスラーが「おい、何撮ってんだ!」と激高するなど、噴飯物の茶番である。

 しかしそれでも、プロレスラーも実況アナもその他関係者もこれを茶番だとしない。本当に「作りなく」起こっていることと扱う。

このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://tairanaritoshi.blog.fc2.com/tb.php/29-b43eb486

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

FC2ランキング

FC2オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

FC2アクセスカウンター

日本ブログ村・人気ブログランキング アクセスランキング

ツイッターウィジェット

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR