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週刊プロレスの若手育成論に異議 その1

 最近また忙しく、ブログを書いたりプロレス番組を見る時間がない。

 しかし『週刊プロレス』最新号(NO.1849 2016年5月25日号)を読む時間は少しあった。

 ちなみに週プロで一番先に読むのは「巻頭特集」「紫雷イオの逸女でしょ!」「続・ハチミツ二郎のプロレスばっかり見てたら芸人になっちゃいました」の3本である。

 その中で、佐藤正行編集長の書いている巻頭特集の今回のテーマは「若手育成の現状と課題」、「欠かせない“溜め”の論理 プロレス界と育成を考える」というものであった。

 もちろん全文引用はできないので、要旨のみピックアップしてみる。


●最近は平成生まれの若手選手が台頭している。例として宮原健斗(全日本)、神谷英慶(大日本)、熊野準(NOAH)の3人。

●どんな仕事でも基礎を固めるのは地道な作業。

 若い選手は一日でも早くスポットライトを浴びたいと思う。

 その気持ちにブレーキをかけてやるのが団体の努め。

 とにかく“溜め”(インプット)が大事。

●秋山準の率いる全日本の若手育成を特筆。

 秋山が賢明なのは若手を現時点での実力以上にプッシュしないこと。

 全日本の若手が派手な技を使わないのは、おそらく本人の意志でなく団体サイドが使わせていない。

 そんな管理体制が、やがて選手を大成させるため団体が負うべき責任。



 ……私は佐藤編集長はじめ週プロ編集部に何の悪意も関わりもあるわけではなく、むしろ敬意を払っているくらいだ。

 何のジャンルにせよ週刊誌を発行し続けるのはものすごく大変なこと、スタッフがいくらかでも休みを取れているのが不思議に思えるのは私だけではないだろう。

 その上でちょっと異論を述べるのだが、この佐藤編集長の人材育成論というのはやはり極めて「日本的」――

 いかにも「日本人ウケする」、「日本人が共感しそうな」人材育成論ではないだろうか。



 よその国のことをたいして知らないで言うのも何だが、日本人はとにかく「下積み」「雑巾掛け」が好きである。

 そういう期間の長かった人や選手が好きであり、共感し応援したいと思うのである。

 そういう人・選手こそ本当に“強い”と思う(思いたがる)のである。


 
 もちろんこれが「年功序列」の肯定に繋がるのは言うまでもない。

 そしてプロレスは、(あんまり言いたくはないが)日本社会でも最も年功序列が尊ばれている分野だろう。

 いくらなんでも、体をぶつけ合う格闘技において、五十代の選手がいつもいつも二十代・三十代の若手選手に勝つなどということはまずあり得ない。
 
 しかしプロレスでは、そんなことは日常茶飯事かつ当然のこと――それどころか、あるべき姿とまで思われている。


 タッグマッチに超が付くほどのベテラン選手が混じっていても、まずその選手が負けることはない。

 負けるのはほとんどいつも、最も年下か最もキャリアの浅い選手である。

 だから対戦カードを見た途端、どっちのチームが勝ち、どの選手が負けるかということは、かなりの確度で予測できる。


(そういう予測を、多くのプロレスファンはいつも瞬時にやっているはずだ。)


 しかしそれは、実は観客がそう望んでいるのではないか?

「キャリアの長い選手が、浅い選手に負けるわけがない ⇒ 負けてはならない ⇒ 負けるべきでない ⇒ 負けたらおかしい ⇒ 負けるのなんか見たくない」

 そんな観客の願望(=需要)を、プロレスは客商売として満たしているのではないかと思える。



 ちょうど週プロの同じ号では、NOAHの熊野準のインタビューも載っていた。

 その囲み記事を見ると、2013年2月9日に正式デビューして以来、シングル戦で初勝利したのは2015年6月7日のことである。(相手は後輩の友寄志郎)

 なんとまあ2年4ヶ月もずっと負け続けていたわけだが、その頃のNOAHを見ていた人たち(私も含む)は――

 いったいいつになったら熊野は勝つのか、あんまり長すぎるんじゃないかときっと思っていたはずだ。


 この連敗の日々が必要または有益な「下積み」であり「溜め」だというのは、確かにそうなのかもしれない。

 しかしやっぱり、いいかげん長すぎるのではなかろうか。


 このたび私が(あまり時間がないのに)こういう記事を書こうと思ったのは、以前からちょうど書こうと思っていたことがあったからである。

 それには、『新人を早々とメインイベンターに引き上げる団体は繁栄する、の法則』とでもタイトルを付けるつもりであった。 

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コメント

[C61]

この点については、私は意見が異なりますね。

プロレスが「受け」のスポーツである以上、入門後約2〜3年の下積み時代は、身体作りの時代とも言えるのではないでしょうか。
他のスポーツで実績のあるスポーツエリート(中西学とか藤田和之とか小川直也とか)のプロレス転向組は、デビューも早くて、下積み時代がほとんど無いのもうなずけるのですが、
まだ身体が出来上がっていない若手は、負け続けながら、身体を作っていく必要はあると思います。

プロレスリングノア発足当初、三沢光晴は選手の自由な意思に寛容だったため、まだ身体の出来上がっていない若手が大技を連発して、結果、けが人が続出してしまったという例もあります。
 
デビューからトップへの期間が短かった例外といえば、中邑真輔ですね。
彼の場合は、新日本の総合格闘技路線での実績があったればこその抜擢ですし。

オカダカズチカは、15歳で入門していますから、海外遠征から日本に凱旋して棚橋に挑戦した時、キャリア的には、10年選手でした。

私の持論としては、(入門時期にもよりますが)プロレスラーの全盛期は、20代後半から30代後半の10年間だと思っています(アントニオ猪木が新日本プロレスを創設したのも、たしか27歳だったと思います)。

入門して、まだ身体が出来上がっていないうちに抜擢すると、ケガなどでかえって選手寿命を縮めてしまう心配もあります。

なんか上手くまとまりませんが、若手が充実してても、集客力に結びつかなければ意味がないのは、W-1が証明していますし。
全日本も団体の若返りには成功しましたが、集客力に結びつかなくて苦戦しているのが現状だし(応援しているのですが)。
難しいところですね。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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