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副業禁止は明白な憲法違反ではないか? その4 後で言うのは詐欺である― 就業規則を公開せよ

 さて、ここまで読んできた人は、それでもこう思うかもしれない。


「しかし従業員は、その会社が副業禁止なのを承知の上で就職したのではないか。

 アリさん社の従業員・アルバイトも、『社員2人以上で飲酒はしない』との契約書に同意の上でサインしたのではないか。

 会社が就業時間外まで社員を規制するのは確かに問題だと思うが、しかし社員がそれに同意すればもちろん有効ではないか」


 と。

 端的に言えば、「イヤなら辞めろ」ということである。


 なるほど、法の世界では「契約自由の原則」がある。原則として、自由な市民同士の契約内容は自由である。

 しかし同時に法の世界には、「強行規定」というものもある。

 たとえ両者が納得づくで契約したとしても、無効とされるものが結構あるのだ。


(無効」というのは、相手がその契約に違反したからと言って裁判所に訴えて履行や損害賠償を求めることができない、という意味。)


 その例としてすぐ思いつくのは、「殺人契約」及び「奴隷契約」だろう。

 ある人Cを殺してくれとAがBに依頼して契約を結んでも、その契約は無効である。

 Bに履行する義務はないし、Aは裁判所に訴えて履行や違約金・損害賠償金の支払いを訴えることもできない。

 公序良俗に反するからだ。

(むろん、裁判所にそんなこと訴えるわけにもいかないが。) 
  

 また、「私はあなたの奴隷になります。何でも言うことをお聞きします」との契約も当然有効ではない。

 こういう契約書を作るのはSM調教の世界でよく見かけるが、まさかあれが本当に法的に有効だと思っている人もいないだろう。


(あれはお互い、気分を出すためにやっているのだ。)


 そして私は、「副業禁止契約」というのもその一種に入ると思う。

 本記事その1で言ったように、それは個人の収入源を自社ただ一つに絞れということであり、生存権を不当に制限するものだから――

 本記事その3で言ったように、「かもしれない」との漠然とした“根拠”によって、市民の自由を抑圧しようとするものだからである。 

 いやしくも人間の自由を大事だと思うなら、まさにこういうのこそ「公序良俗に反する」と断じるべきではなかろうか?

 

 だが、それでも副業禁止契約(規則)をぜひとも有効としたい、というのなら――

 そういう人や会社には、今すぐにでも簡単にできることがある。

 それは「自社の就業規則その他の労使契約を、(リンクバナーとして)自社ウェブサイトの目立つところに置いておく」というものである。


 また国も、そうすることを義務づければよいのである。

 むろんアリさん社は、『社員2人以上で飲酒はしない』との契約書式を誰にでも見れるようにしておく義務がある。


 これだけコンプライアンス(法令遵守)や情報公開が大事だという雰囲気になっていても――

 不思議なのは、就業規則・内部規則・社員心得などを誰にでも見れるようにしておく組織・会社がほとんど見当たらないことである。

 
 2人以上で飲酒しないだの、その他あれをしてはいけない・こうする義務があるだのと言われるのは、決まって就職した後であることである。

 はっきり言って、これは「騙し討ち」ではないだろうか。


 もし事前にウェブサイトで誰でも見れるようにしておけば、それは確かにそういう規則を承知の上で就職したと言えるだろう。

 最低でも就業規則・社員心得を冊子の形で就職希望者に渡すなら、それは納得づくで就職を希望したのだと見なせるだろう。

 しかしそんなこともせず、就職した後で「これらの規則を守ってもらうからな」と言うのは、詐欺同然の手口である。


 おそらく今、就職希望者が就職前に「御社の就業規則を見せてください。社員がしてはいけないことを教えてください」と申し出れば、会社の中の人は「何だコイツ」と鼻白むはずだ。「こんなヤツ採用するな」と思うはずだ。

 しかしそれが完全に間違った思い方であるのは、「常識に照らして」疑いない。

 それともあなたの「常識」は、こういう詐欺まがいのことを正しいと見なすのだろうか?


 まともな会社なら、就業規則はもちろんある。

 そして「ちゃんとした」会社なら、社員がやってはいけない禁止事項というのもおそらくたくさんあるのだろう。

 それは当然、会社の業務にとって必要・有用な内容なのだろう。

 そういうものを契約書などに文書化し、社員にサイン・押印させるなどして承諾させているのだろう。

 だったら、それらをウェブサイトにアップするのは造作もないことである。本当に明日からでもできることである。
 
 もしそれができないというのなら――

 何かよっぽど不当で抑圧的な内容なのだろう、と勘ぐるのは当たり前のことだと言える。


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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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