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プロレスと「差別」その6 プロレスと格闘技の間

 もっとも、プロレスのことなど何も知らない人の方が、むしろプロレスラーに対して「強い」「怖い」イメージを持っているのかもしれない。
 プロレスを敵視し低く見ようとするのは、格闘技者と格闘技ファンの方かもしれない。

 しかし、これこそが彼らの腹立ちと嫌悪感の原因なのだろうが、一般世間はプロレスもまた格闘技の一つだろうとは思っているのである。

 実際、「プロレス」と「格闘技」を分けて表記することに、何も知らない世間の人はちょっとした違和感を持つことだろう。
 「プロレスって格闘技のうちじゃないの? なんで分けて書くの?」というわけだ。


 「須藤元気って昔プロレスやってた人だよね?」とは、(もし須藤元気がその人との間で話題になればのことだが)比較的よくある反応ではないかと思う。
 魔裟斗がK-1選手だったことは確かによく知られているが、そのK-1とはプロレスの一種であり魔裟斗は元プロレスラーじゃないかと思っている人は、想像以上に多くいると思う。

20150412須藤元気
須藤元気


20150412魔裟斗
魔裟斗


 かつてプロレスが長年にわたりゴールデンタイムで放送されていたこと、そのせいで今でもアントニオ猪木やジャイアント馬場、長州力やタイガーマスクの知名度が高い影響は、やはり巨大なものがある。

 ひょっとして世間では、「テレビでやる、選手が上半身ハダカで闘う格闘技は、相撲とボクシング以外全部プロレス(に見える)」との通念があるのではないだろうか。
 その通念の前では、PRIDEもDREAMもプロレスの一種に見えたのだろう。
 K-1がそういう認識をかろうじて免れたのは、あれがどう見てもキックボクシングだったからである。ボクシング風のグローブを着け、立ち技だけの試合だったからである。(しかしそれでも魔裟斗を「元プロレスラー」と思う人はいる)

 これは格闘技陣営にとっては、迷惑極まる誤解であり憤懣やるかたない事態でもあるだろう。
 しかし、世間がそういう認識なのには致し方ない面もある。
 なぜなら、ことこの日本に限っては、格闘技の代表とはプロレスだったからである。
 そして(異論もあるが)、日本の総合格闘技がプロレスから派生したことは歴史的事実だからである。

 新日本の「ワールドプロレスリング」で、テレ朝の実況アナが「総合格闘技はプロレスの一ジャンルに過ぎないことを……」などと言っていたのを聞いたことがある。
 総合の選手とファンが聞けば「笑わせるな」とか「ふざけるな」とか感じるだろうが、それは一面の真実を突いてもいる。

 PRIDEもDREAMも消滅し、日本の総合格闘技は世間の目からほとんど消えた。世間の耳に残っているのは「総合格闘技」という言葉だけだ。
 (新生)K-1も、地上波へ復帰することは近い将来ありそうにない。
 そして新日本やDDTが興隆に向かいつつあるように見える今、「総合格闘技はプロレスの一ジャンル」という言葉はますます歴史的な真実らしく感じられてしまう。

 総合格闘技もK-1もプロレスの延長であり、派生であり、一側枝だった。
 プロレス中継の後を継いで一時は隆盛を誇ったが、短期間で表舞台から姿を消した。
 「格闘生物学」というものがもしあるとすれば、その進化史にはそんな風に書かれかねない。
 まるで恐竜絶滅後に短期間繁栄した、飛べない巨大鳥類のように。


 しかし格闘技陣営には誇りがある。
 それは、プロレスと違い「自分たちは本当に勝敗を争っている」「真のスポーツ選手」だという誇りである。


 プロレスラーがどんなにいい体をしていようと、どんなに激しいトレーニングをしていようと、彼らのやっていることは劇であり本当に勝負しているのではない。
 プロレスは格闘技の恰好をした「劇」であり、プロレスラーはその「劇団員」である。いわば肉体派芸人であり、断じてスポーツ選手ではない。
 だから、真に闘う格闘家として、「プロレスなんか」とは一緒にされたくないのである。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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