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悪斗引退についてのKENSOのシュート発言

 12月2日(水)のサムライTV「バトルメン」を見ていた人は、思わず耳をそばだてたと思う。

 スターダム・安川悪斗の引退発表ニュースの後、ゲストのKENSOはMCの豊本明長(東京03)氏にコメントを求められ――


「キャリア4年で辞めるのを『引退、引退』って、ことごとしく言い立てるのはどうかと思う。

 天龍さんぐらいならいいけど、いろんな事情はあるだろうけど、レスラーの先輩としてそう思う。」



 という意味のことを言ったのである。

 こういう場合はたいてい、「残念ですね。でも本人が決めたことですから」とか「ありきたりのコメント」を返すものである。

 しかしKENSOのこの発言はシュートな発言であり、本心を言ったものと捉えていいだろう。

 豊本氏は「レスラーは10年やって一人前と言いますから……」とフォロー?していたが、まさかそんな反応が返ってくるとは思っていなかったような風情であった。


 それにしてもKENSOがこう思っているのなら、

 キャリア2年半(2010年10月1日-2013年4月29日)で両国国技館で引退した愛川ゆず季などのことも、

 やはり「たった2年半で大げさな引退試合なんかやって……」と思っていたはずである。



 私がこのKENSO発言を聞いて率直に思ったのは、「やはりKENSOも年功序列の徒であったか」というものだ。

 以前の記事で、プロレスが真に戦いであるというなら、先輩・後輩の上下関係が厳しい/厳しくあるべきだとされているのはおかしいのではないか、と書いたことがある。

(⇒ 2015年5月21日記事:なぜイジメ自殺は…その4 プロレス界の最大矛盾――「本当に闘っている」と「上下関係が厳しい」のは両立するのか?)


 「リング上では先輩も後輩もない」が、リングを降りたら先輩後輩の序列は厳しくあるべきだ――

 そんなので本当に「リング上では先輩も後輩もない」ように戦うのが可能なのか、他人に対して説得力があるのか、極めて極めて疑問に思う。

 しかしプロレス界の大勢は、その矛盾を積極的に肯定しているのだろう。

 また女子レスラーはともかく男子レスラーの多くは、サイレントマジョリティとして(自分では口にしないが)KENSOと同じような感想を持っているのかもしれない。

 解説席に座った選手が「プロレスではキャリアが大事ですから……」と述べるのは、プロレスファンには非常に耳慣れたものである。


 しかしながら、真の実力主義の世界では、「年功」「経験」「キャリアの長さ」に大した価値が与えられないのはわかりきっている。 

 「年功が大事だ」などと真顔で言えば、たとえば外資系金融機関などではいかにも呆れてバカにされそう――

 いや、一般の会社においてさえ、年長の役職者でも、あえてそんなことは言わない。(最低でも、よその人の前では言わない。)


 なのにプロレス界では、六十代の選手が二十代の選手に勝つことが普通に起こる。その逆は滅多に見ることがない。

 まるで、「そうでなければならない」社会道徳を示すためそんなことが起こっているかのようである。



 私はプロレスファンではあるが、この点やっぱりプロレスは世間の感覚とズレていると感じないわけにはいかない。

 もし今そんなのが、新木場1stリングで日常茶飯事に起こっていることが、ゴールデンタイムの地上波テレビで放映されていたとしたら……

 プロレスは絶対に、今以上に低く見られるに違いなかろう。



 私は、KENSOのパフォーマンス能力は(偉そうな言い方だが)かなり高く評価している。

 エル・アギラ・インペリアル(皇帝ワシ)のポーズは、今のプロレス界屈指の名ポーズだと思う。

 また、2011年8月27日の「ALL TOGETHER」(東日本大震災復興支援チャリティ大会。日本武道館)のメインイベント――

「棚橋弘至・諏訪魔・潮崎豪 vs 中邑真輔・KENSO・杉浦貴」戦の主役は、誰がどう見てもKENSOであった。


(最後はパートナーを平手打ちし、自分以外の全員の集中攻撃を受けて敗れた。)


 しかしその彼にして――WWEやメキシコを経験した彼にして、依然として「日本的年功序列=普遍的美徳」意識は強固なのである。

 そこらの日本人が、一般論としては別として、こと自分の属する世界(特に職場)については、

 年功序列を「正しいもの」「そうあるべきもの」「やむを得ないもの」と考えているのは、むしろ当然のことなのかもしれない。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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