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プロレスと「差別」その2 続・不適切用語について

 中国を「支那(シナ)」と呼ぶべきだという人がいる。(ちなみに「支那」という漢字単語は、日本のワープロソフトでは変換候補になっていない。たぶん中国のワープロソフトもそうだろう)
 英語の「China(チャイナ)」は始皇帝の秦(しん。チン)帝国が語源らしいが、シナもそれは同じだろうから使っても何の問題もないはずである。
 「朝鮮人」(これは変換候補にある)に至っては、いったい何が問題なのか見当も付かないことになるだろう。

 しかし、日本人なら何が問題か見当が付く。
 それは侮蔑語・不適切用語であるとする「雰囲気」があり、「中国」「韓国」と呼ぶのが「配慮」であり、そうすることが「慣例」となっているからである。
 
 私は社会意識の変化というのは「雰囲気」の変化に他ならないと思っているが、その雰囲気の中では理屈など物の数ではない。と言うか理屈は雰囲気で変えられていく。
 何が正しいかは天の理(ことわり)などではなく、その社会の雰囲気が決めるものである。

 
 私自身も、いまさら中国をシナと呼ぶべきとは思わない。
 もうあの国は、あの地域は、そこに住む/住んできた人民は、「中国」「中国人」と呼ぶ慣例ができたのである。
 いかに理屈が通らなかろうと、朝鮮語は「韓国語」「ハングル語」と呼ぶ慣例ができたのである。
(もちろん、あくまで日本に限った慣例であり雰囲気である)

 それにしても「朝鮮」というのは美称であって朝鮮人の自称でもある。
 それが日本では侮蔑語・差別語・使っちゃいけない語とされているのは、両国(両地域と言うべきか)の関係がいかに歪んでいるかをよく示している。
 「日本」もまた美称であり日本人の自称である。
 もし中国や朝鮮において日本人を「日本人」と呼ぶのが差別であり使ってはいけない言葉とされていたら、我々日本人はどう思うべきなのだろう。

 「エスキモー」は「生肉を食う人」の意味である。
 「ブッシュマン」は「草むらに住む人」の意味である。
 どちらも西洋人が勝手に付けた名称であり、付けられた方が「そんなの使うな」と言うのはわかる。不快に思うのもわかる。
 日本人ならさしずめ「フィッシュマン(生魚を食う人)」(刺身のこと。生魚を喜んで食うというのは、世界的にはかなり珍しい習俗である)、「ウッド&ペーパーマン(木と紙でできた家に住む人)」(木造・障子張りの日本家屋のこと)と名付けられたようなものだろうか。
 しかし、自民族の自称が他国では侮蔑語・不適切用語となり「使ってはいけない配慮」がされるようになる――こういう例が他にもあるのか、ちょっと興味のあるところである。

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 さて、では、なぜこうした「配慮」が正しいとされるのだろうか。
 なぜこうした言葉は「使ってはいけない」のだろうか。
 それはもちろん、「使われた人を傷つける/不快感を与える」からである。

 「びっこ」はそういう状態で歩かざるを得ない人を傷つける。
 「小人(こびと)」(これも変換候補ではない)は低身長症の人を傷つける。
 「つんぼ」は耳の聞こえない人を、「めくら」は目の見えない人を傷つける。
 「障害者」は「害」の字が不快感を与えるから「障がい者」に改める。そうしないのは配慮が足りない。

 それが本当かどうかはともかく、世の中はそういう雰囲気になっている。

 ここで一つ疑問に思うのは、「ハゲ」はどうなのかということだろう。
 この言葉が頭の禿げた人を傷つけているのはほとんど疑いないことである。
 カツラがバレて自殺した人も決して少なくないだろうし、そもそもアデランスなどが堂々たる大企業として成立しているのは、禿げた頭を恥じる人/馬鹿にする人がこの世に大勢いるからである。
 この言葉が侮蔑語・あざけり語として機能しているのを、まじめに疑う人はいまい。

 しかし、なぜか「ハゲ」は「使っちゃいけない語」になっていない。
 それどころかテレビ番組ではしばしば笑いの種にされる。片腕片足の人、低身長症者や視聴覚障害者が決して受けない扱いである。
 「チビ・ハゲ・デブ」はモテない男の三大要素とされているが、女性は決して「恋人が障害者なんてあり得ない!」とは言わない。しかし「ハゲはあり得ない」とは言う。
 職場に手脚のない人がいても決してそれをからかおうとはしないが(そんな人がいれば叩きまくるが)、ハゲはあからさまにそう呼んでからかうことが許されている。


 どうしてそうなのか、答えは一つしかない。
 それは「社会がそういう雰囲気だから」である。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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