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宇喜多秀家、林忠崇、溥儀――複数の時代を生きる、ということ

 原節子の95歳での死に関連して、歴史上の人物のうち長寿者について少し述べる。


 戦国・幕末好きの人にとって長寿として名高いのは――

 戦国大名・宇喜多秀家(1572-1655)と、

 最後の請西(じょうざい)藩主・林忠崇(はやし ただたか)(1848-1941)だろう。


 宇喜多秀家は備前57万石の大大名であり、朝鮮に渡って戦った武将であり、豊臣五大老の一人でもある。

 関ヶ原の戦い(1600年)では西軍最大の兵力を率いて戦い、官位は従三位に達している。

 しかしそんな彼は関ヶ原の敗軍後、あの八丈島に流された。

 そこで半世紀もの年月を過ごし、1655年(明暦元年)に死亡した。


 林忠崇は上総国・請西藩藩主の座を1867年(慶応3年。その翌年が明治元年)に継ぎ、戊辰戦争では幕府側に付いて戦った。

 明治政府に許されて華族になったのは1893年(明治26年)、宮内省・日光東照宮勤務を経て、1941年(昭和16年)1月に住まいのアパートで病死。


 現代の「ゼロ歳」がある年齢の数え方で言えば、宇喜多秀家は享年83歳、林忠崇は享年93歳となる。

(単純に、死亡した年から生まれた年を引けばよい。この際、「死んだ月/生まれた月」は考えないことにしよう。)


 1655年と言えば、徳川幕府4代将軍・家綱の時代である。

 有名な江戸の「明暦の大火」はその2年後、明暦3年(1657年)に起きている。

 また明治以前の最後の大規模内戦である「島原の乱」は、1637年(寛永14年)に起こり翌年終結した。

 八丈島にその報が届いていたかは不明だが、秀家はそのずっと後に死んだのである。


 ※ちなみに島原の乱には、もう一人の有名長寿戦国大名・立花宗茂(1567-1643)も柳川藩主として従軍している。


 豊臣秀吉は明国を征服後、秀家を日本または朝鮮の関白に任じようとしていたとされる。

 そんな彼が、八丈島の流人第一号として50年超の歳月を過ごして死んだ。


 これに感慨を覚えない人は少ないだろう。


 また、林忠崇は、幕末維新期を幕府側に立ってバリバリに戦っていた人である。
 
 そんな彼が昭和16年になってアパートで死ぬ――

 日中戦争やヨーロッパでの第二次大戦勃発(1939年)、ヒトラーの絶頂期を見て、

 太平洋戦争の直前になって死んだ。(真珠湾攻撃はこの年の12月)



 私は「年長者を尊敬すべし」という「道徳」には完全に反対するしバカにもしているが……

 しかしこういう長寿者の存在は、やはりロマンと言わざるを得ない。



 そして考えてみれば、1858年(安政5年。日米修好通商条約、安政の大獄の年)生まれの人で、90歳で死んだ人はいるはずである。

 その人は10歳で明治維新を迎え、1948年(昭和23年)に死亡した。

 なぜ1858年生まれとしたかというと、人間、10歳以降の記憶なら持っていそうだからである。

 明治維新を経験し、日清・日露戦争を見(従軍したかもしれない)、太平洋戦争・原爆投下・日本敗戦・天皇の人間宣言を見てから死ぬ。


 こういう人が、日本に何人かはいたはずだと思うと――

 何かものすごいロマンを感じるではないか。


 それはまるで、映画『ラスト・エンペラー』のような話である。

 清朝最期の皇帝・溥儀(1906-1967)は1908年に皇帝即位、1912年に退位、1934年に日本に担がれ満州国皇帝となる。

 1945年の日本敗戦後は戦犯収容所に入れられ、1959年に釈放。

 その後は北京植物園の庭師となり、歴史史料研究員や人民政治協商会議全国委員になったりもした。

 『ラスト・エンペラー』の最後、溥儀は一般人として紫禁城に行き、階段の上の玉座を見上げる。

 そこはかつて、彼が座っていた場所である。


 あのシーンは、私が見てきた映画の中でもかなり印象に残る場面だ。

 そして、同じように感じる人も多いと思う。

 溥儀は61歳で死んだので長寿とは言えないが、「複数の時代を経験した人」には間違いない。

 そういう存在にロマンや感動を覚えるのは――別にその人が特に偉い人だとは言えなくても――、人間の自然な感情の一つなのだろう。


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平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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