天龍引退試合の生中継の最後になって、初めて気付いたのだが――
テンカウントゴングを終えた天龍が去り、
黄色い紙テープの残るリングに、「アイケアカンパニー宣言 メガネスーパー」の広告があった。
そして、この日のためだけに作られたリングにある文字は、「革命終焉」の大会名を除けばそれだけであった。
5時間もの中継でようやくそれに気付いたことにも我ながらハッとしたが、何かこう、ジーンとしたものを感じてしまった。
メガネスーパーは、最後の最後まで天龍とともにあった。
天龍の最後の試合・大会は、メガネスーパーの名の上で行われた。
そんな感慨を抱かされたのだ。 「企業プロレス」SWSを立ち上げたメガネスーパーは、莫大なカネを突っ込んだあげくプロレスから完全撤退することになった。
その損失額は、たった2年(1990-1992)で何十億円にも及ぶものだったという。(道場建設費だけで7億円)※なお、SWSの正式名称は「メガネスーパー・ワールド・スポーツ」であり、本当は「MWS」と略称されるはずである。
しかし「メガネ」と「プロレス」はさすがにミスマッチだと思われたのか、「スーパー・ワールド・スポーツ」の略としたようだ。 今の新日本がカードゲーム会社を親会社としていることを思えば、メガネ会社が運営するプロレス団体というのも20年先を行っていた感じがする。 当時の社長・田中八郎氏は、2010年12月17日に死去(享年71)。
今も存続するメガネスーパーからすれば、プロレス事業に関わったことは痛恨のミステイクであり――
二度と一切プロレスのプの字も聞きたくない、とか言い伝えられていてもおかしくない。 しかし、天龍最後のリングに「メガネスーパー」の文字。
そして会場パンフレットにも広告を載せていたようである。
もしこれが天龍でなければ、メガネスーパーもそんなことはしなかっただろう。
天龍が今も有名人だからこその協力かもしれない。
それでもやっぱり、義理というものを感じてジーンとくるのだ。
メガネスーパーは、プロレスファンとプロレスマスコミが足を向けて寝られない企業である。
プロレスファンならメガネ・コンタクトを買うときはメガネスーパーで買うべきである。
そんなことまで思ってしまう。 最近のメガネスーパーは、ジャスダック市場の上場廃止が云々されるなど、厳しい経営状況にあるようだ。
八郎氏の子息・邦興氏は、2012年1月31日に取締役会長を辞任している。
(この邦興氏こそ大のプロレスファンであり、それがUWF支援やSWS設立に繋がったとの話もある。)
メガネスーパーは何十億円もの損失を出し――
引き替えに、その企業名はプロレスファンの間では永遠に忘れられない名になった。 これが引き合う投資であったとは言えないだろうが、何の記憶にも残らず消えていく企業がどれだけ多いかと思うと、せめてそれくらいの成果はあったと思いたいものである。
私自身は送っていないが、おそらく何通かはプロレスファンからメガネスーパーへ感謝のメールがあったのではないかと思う。
少なくとも天龍引退試合のスポンサーをしたことは、無駄な投資ではなかった。
会場やスカパーやネットで見ていたプロレスファンのうち、メガネスーパーに感慨と好感を抱いた人は少なくなかっただろうからである。
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