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藤田vs諏訪魔は大日本の勝利――闘魂と王道の敗北

 セミファイナルの「諏訪魔&岡林裕二 vs 藤田和之&関本大介」について。

 この試合、初めから異様な展開になった。

 先発の諏訪魔と藤田は微動だにもせず睨み合い、和田京平レフェリーが「ファイト!」と何度も促しても応じない。

 観客からはブーイングが飛ぶ。

 見かねた岡林と関本が入ってきたら、その二人を放り出す。

 そうかと思えば場外乱闘に入り、諏訪魔の持ち上げたテーブルに当たったのだろう、藤田の手指からは大量の出血を見る。

 そして異様さの頂点は、観客からの大「ダイニッポン」コールである。

 プロレスファンがこぞって注目していた(はずの)諏訪魔vs藤田戦で、大日本プロレスの団体名がコールされる――

 これはある意味、歴史的な光景と感じた。



 要するに観客は、まともにプロレスをしようとしない諏訪魔vs藤田を拒絶し、失望したのである。

 その反面、期待通りの肉弾戦プロレスを展開した大日本の岡林&関本を、熱烈に支持したのだ。

 何かこう遠い昔――第一次UWF旗揚げ戦のとき、観客が「プロレスをやれ」と野次ったという話を思い起こさせる。 


 試合後マイクを握った藤田には、「帰れ」コールまで浴びせられた。

 「年末が楽しみでたまんねーんだよ、わかってるよな諏訪魔?」と藤田は言い、諏訪魔は「オレは総合には出ない!」とはっきり拒絶した。

 そして諏訪魔は続けて、「オレはさっきの大日本のような熱いプロレスがやりたい!」と言ったのである。

(一字一句正確でないのは、ご容赦願いたい。)


 私はこれ、大日本がIGFはおろか全日本をも凌駕したとプロレスファンに広範に認識された、歴史的な瞬間ではないかと思う。


 大日本はすでにメジャー団体である、とは、多くの人が思っているし言ってもいる。

 最近の『ゴング』誌「三者三様」コーナーでもそんな発言がされていた。

 反対に全日本が(特に観客動員面で)極めて苦しい状況にあることも、ファンはよくよく知っている。

 団体の勢いや規模で言えば、すでに大日本は全日本を大きく上回っているのが「常識」なのである。


 
 しかし今日という今日は、その「常識」がほぼ完全に定着した日ではないかと思う。

 旧全日本の王道を継ぐものが今の全日本ではなく、大日本であると確定した日。

 ファンの意識の中で、メジャー団体の交代が起こった日。

 それが2015年11月15日の天龍引退興行であると、後世から振り返られるのではないか?



 それにしても大日本勢は、幸運を摑んだものである。

 そもそも最初は関本&岡林が大会に参加する予定すらなく、直前のカード変更で急遽エントリーしたのである。

(⇒2015年11月2日記事:火野裕士のK-DOJO退団と天龍引退大会カード変更)


 そしてちょっと皮肉に見れば、大日本勢は漁夫の利を得たと言えないこともない。

 諏訪魔vs藤田がまともなプロレスにならないだろうとは思われていたし、両者もさんざんそんなことを言っていた。

 観客・ファンはそうなることを期待もしていたはずである。

 しかしそれがいざ現実に起きるとブーイングを浴びせ、試合を成立させようと純粋プロレスを見せた関本&岡林に「ダイニッポン」コールを送る。


 いくら「今の新日本には戦いがない」と言われても、今のプロレスファンはIGF流の「戦い」をはっきり拒絶し、「プロレスらしいプロレス」を求めているのがよくわかる。

 こうした環境下では、(後知恵で言えば)大日本勢が絶大な声援を受けるのは当然のことだったのだろう。

 最後に諏訪魔がリングに残って「総合には出ない!」と断言したときも、たいした拍手が送られなかったのは必然だったのだろう。


 もしかしたら天龍は、出身団体である全日本をパワーボムで沈めるような場を、自ら設定してしまったのかもしれない。

 しかしむろん、その責任は天龍が負うものではない。


 諏訪魔が藤田と絡んだのは、やはり失敗だったのかもしれない――

 重ねて言うが、2015年11月15日は、大日本が全日本を名実ともに凌駕した歴史的な日として記憶されそうである。


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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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