11月15日、BSスカパーで天龍引退興行「革命終焉」の生中継を見た。
やはり印象に残ったのは――
メインイベント「オカダ・カズチカ vs 天龍源一郎」と、
セミファイナル「諏訪魔&岡林裕二 vs 藤田和之&関本大介」であった。
まず、メインイベントである。
以前の記事で私は、
「天龍引退試合の相手をするのは、オカダにとって極めて難しい試練になるだろう」と書いた。
「それをクリアしたオカダは、間接的に棚橋・中邑に勝ったと言ってよいと思う」とも書いた。
(⇒ 2015年8月17日記事:2015・G1決勝戦 その2――オカダVS天龍、オカダ最大の試練) そして実際、その試合を見て感じたのだが…… これは、予想や危惧を超えた素晴らしい内容の試合だったと思う。 なるほど、今年のベストバウトに選ばれるほどとは言わない。
しかし「歩行も困難な65歳の老人と、それと戦う身体能力抜群の28歳の若者との試合」ということを考えれば、驚異的な内容だったのである。 天龍は両脚にサポーター、腰には太い革ベルトを締めながら、全盛期同様の黒のショートタイツ姿。
どこかのインタビューでオカダは「黒のショートタイツで出てきてほしいですね」と言っていたが、そのリクエストに応えた形だ。
むろん足元はおぼつかない。
これでいったいどういう試合になるのだろうと不安になる。
思ったとおり序盤で簡単に派手に倒される。 しかし、
「しっかりまっすぐ立っていられない」ことを逆手に取り(あるいは前提条件として)、天龍は地を這うような攻撃を多用する。
四つん這いで突進しての頭突き。
膝を突いたオカダの頭部へ、超低空の延髄切り。(もちろん天龍は高くジャンプできない。) 極めつけは、コーナーを背にして(支えにして)のパワーボム――
いや、持ち上げた両手がすっぽ抜ける形だったので、投げっぱなしとも言いがたい垂直落下技である。
(強いて言えば「落としっぱなし型パワーボム」だろうか?)
たぶん前例はあるのだろうが、こうやってパワーボムを繰り出すなどと私は想像もしていなかった。 そしてオカダも、なかなか立てない天龍へこれでもかとドロップキックを繰り返す。
何度も何度ももんどり打たせて倒しまくる。
実況でも言っていたが(ちなみに日本テレビのアナウンサー)、
天龍は「泣き出しそうな」顔になり、口からは泡を漏らして必死に耐える。また立ち上がる。
純粋格闘技ファンにとってみれば、これはもちろん茶番だろう。
65歳の老人が試合に出てくること自体がジョークだろう。
しかし、天龍の苦痛は本物である。
65歳の老人が、しかも腰を深刻に痛めている老人が、必死の形相で立ち上がってくる。
いくらプロレス技であろうと、本当は急所を外して打っていようと、その苦しさは一般人にも非常によくわかる――
あるいは、想像のつくものなのだ。 最後は、レインメーカー一発でピンフォール。
二連発も三連発もしないだろうとは思っていたが、やはりただ一発だった。
天龍も、そしてオカダも、ただならぬ試合構築能力をこの一戦で見せてくれたと思う。
もし棚橋が、中邑が、他のレスラーが相手だったら、これ以上の試合になっただろうか?
なったのかもしれないが、それを実証して見せたのは――見せる機会を与えられたのは、オカダただ一人。
誰も天龍が勝つなどとは本気で思っていなかったこの試合。
勝負論などカケラもないはずだったこの試合。
しかしその「制約」内で、二人は最高レベルの「戦い」を見せてくれたと思う。
- 関連記事
-
スポンサーサイト
- http://tairanaritoshi.blog.fc2.com/tb.php/183-0b5e806d
トラックバック
コメントの投稿