イスマーイール派「暗殺者教国」は、魅惑的な伝説に彩られている。
その
開祖はハサン・ビン・サッパー(1124年没)、ウィキペディアでは「ハサン・サッバーフ」の名で出ている。
イラン中西部のアラムート山に城塞を構え、イランからシリアにかけての山岳地帯に勢力を張り
「山の老人」と呼称される。
戦闘手段は刺客を使った「暗殺」であり、それが我々のイメージする普通の「国」と渡り合っていたというのが人気のミソだろう。 いま手元に参考書がないのでうろ覚えで書くが、その逸話には次のようなものがある。
●山の老人は城に客を迎え入れ、自分の部下にどれほど忠誠心があるかを示すため、部下に窓から飛び降りろと命じる。
部下は直ちに飛び降りた。(むろん死んだ)
●護衛を従えて安心している相手の要人に対し、あんたをいつでも殺せると言う。
その瞬間、護衛は要人に刃を突きつける。護衛は山の老人の潜入させた刺客だった。
●刺客候補はアラムート山に連れてこられる。そこで麻薬を飲まされ、酒池肉林の桃源郷を味わう。
(妄想ではなく本当に女や食べ物、楽園のような舞台セットが用意されていたとされる。)
正気に戻った彼らは、暗殺任務に従事して死んだら、あんな天国に行けると言われる。
彼らは喜んで任務に赴き、死ぬことを望んだという。 上記に挙げた最後の例は、今のイスラム国も似たようなことをしているとされる。
戦って死ねば、何人もの乙女に囲まれた永遠の楽園で生きることができる――そう吹き込み、信じられているらしい。 山の老人は、宗派の違うイスラム教国やヨーロッパ十字軍の指導者らを次々暗殺していったとされる。
もっとも、その真偽は不明である。
私は何となくこの話、「外国人のイメージする日本のニンジャ」に似ている気がする。 そこでのニンジャは、超人的な戦闘力と冷徹な精神力を持つスーパー特殊部隊員とされているが……
日本人の我々は、本物の忍者がむしろ潜入諜報員だったことを知っている。 そりゃあ暗殺任務に従事した忍者はいるにしても、まさかそんな暗殺部隊を主戦力にした戦国大名がいたと信じることはない。 イスマーイール派と言えども、さすがに主戦力は通常の兵隊だったのではないか、
「ニンジャ暗殺団」がいたとしても、それは現代国家が特殊部隊員を抱えているのと同じ程度ではないか、
と思うゆえんである。 そして暗殺者教国を滅ぼしたのは、やはり正規軍――
遠い異国からやってきた、フラグ率いるモンゴル帝国の軍勢だった。(1256年) どうもこの史実は、イスラム国の前途を暗示しているようでもある。 イスラム国は「現代の暗殺教国」と言えるかもしれない。
暗殺ではなくテロが主武器ではあるが、やっていることの質はそう変わらない。
確かに今は猛威を振るっているが、圧倒的な正規軍に対したとき、いずれ敗れ去るときが来る。
特に今回のような大テロをやってのければ、フランスどころか世界からの報復を受ける理由になる。
「暗殺教国」が150年ばかり続いたのだから、「テロ教国」イスラム国が15年くらい続いても不思議はない。
ただ、自爆テロ要員が何人いようと何人の民間人を殺そうと、それで正規軍に打ち勝つことはできないのだ。 これでフランスが報復すれば、ある人はまた「報復の連鎖・憎しみの連鎖は断ち切るべきだ」、「報復がテロの温床を再生産することになる」とか言うのだろう。
しかし(9.11アメリカ同時多発テロにしてもそうだが)、
こんなことされて報復しないなどというのは、全くバカげた・あり得ないことである。
マスコミや「知識人」が何と言おうと、世界の人民には「イスラム国って、滅ぼされても仕方ないだろ」との雰囲気ができる。
いや、容認と言うより積極的に「討つべし」との雰囲気になる。 いったいいつになったらやるのだろうと思っていた「イスラム国征討戦」は、今回の事件でいよいよ現実のものになるかもしれない。
未来から振り返ったとき、イスラム国が「一時は勢力を誇った異端イスラム宗派」に位置づけられる可能性は濃厚である。
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