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元号と単位、選手コール時の「パウンド」 その4

 本記事は、

(⇒2015年10月11日記事:元号と単位、選手コール時の「パウンド」 その3)

 の続きである。


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 そして日本元号と同じく「何年かを示す単位」として、世界にはイスラム暦や仏暦もあるのが思い起こされる。


 イスラム暦=ヒジュラ暦は、イスラム教の開祖ムハンマドがメッカからメディナに移った「聖遷」の年を元年(第1年)とする。

 それは西暦622年なので、西暦2015年はヒジュラ暦1436年となる。

(単純に2015-621=1394年とならないのは、ヒジュラ暦は1年ごとに太陽暦より11日ずれるため。)

 これは不便に決まっているのだが、それでもイスラム圏では公式の暦としている国が多い。


 仏暦は、仏教の開祖シャカが死亡(入滅)した年(西暦紀元前544年)またはその翌年(西暦紀元前543年)を元年とする。

 これを公式文書に用いるタイでは後者の方を用いるため、西暦2015年は仏暦2558年となる。

(仏暦は太陽暦なので、単純に西暦に543を足せばよい。

 こういう換算が時にややこしく感じるのは、「西暦0年」という年がないせいである。

 西暦紀元前1年の次の年は、西暦1年なのだ。




 さて、これらの国々で、「いいかげんそんな年号を使うのは止めて、西暦を使え」という声は起こっているだろうか?

 残念ながら私にそんなことはわからない。

 しかし(おそらくだが)思うのは、やはりそれは自国の文化を棄てることになる、と思われているのではないかということである。


 かつて「正朔(せいさく)を奉ずる」という言葉があり――

 「正しい暦=正義で正統の王の定めた暦」を用いることは、その王への服従を示すことになる、とされた。

 その意味で「元号を使うのを止めて西暦を使う」ということは、やはり日本が西欧の(キリスト教圏の)範囲に入ったということになるのだろう。

 そして「英語を公用語にしよう」「英語ができなきゃダメ」という意見についても同じことが言えるのだが――


 それはつまり、「侵略戦争は正しかった」「侵略戦争には確かな実益がある」という結論に繋がってこざるを得ないと思う。


 英語がそういう扱いをされるようになったのは、もちろんイギリスが世界中を侵略したからである。植民地を作りまくったからである。

 それにより、今となっては「これからは英語ができなきゃダメですよ」などと極東の島国の原住民でも言うようになった。

(何十年も前からそう言われ続けている気はするが……)



 自国の母国語が世界の共通語になる。

 それができなければこれからはダメだと言われるようになる。

 こんな大きな利益が他にあるものだろうか?




 しかし同時に、仮に元号を廃止して西暦一本にしたからと言って、日本の文化や日常生活が大きなダメージを受けることもないのは確かに思える。


 なんとなれば、日本人は尺貫法を棄ててメートル法に完全に切り替えたのだ。

 今の日本人で「1尺=約30センチ」、「1貫=約3.75キログラム」だと知っている人はごく珍しい。

 そして「坪」というよく聞く単位ですらも、「この土地は○坪」と言われてもわからず「平米(㎡)で言えよ」と思う人は相当多いはずである。

(これはけっこう知られているが、「1坪=約3.3㎡」である。)


 ジャイアント馬場の存命時、「今の日本で『文(もん)』という単位は、ジャイアント馬場の足の大きさを表す単位としてのみ使われている」との文章を読んだ覚えがある。

 2015年現在のプロレスファンでも馬場の「十六文キック」を聞いたこともないという人は少ないはずだが……

 しかし、「1文=約2.4センチメートル」だと知らないでそう言っている人は、例によって相当多いだろう。


 ※ちなみに、本当の馬場の足(足の裏)の大きさは14文(約33.6センチ)だったとされる。

  それがなぜ「16文」になったかについては、ウィキペディアの「文(通貨単位)」で検索されたい。


 今現在、よほどの国粋主義者であっても「尺貫法を復活せよ」「文という単位を使え」「そうしないのは日本文化の喪失だ」と主張する人はいない。  

 要するに、一度なくなってしまえばそれはもう「文化」ではないのである。

 惜しまれることもないのである。


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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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