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新日本のブルーオーシャン その2 ターザン山本と木谷会長

 なお、対談のこの部分を読んで思い出したのは、あのターザン山本(元・週刊プロレスの名物編集長)の書いた『プロレスファンよ感情武装せよ!』(2002年刊)の一節であった。

 同書はプロレスの内幕をバラしカミングアウトを促した、ミスター高橋本への反論として書かれたものだ。

(副題は「ミスター高橋に誰も言わないなら俺が言う!」となっている。)

 その最終章で、ターザン自身がインタビュアーの吉田豪 氏と対談している。

20151003『プロレスファンよ感情武装せよ!』(2002年 新紀元社)
『プロレスファンよ感情武装せよ!』(2002年 新紀元社)
猟奇殺人本ではない。



(引用開始)*******************************


ターザン ボクなんかさ、『現代思想』(2月臨時増刊号『プロレス』特集)の岩上(安身)さんの文章を読んで、ビックリしたよ。

吉田 「10数年前にターザン山本から『プロレスには真剣勝負はひとつもありませんよ。シナリオがあって、勝ち負けも決まっているんです』と聞いていた」という。

ターザン ボクもよくそんなことを言ったよなあ。

吉田 ひどいですよ。

ターザン いや違うんだよ。ボクからすると岩上さんという人格に対して、岩上さんのレベルを考えたら、そのことを言わないと、やすく見られるわけですよ。

吉田 ええ。

ターザン 岩上さんはジャーナリストとして活躍されている人だし、大道塾の東孝(あずま たかし)さんや夢枕獏さんと親しくて。大道塾を応援して、自らも競技をやっているという人でしょ。そういう人を前にしてそのことを言わなかったら、ボクが彼に対して嘘をついたことになるわけよ。あの言葉は、彼のレベルに合わせて、理解されると思ったから言ったわけで、超個人的な世界の中でのやりとりなわけですよ。ふたりだけの真実なのにねえ。


(引用終わり)*******************************


 要するに「レベルの高い人」には「安く見られる」から「プロレスに真剣勝負は一つもない」と言うが――

 そうでなければ嘘をついたことになるから言うが、

 逆に言えば「レベルが低い人」には言わない、ということである。



 こんなのを対談として自分の本に載せる、というのは確かに正直ではあるが、ターザンがしばしばバカにされたり軽蔑されたり道化扱いされる理由もわかろうというものだ。

(そして、なぜこんなことを載せた本をミスター高橋への反論本と銘打ったのか、理解に苦しむところでもある。)


 さて、今回の木谷氏にもターザンのような意識があったのだろうか?

 ビジネス情報サイトのダイヤモンドオンラインにおける対談だから、

 会社としての真面目な戦略・方針を語るのだから、

 「自分はもちろんプロレスの内幕は知っている」と印象づけたいから、

 そうでなければ安く見られるから――

 あえて「バッドエンドは人為的に作っている」というようなことを言ったのだろうか?


(別にそんなことに触れなくても対談はできたはずなのだ。)


 おそらく、そういう気持ちはあったと思う。

 「時代はハッピーエンドを求めてます。だからビッグマッチの時は、ベビーフェイスが勝ってくれよとハラハラしてますね(笑)」などと言えば――

 世間のビジネスパーソンたちは「何言ってんだこの人は」とか、「やっぱプロレスは経営者までそんなフリをするんだな」と思うのだろう。


 それはやっぱりまずいのである。

 そして一方、ファンの前で挨拶するときには決して「このたびの大会もハッピーエンドになるよう工夫を凝らしてあります。お楽しみに!」などと言わないに違いない。


 重要なのは、こういう使い分けが公然とできるようになったことだと思う。

 そんなことをしてもプロレスの屋台骨が揺らぐと、(プロレス界の頂点に立つ人物が)思わなくなったことだと思う。

 今の新日本プロレスは、ストロングスタイルの呪縛から解き放たれたと同時に、八百長の呪縛からも解き放たれたと言っていいのかもしれない。

 こういうカミングアウトの仕方、というか流れというのは、2000年代初期ではあまり予想できないものではなかったろうか?

 やはり、未来というのは(たった数年後であってさえ)予測しがたいものである。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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