スカパーの日テレG+(ジータス)で、3月15日NOAH有明コロシアム大会を見た。
この大会、ジータスの初放送は3月19日。
いつからか――ちょうど新日本勢のNOAHマット出場が目立ち始めてきた頃からか、
ジータスはNOAHの試合を生中継することを止めてしまった。 今回のような現NOAH最大級のビッグマッチでも例外ではない。
それでいながら、米TNAとwrestle-1の合同興行は生中継する。(2年ほど前から、ジータスはTNAの放送を始めた)
このこと自体、
ジータス及び日本テレビ本体が、NOAHのバックアップから少しずつ手を引いている様子をよく表している。
私はテレビ局の中継実務について全く知識はないが、たぶん生中継は録画中継より経費も手間もリスクも高いのだろう。
昔は(しかしそんなに昔ではない)日テレ主催の屋外イベントで試合をしたり、ボクシングのチャンピオンとGHC王者らが並んで壇上に立ったりしていた記憶があるが、そんなのも最近は行われてないようである。
新日本プロレスは「新日本プロレスワールド」というネット配信事業を始めた。
現在加入者数は2万人超・月額999円なので、これだけで年間2億4千万円(2万人×月1千円×12ヶ月)の収益基盤を得たことになる。
そして新日本のパートナーであるテレビ朝日も、スカパーのテレ朝チャンネルで「ワールドプロレスリングLIVE」と題し、主要大会の生中継を増やしている。
馬場全日本及び地上波放送打ち切りまでのNOAHの試合映像権は日本テレビが持っているはずなので、
やろうと思えば「新日本プロレスワールド」に対抗する「全日本プロレス+NOAHアーカイブス」などというネット配信事業もできると思うのだが、そういう話も全く聞こえてこない。 少なくとも日テレ内部では、そんな事業は魅力がない/採算が取れないと考えられているのだろう。
(もっとも、試合の映像権、配信権というのはけっこう複雑なようではある。)
平川健太郎アナなどはプロレス実況がやりたいから日テレに入ったというが、そして今でもNOAH実況メンバーの一人ではあるのだが、こんな状況をさぞかし無念に思っているだろう。
メディア展開・テレビ局からの支援という点で、NOAHは新日本にはるかに水をあけられてしまっている。
KENTAがNOAHを離れる前、ゲストとして実況席に座ったことがある。
その時KENTAは地上波放送の復活を願うと言っていた。
しかし日本のプロレス界で唯一全国地上波放送番組(ワールドプロレスリング)を持つ新日本でさえ、深夜30分という枠からすぐには抜け出せそうもない。
ましてNOAHの現有勢力で地上波に復帰できるかと言えば、NOAHファンでさえ見込みは薄いと思うはずだ。
特にNOAHは一連の別冊宝島ムックにおいて、反社会的勢力との繋がりがあったこと/資金難に苦しんでいることが次々暴露された影響が大きい。
最近ではマイバッハ谷口が神奈川県警の「泥棒撲滅」ポスターに起用されたり、選手が交通安全運動に協力する様子が新聞記事になったり、団体自体が警察に表彰されたりと、警察的にはNOAHは許されたと言っていいかもしれない。
マイバッハ谷口の防犯ポスター
神奈川県警から表彰を受ける田上NOAH社長 しかし、警察や裁判所は許す判断を下しても、そう簡単に許さないのが世間である。
そしてテレビ局とは、世間を形作る第四権力である一方で、臆病なくらい世間の反応を気にする存在でもある。 PRIDEとその地上波放送が消滅したのは、やはり反社会的勢力との繋がりが表に出てきたからである。(格闘技界では「フジテレビショック」と呼ばれる)
ちょっとでもそんな気配があれば、テレビ局は即刻手を引く。これは当たり前である。
日テレ上層部もプロレス中継という火中の栗を拾おうとは思わないだろう。
ましてプロレス中継とは、そんなリスクを負ってまで拾う栗でもないだろう。
これは冷厳たる現実である。
そしてもう一つ、
三沢光晴の試合中の事故死(2009年6月13日)は遠い過去のようでもあるが、テレビ局にとってはそうとも言えない。 日テレは2009年3月にNOAH地上波放送を打ち切っていた。
もしあの試合を生中継していたら、あんなことが全国生中継で起こったら――と思うと、テレビ局の人は背筋が凍る思いだろう。
私は、今でも日テレがスカパーだけとはいえNOAHを放送し続けているのは、馬場全日本時代からの名残り以外の何ものでもないと思う。
極めて残念なことだが、NOAHの地上波復帰はまず見込みがないものと思う。
まだ『巌流島』や西口プロレスの方が可能性があると思う。
新日本がワールドプロレスリングを打ち切られなかったのは幸運だった。
しかしやはり、事故が起きればその幸運も暗転する。
そして幸運が続いてさえも、ゴールデンへの復帰を危惧/反対する声はテレビ局内に残り続けるだろう。
(大手テレビ局がプロレス中継に食指を動かさないのにはもう一つ重大な理由があるのだが、これについては別途述べる。)
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