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新日本のブルーオーシャン その1 木谷会長のカミングアウト

 ビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」の対談連載「日本のブルー・オーシャン企業」第5回では、新日本プロレス会長・木谷高明 氏が取り上げられた。

 非常に面白いので、ご一読をお勧めする。

 なお「ブルー・オーシャン戦略」とは、血みどろの競争が展開される「レッド・オーシャン」から抜け出し、競合相手のいない高収益・高成長の市場を見つけ出す(または自分で作る)ビジネス戦略のことであるらしい。

 何のことはない、「狭い国内で争うより新天地を開拓しよう」という太古からある誰でも考えつく「戦略」なのだが、それを言うならほとんどのビジネス戦略がそうである。

 結局こういうのが周期的に新たなビジネス戦略としてクローズアップされるのは――

 考えるのは誰でも考えても、実際にやろうとする人/成功する人はごく少ないから、という、これまた太古からの通則があるからなのだろう。


 それはともかく、この対談で特に興味深いところをピックアップして見てみたい。


 さて、木谷氏と言えば「全てのジャンルはマニアが潰す」という言葉が有名である。

 私はこれは、2010年代のプロレス界最大の名言になり得ると思う。(あと5年あるが、これを超える名言はなかなか出てこないだろう。)

 あの有名な「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」の現代版ではないかとも感じる。(書いたのは19世紀イギリスの歴史家、ジョン・アクトン卿)


 その木谷氏は、またのっけから爆弾発言とも言えることを言っている。


(引用開始)*******************************


 今は時代背景的に、ハッピーエンドしか許されないです。

 それは将来が不安な時代だからです。

 もちろん今でも、バッドエンドの結末はあります。

 だけど、いきなり大きな会場ではできないんです。

 人数も少なく、マニアが大半を占めているような会場で、まずはバッドエンドを試してみる。

 多くの客が慣れてきて「これはいけるな」と思ったら、大きな会場でやるんです。

 バッドエンドも「お決まり」になったら問題ないんですよ。

 いきなりのバッドエンドは、いまは受け入れられにくいんです。


(引用終わり)*******************************


 「まずはバッドエンドを試してみる」。「これはいけるなと思ったら大きな会場でやる」。「バッドエンドもおきまりになったら問題ない」。

 これが「プロレスは結末をあらかじめ作ってあるんですよ」という表明でなくて何だろう。



 かつて馬場全日本は、プロレス誌に「死闘を『演じた』」と書かれたことについてさえ文句を言ったそうである。

 それを今、業界の頂点に立つ団体のそのまたトップが、実にあっけらかんと当然のようにこんなことを言う。

 なるほど時代は変わった。

 そしてこの発言にプロレスファンが逆上するようなことも、おそらくない。


 「プロレスは作り物である」――もはやこれがファンの共通認識であり、そんなことは承知の上でファンはファンをやっている。

 そして彼らは「プロレスは八百長だからくだらない」とは思っていない。むしろそんなことを言う人を野暮だと見なす。

 「うっせーな、何言ってんだコイツ?」とバカにしさえする。

 まさにこれこそ「時代背景」というものだろうか。


 もっとも、飯塚高史は普段からあんななんだと思う人間はまさに一人もいないだろう。

 男色ディーノの男色ドライバーが本当に相手の協力なしでかかっているなどと、少しでも思う者は本物の変人だろう。


 ああいうのが「作り」であることはわかりきったことなのに、それでも「プロレスに作りなどない!」と言うことは失笑を招くだけである。

 しかしわざわざ、「プロレスとは結末を決めてあるショーなんです」ともあえて言わない。


 かつてミスター高橋(元・新日本プロレスレフェリー)は、そういうカミングアウトこそプロレスの生きる道であると説いた。

 しかし今のところ、そんな正面切ったカミングアウトをしなくても新日本は復活を遂げつつある。


 その試合は作り物であると観客が共通に思っていながら、それでも声援・歓声はなくならない。

 何よりもカネを払って見に行く人が、超満員が連続するほどの数がいる。

 この「時代背景」とは「人間心理」とは何であるのか、社会学者などにとってはいささか興味深いテーマではないだろうか? 

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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