Entries

高尾山古墳の取り壊し方針撤回と「外圧に弱い日本人」 その2

 地方のローカルな事件・話題でも全国ニュースになることがある、全国に知れ渡ることがある。

 こんなのは現代の常識である。


 しかし我々は、まさか自分が、自分たちのやっていることがそうなるとは、全然実感できないのではないか? 
 
 もしこの古墳問題が沼津市以外のどこかで生じていれば、おそらく沼津市長も「何でそうなることがわからないのか」と我々と同じ感想を持ったことだろう。

 そして我々もまた、もし自分たちのやっていることが全国ニュースになったとしたら、その他大勢から同じように思われることになる。

 これは、人が交通事故で死ぬことがよくあると重々知っていながら、まさか自分がそうなるとは思わないこととよく似ている。

 交通事故で死ぬ人は、みんなそういう人たち(つまり、我々全員のことだ)と言って間違いはない。

 人間の本性であり本能でもあろう「自分だけは例外」思考は、このネット時代でも抜けることはないのである。



 また、昔から「日本は(日本人は)外圧に弱い」とも言われてきた。

 今回の件もその一例である。

 しかし本当の話、「日本人は内圧にも外圧にも弱い」というのが真相ではないだろうか?

 沼津市首脳部にも、古墳を取り壊すなんて決めたら猛反発が来て撤回する羽目になっちゃうぞ、と思っていた人はいるはずである。

 沼津市建設部長は、5月27日の市議会建設水道委員会で市議から「残す残さないの議論の余地はないということか」と質問され、「その通りです」と答えている。(毎日新聞 5月28日記事)

 私はこの建設部長も、「取り壊さない、なんて選択肢はねぇんだよ」などと本心から思っていたのではなく、内心は「言いたかないけど言うしかないよなぁ……」と思っていたのではないかと思う。

 それでも市が取り壊すことにしたのは、つまるところそれが住民の願い・要望・要求だったからだろう。

 つまりこれが「内圧」である。


 しかしまた、それが外部に広く知られて「外圧」を受ければ、たちまち倒れ伏してしまう。

 ちょっと意地悪く言えば、今度は「全国の人たちの意見」という新しい錦の御旗を得て、「地元住民の願い」という古い錦の御旗を圧倒することができるのである。


 多くの人が認識・実感しているように、現代日本は人の意見に極めて敏感に反応する――反応するのが正しく道徳的なこと、あるべき姿だと解釈する社会になっている。

 「クレーム一つで会社が動く」「どんなクレームにもまず謝る」のは、ごくありふれた日常風景と化している。

 だから内部で要求されれば古墳を壊すことにするし、外部から批判されれば撤回するというようになる。

 もしこんな沼津市が情けないと言うなら、我々みんなが情けないということになろう。



 思うに現代で我々が拠って立つべき行動基準は、「それが公になったとき/広く知られるようになったときにも、それは正しいと堂々と言い張れるか」ということである。

 それには根拠ばかりでなく、何よりも度胸がなければならない。

 この基準に照らしていれば、はたして沼津市は古墳を取り壊すと決めただろうか。


 
 いやいや、もしかして沼津市には深謀遠慮があって――

 わざと大問題にすることで外圧を導き、内圧を抑えようとしたのかもしれない。

 そのもくろみが見事に成功したのかもしれない。

 そういうことを考えてしまうのは、プロレスファンの性(サガ)というものなのだろうか?


(引用開始)*********************************


  誰かが何か言ったとき、自分が何か言おうとするとき、「それはテレビカメラの前で言えるか」問いかけてみればよい。

  言えないとか自信がないとかなるならば、それは最初から「誤り」であるとしてほぼ間違いない。

  「後ろめたいから言えない」「言っても受け入れられないと思うから言えない」というのは、自分自身がその「正しさ」に自信を持っていないからである。

  それはほとんどの場合、正しさの第二段階である「根拠、理由、証明の提示」ができないことを示している。

  要するに彼は自分の主張が説得力のないものだと、他者に影響を与えられないものであることを初めから知っている。そんな主張が正しくなれるはずはない。


(引用終わり)*******『尊敬なき社会(上)』第2章「年長者 ― 年上を敬う理由はあるか?」*******

このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://tairanaritoshi.blog.fc2.com/tb.php/118-2d958632

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

FC2ランキング

FC2オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

FC2アクセスカウンター

日本ブログ村・人気ブログランキング アクセスランキング

ツイッターウィジェット

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR