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プロレスベルトと芥川賞の価値・権威 その8 半年に一度の受賞サイクル

 芥川賞・直木賞はなぜ日本で最も知られる(つまり、最高権威の)文学賞となったか?

 それが偶然であれ「仕込み」であれ、話題性を獲得したことによるものである、ということは前回記事で述べた。
 
 これに関連して気になるのが、その受賞サイクルの短さである。

 芥川賞・直木賞の選出は、半年に一度行われる。一年に二回の文学興行である。


 普通の感覚で行くと一年に一度にすると思うが、これって短くないだろうか?



 我々は、

「プロレスは毎日のように試合している。その全部が真剣勝負(本当に勝敗を争っている)だなんて常識で考えてあり得ない。だからプロレスはやっぱり作り物だ」

 という意見・見方があることを知っている。

 それはかなりの説得力を持って世間一般に受け入れられるものだと思う。


 しかしその論法で行けば、

「半年に一回のペースで後世に残る小説が生まれるわけはない。だから芥川賞の小説がそんなに傑作なわけがない」

 というのも説得力があるはずである。

 
 人間界で貴重視されるのは、希少性のあるものである。

 大量生産品に価値はなく、数少ないものこそ価値があると見なされる。

 宝石がそこらの石より価値があるのはこのためでもある。

(⇒2015年5月16日記事:金銀宝石バブルとスポーツバブル――あらゆるバブルに終焉は来る)

 実際、もし芥川賞の選出が3ヶ月に一回とか4か月に一回とかで行われるようになれば、その価値はガクンと下落するだろう。

 

 私はこの半年に一回ペースというのは、賞の権威維持と商業的要求とを両立させる、ギリギリのサイクルではないかと思う。

 ここでいう商業的要求とは、むろん話題性の喚起と売上げ機会増進の意味である。


 芥川賞も直木賞も、1935年の設立時からすでに半年に一回の選出であった。

 なぜそうしたのか、理由は知らない。

 もしかしたら設立者の文藝春秋社社主・菊池寛は、賞をあげるべき作品がいっぱいあるのに一年に一回じゃとても間に合わないとでも思ったのかもしれない。

 しかし受賞作品が多くなるほど賞の権威は下落する。

 そう考えれば、むしろオーソドックスに一年に一回にすべきだったろう。


 だが、この選択が偶然にも現代においては、絶妙なカンフル注射の間隔となったのではないか?



 ※もっとも、ウィキペディアの「芥川賞」の項にはこうもある。

  設立者の菊池自身は「むろん芥川賞・直木賞などは、半分は雑誌の宣伝にやっているのだ。そのことは最初から明言してある」(「話の屑籠」『文藝春秋』1935年10月号)とはっきりとその商業的な性格を認めている。



 もし話題になりさえすれば、それで権威が手に入れば、受賞ペースはむろんギリギリまで短い方がよい。

 本を売る機会を可能な限り追求するのは、出版社の当然の使命の一つである。

 そしてまた回数を増やすことは、たまに見る「該当者なし」の回をところどころちりばめることもやりやすくする。 

 もしこれが一年に一度の賞であれば、該当者なしにして販売機会を失わせるのは許されないことではないか、と思う。

 しかし半年に一度ならば、そういう冒険もやりやすくなるのである。

 たまにはそういうことにして、「本当に内容で選んでいる」と思わせることも可能になるのだ。


(断っておくが、これはプロレスの話をしているのではない!)


 だが、現代の芥川賞とプロレスを比較した時、そこには重大な違いがある、と私は思う。

 その違いとは、芥川賞には賞そのものに価値があるが、プロレスのベルトにはベルトそのものに価値があるわけではない、という点である。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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